上 下
66 / 119
カラクリ屋敷✨✨✨

清斎✨✨✨

しおりを挟む
『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをなす、おごれる者はひさしからず……』

 清貴の部屋にも、『平家物語』が聞こえてきた。
「ン、なんで『平家物語』が……?」
 信乃介も不思議に思い廊下の方を見た。

 その時、邸内に女性の悲鳴が響いた。
『キャァァァァーーーー……』

「ううゥ……、誰の声だ」いったいこの屋敷で何が起きているのだろう。
 俺と信乃介は清貴の部屋で悲鳴を聞いた。

女性オンナの人の悲鳴……」お蘭もすぐに立ち上がった。
「ゴメン」すぐさま信乃介は立ち上がり、悲鳴がした方へ急いだ。
「清貴様、俺もちょっと見てきます」
 中座し俺も信乃介のあとへ続いた。

「無理をするなよ……。清雅!」双子の兄は俺を案じてくれたようだ。
「ハイ、かたじけない!」
 俺は部屋を飛び出した。

 その瞬間、兄、清貴は小声でつぶやいた。
「おごる平家はひさしからずか……」
 何かを暗示するように独り言を云った。

 また悲鳴が聞こえた。
「キャァァァーーッ!  清斎キヨときィィ、清斎ィィィーー」
 どうやら母親のお律の悲鳴のようだ。
 まず信乃介が悲鳴のする部屋に駆け込むと、『うッ』と息を飲んだ。

「なッ、なんだ。これは……」驚いて立ち止まった。
 部屋じゅう血まみれで真っ紅だ。まるで誰かが惨殺された跡のようだ。

 壁には大きく『おごる平家はひさしからず』と血文字で書かれてあった。
 あの闇御前が暗殺された本陣に書かれた血文字とそっくりだ。同じ下手人の仕業なのだろうか。

「ぬうぅ……」
 ここはどうやらお律の愛息子の清斎キヨときの書斎みたいだ。
 畳には血だらけの夜叉羅刹の面が落ちている。

「ううゥ……、これは酷い。いったい如何《いかが》なされました」
 俺は狂ったように泣き喚いているお律に訊いた。









☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

独裁者・武田信玄

いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます! 平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。 『事実は小説よりも奇なり』 この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに…… 歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。 過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。 【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い 【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形 【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人 【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある 【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。 (前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

赤松一族の謎

桜小径
歴史・時代
播磨、備前、美作、摂津にまたがる王国とも言うべき支配権をもった足利幕府の立役者。赤松氏とはどういう存在だったのか?

おぼろ月

春想亭 桜木春緒
歴史・時代
「いずれ誰かに、身体をそうされるなら、初めては、貴方が良い。…教えて。男の人のすることを」貧しい武家に生まれた月子は、志を持って働く父と、病の母と弟妹の暮らしのために、身体を売る決意をした。 日照雨の主人公 逸の姉 月子の物語。 (ムーンライトノベルズ投稿版 https://novel18.syosetu.com/n3625s/)

局中法度

夢酔藤山
歴史・時代
局中法度は絶対の掟。 士道に叛く行ないの者が負う責め。 鉄の掟も、バレなきゃいいだろうという甘い考えを持つ者には意味を為さない。 新選組は甘えを決して見逃さぬというのに……。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...