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カラクリ屋敷✨✨✨
清貴✨✨✨
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俺たちはお蝶や女中等に案内され、双子の兄の清貴の部屋へ向かった。信乃介とお蘭が着いてきた。
源内は、お松等を相手に酒を飲んでいるので置いてきた。
「あれェ……、そう云えばヒデさんは何処へ行ったのかしら?」
お蘭が少し心配そうに信乃介へ訊いた。厠へ行ったきり帰って来ない。
「さァな。糸の切れたタコだからな。アイツは」
信乃介は軽口を叩いた。確かに風来坊なので、行ったきり戻って来ない。
「さァ、こちらです。どうぞ」
お蝶が見張りに話しをつけたのだろう。
「清貴様。お蝶です。江戸から清雅様がお目通りしたいと参られましたが如何なされますか」
お蝶が畏まって尋ねた。
『どうぞ……。入られよ』室内からくぐもった声が響いた。
室内へ入ると、かすかに消毒液の臭いだろうか。異臭がした。
「はじめまして、清雅と申します」
兄とはいえ初対面なので緊張する。
寝たきりなのだろうか。寝床の周りが薄い蚊帳のようなモノで覆われていた。
やはり双子と云うだけあって俺に顔立ちが似ている。
「よく参られた。ご足労であったな……。こんな格好で失礼する」
兄の清貴は上半身だけ起こした格好だ。本を読んでいたのだろう。
「いえ、思ったよりもお元気そうです何よりです」
「フフゥン、今日は殊の外、気分が良いのだ。それにしても間に合って良かった」
「間に合って……」
「ああァ、もう少し清雅に会うのが遅ければ私の命が持たなかったんでね」
哀しそうに微笑んだ。
「ううゥ……、そんな気弱なことを……」
言わないでほしい。やっと肉親に会えたのだ。
「清雅の母上は……」
「ええェ……、おっかぁ、いえ、母親は三年前に逝去しました」
「そうか。ううゥン……、残念だったな。結局、私は母上には会えず仕舞いか」
「はぁ……、そうですね」
「私も江戸へ行けたら良かったのに」
遠くを見つめた。
「ハイ、俺もつい先日……、お蝶から聴いて双子の清貴様がいることを知りました」
「フフゥン、数奇な運命だ。おごる平家はひさしからずか……」
兄の清貴は自嘲気味に笑ってみせた。
「はぁ……」意味深な言葉だ。
☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚
源内は、お松等を相手に酒を飲んでいるので置いてきた。
「あれェ……、そう云えばヒデさんは何処へ行ったのかしら?」
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「さァな。糸の切れたタコだからな。アイツは」
信乃介は軽口を叩いた。確かに風来坊なので、行ったきり戻って来ない。
「さァ、こちらです。どうぞ」
お蝶が見張りに話しをつけたのだろう。
「清貴様。お蝶です。江戸から清雅様がお目通りしたいと参られましたが如何なされますか」
お蝶が畏まって尋ねた。
『どうぞ……。入られよ』室内からくぐもった声が響いた。
室内へ入ると、かすかに消毒液の臭いだろうか。異臭がした。
「はじめまして、清雅と申します」
兄とはいえ初対面なので緊張する。
寝たきりなのだろうか。寝床の周りが薄い蚊帳のようなモノで覆われていた。
やはり双子と云うだけあって俺に顔立ちが似ている。
「よく参られた。ご足労であったな……。こんな格好で失礼する」
兄の清貴は上半身だけ起こした格好だ。本を読んでいたのだろう。
「いえ、思ったよりもお元気そうです何よりです」
「フフゥン、今日は殊の外、気分が良いのだ。それにしても間に合って良かった」
「間に合って……」
「ああァ、もう少し清雅に会うのが遅ければ私の命が持たなかったんでね」
哀しそうに微笑んだ。
「ううゥ……、そんな気弱なことを……」
言わないでほしい。やっと肉親に会えたのだ。
「清雅の母上は……」
「ええェ……、おっかぁ、いえ、母親は三年前に逝去しました」
「そうか。ううゥン……、残念だったな。結局、私は母上には会えず仕舞いか」
「はぁ……、そうですね」
「私も江戸へ行けたら良かったのに」
遠くを見つめた。
「ハイ、俺もつい先日……、お蝶から聴いて双子の清貴様がいることを知りました」
「フフゥン、数奇な運命だ。おごる平家はひさしからずか……」
兄の清貴は自嘲気味に笑ってみせた。
「はぁ……」意味深な言葉だ。
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