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本家大邸宅✨✨✨

本家邸内……✨✨✨

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 俺たちが本家の邸内へ入ると護衛の者や女中等が出迎えた。

 邸内は、昼間だというのにヤケに暗く蝋燭の灯りでようやく見える程度だ。
 五、六間(約十メートル)先もぼやけて見えない。
 
「貴方様が清雅様でしょうか」
 妖艶な美女が女中を従え挨拶をした。歳の頃は三十前後だろうか。脂の乗り切った美女だ。

「ええェ……、お松様。こちらが江戸から遥々、参られた清雅様とご友人の方々です」
 お蝶が仲を取り持って紹介してくれた。

「どうもはじめまして江戸から参りました。清雅と申します」
 取り敢えず俺も挨拶をした。

「私は、お舘様の側女そばめ、松にございます。さァ、お舘様がお待ちしております。どうぞ中へ」
 お松は畏まって丁寧に招いた。
 
「ケッケケ、さすが御側女《おそばめ》様だねえェ……。良い尻をしてるぜ」
 ヒデは舌なめずりして、信乃介に無礼な事を囁いた。
「おいッヒデ!  なにをバカな事を……。下手な事を云っているとただじゃ済まないぞ。少しはわきまえろ」
 すぐに信乃介は睨んだ。
「……」確かに彼の云う通りだ。
 ここは、なにが飛び出して来るのか解らない伏魔殿だ。いらぬ発言で無用ないさかいは控えてほしい。

「ケッケケ……」だが、お調子者のヒデは肩をすくめおどけている。まったく先が思いやられる。

 一同は、お松とお蝶の後ろをゾロゾロとついていった。

 それにしても辺りは暗くどこをどう歩いているのか、まったく見当がつかない。
 まるで迷宮の中のようだ。

「おいおい、なんだよ。ここは?  暗いし、まるで迷路だな」
 ヒデは廊下をキョロキョロ見回しながら文句を云った。

「何よ。ヒデさんったら。さっきから文句ばかり云って。別に頼みもしないのに着いてきたクセして」
 蘭が睨みつけた。
「ケッケケ、違いねえェ……」肩をすくめ苦笑いを浮かべた。

「フフゥン」信乃介も辺りを確かめながら着いてきた。しかしかなり歩いたみたいだ。

「ぬうぅ、いつまで同じとこを歩かせるつもりだ。さっきもここを通ったはずだ」
 さすがに信乃介も業を煮やしたのだろうか。

「うむ、おそらく敵が侵入した際、おいそれと奥座敷へ入り込めないように設計されているのだろう」
 源内が説明した。
 確かにその通りなのが、まるで迷宮を彷徨っているみたいだ。

「ハッハァ、さすが平家の末裔だな。用心深いねえェ……」
 ヒデも感心し辺りを見回した。

 その時、不意にぼんやりとした廊下に恐ろしげな夜叉羅刹やしゃらせつの顔だけが浮かんで見えた。

「うッううゥ……!!」一同、息を飲んだ。
「キャァァァーー」
 すぐさま、お蘭が悲鳴を上げた。










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