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揚羽の里へ……✨✨✨

揚羽の里へ……✨✨

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 門をくぐり抜け谷を降りていくと里の住人に出会った。

 里の住人は、どこか浮世離れしている。
 小さな棚田があるだけなのに、かなり余裕のある暮らしぶりのようだ。

 しかし俺たちの様子を窺うように視線を感じた。張り詰めたみたいにピリピリと緊迫感が漂っている。
 しかも何者かに見つめられているみたいだ。
 
「ねえェ……、源内先生。ここの里の人はかなり裕福みたいね」
 お蘭が笑顔で訊いた。

「ううゥむ、そうじゃなァ……」
 用心深く源内も辺りを見回した。

「ケッケケ、やっぱ『隠し財宝』があるッでことじゃねえェのか……。こりゃァ!!」
 ヒデは嬉しそうに舌なめずりをした。金の匂いには人一倍、敏感だ。
  
「うゥン、もしかしたらワシ等には解らん金脈か、何かが眠っているのかもしれんな。フフゥン……」
 源内も苦笑して応えた。源内には山師としての顔もある。

「イイねえェ……。そうこなくっちゃ。せっかくここまで足を伸ばしたんだ。何か、途轍もない金脈を拝みたいぜえェ……」
 なんとも抜け目がない。

「フフゥンだ。取らぬ狸のなんとかにならないようにね。ヒデさん!」
 お蘭は冷ややかにわらってみせた。

「良いだろう。お蘭。少しは夢くらい見させろよ」
 ヒデはごきげんだ。
「……」かすかに、お蝶は顔色を曇らせた。

 その時、老人夫婦と視線があった。俺は軽く会釈をした。

 すると、その老婆が近づいてきて俺の顔をマジマジと見つめ指を差した。
「おおォ、貴方様は……」
 老婆は畏怖おそろしいものでも見たような形相で逃げていった。

「な、何なんだろう……」
 ワケがわからない。俺の顔に何かがあるのだろうか。
 まるで里じゅうの視線が俺に注がれているようだ。
 
 衆人に、一挙手一投足を監視されている気分で薄気味悪い。
 ゆっくりと目の前を大きな揚羽蝶が舞っていく。

「ウッフフ、綺麗な蝶!」
 お蘭は追いかけて、無邪気に手を伸ばし蝶を獲ろうとした。

「ダメですよ。お蘭ちゃん。蝶を獲っては!」
 すぐにお蝶がお蘭の手首を掴んで注意した。

「ええェ……?」
 びっくりしてお蘭は振り返り、伸ばした手は空を掴んだ。

「この里では、決して蝶を獲ってはいけないのです。特に揚げ羽蝶は!  それが揚羽の里のおきてです」
 厳重に注意した。
「ええェ……、おきてって?」
 美少女は不満げな顔で源内と信乃介を見た。

「お蘭、どこにでも御禁制の品と云うモノがあるんだ。里の掟なら従うしかないだろう」
 信乃介も真剣な顔で云った。

「だってェ……。こんなに綺麗なのに」
 どうにも納得できない様子だ。

「蝶は外を自由に飛び回るのが自然の姿じゃ。綺麗だからと云って無闇に捕まえたりするものではない」
 源内もお蘭をさとした。


 その時、不意に目の前に大きな屋敷が見えてきた。













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