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揚羽の里へ……✨✨✨

揚羽の里へ……

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 相変わらず、外は嵐が吹き荒んでいる。

 夜が明けてもまだ雨は降り続いていた。
 だが幾分、峠は越えたようだ。徐々に雨足は弱まってきた。
 あれから俺たちも各々、部屋へ戻りやすんだ。束の間の休息だ。かなり昂奮していたようだ。
 床に入っても眠れない。ようやく寝れたと思ったら来訪者に起こされた。


 来訪してきたのは、土蜘蛛衆の面々だ。
 将宗や加助等は俺たちの集まった部屋へ訪れ、手を差し伸べた。

「御前様亡きあと、我ら土蜘蛛衆は、ただの寄せ集めの烏合の衆に過ぎない。そこで、これからは清雅殿と手を組んで平家復興に尽力を注ぎたい」
 なんとも調子が良い話しだ。
 
「はァ……」
 なんとなく彼等と手を組むのを躊躇ためらわれた。昨夜まで命を狙われていたのだ。
 今ひとつ、信用はできないが断る理由もない。敵にすれば怖ろしいが、味方ならば心強い。

「……」お蝶も硬い表情で将宗らを見ていた。

 一方、信乃介は怪我を負った美鬼ミキを診察していた。

 ようやく明け方、美鬼ミキは意識を取り戻したが、昨夜のことは、まるで覚えていないと云う。

「ううゥ……、本陣でのこと?  酒を二、三杯呑んだあとのことは何も覚えてないわ」
 やはり酒に睡眠薬が混入していたのだろう。
 それとも後頭部を強打した所為かもしれない。今でいう記憶障害なのだろうか。

 大事を取って彼女はこの旅籠で二、三日逗留し、様子を見ることになった。



 俺たちは彼女と介護をする力鬼リキ等数人を置いて先を急いだ。信乃介との決闘に敗れた邪鬼の行方はわからないそうだ。
 不気味だ。このまま引き下げる相手ではないだろう。
 特に信乃介は警戒を怠るワケにはいかない。
 いつどこで、復讐に燃える邪鬼が襲いかかって来るのかわからないのだ。


 朝方には雨も小降りになり、出発することにした。
 まだまだ先は長い。こんなところで長居はできない。
 グズグズしてはいられない。一路、揚羽の里へ出発だ。
 お蝶や加助らを先頭に平家の落人の集落へ向かった。

「よォ、信さん。昨夜は本陣で切った張ったの殺しがあったんだってェ……」
 山師のヒデは愉しそうに訊いてきた。まるで浄瑠璃の演目のような口ぶりだ。

「まァな……」信乃介も応え難そうに眉をひそめた。ひけらかすつもりはないようだ。

「なんだよ。御前様が首が斬られたんだってェ……。
 清丸様の祟りらしいなァ。おごる平家は久しからずかァ。怖いねェ……」
 どこで話しを聞いたのか、尾ひれがついている。

「さァな、ヒデは酔っ払って飯盛女等と一緒に寝ていたんだろォ。ご機嫌じゃねえェか……」

「いやいや起こしてくれよ。せっかくの見物みものを」
「見せ物じゃないわよ。あんな気持ち悪いの」
 お蘭も不快な面差しで眉をひそめた。首を切断された遺体など好きこのんで見るものではない。

「なんだ。盛り上がったんだろ。信さん」
 相変わらず、ヒデは馴れ馴れしい態度だ。

「ヒデさんと源内先生だって飯盛女とうたげで盛り上がったクセに……」
 お蘭は唇を尖らせて批判した。

「いやいや、みんな年増だぜ。お蝶やお蘭みたいな若くて美女なら愉しいんだけどな」
 ヒデはチラッとお蝶を盗み見て笑みを浮かべた。

「フフゥン……」信乃介も苦笑した。










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