46 / 119
揚羽の里へ……✨✨✨
揚羽の里へ……
しおりを挟む
相変わらず、外は嵐が吹き荒んでいる。
夜が明けてもまだ雨は降り続いていた。
だが幾分、峠は越えたようだ。徐々に雨足は弱まってきた。
あれから俺たちも各々、部屋へ戻り憩んだ。束の間の休息だ。かなり昂奮していたようだ。
床に入っても眠れない。ようやく寝れたと思ったら来訪者に起こされた。
来訪してきたのは、土蜘蛛衆の面々だ。
将宗や加助等は俺たちの集まった部屋へ訪れ、手を差し伸べた。
「御前様亡きあと、我ら土蜘蛛衆は、ただの寄せ集めの烏合の衆に過ぎない。そこで、これからは清雅殿と手を組んで平家復興に尽力を注ぎたい」
なんとも調子が良い話しだ。
「はァ……」
なんとなく彼等と手を組むのを躊躇われた。昨夜まで命を狙われていたのだ。
今ひとつ、信用はできないが断る理由もない。敵にすれば怖ろしいが、味方ならば心強い。
「……」お蝶も硬い表情で将宗らを見ていた。
一方、信乃介は怪我を負った美鬼を診察していた。
ようやく明け方、美鬼は意識を取り戻したが、昨夜のことは、まるで覚えていないと云う。
「ううゥ……、本陣でのこと? 酒を二、三杯呑んだあとのことは何も覚えてないわ」
やはり酒に睡眠薬が混入していたのだろう。
それとも後頭部を強打した所為かもしれない。今でいう記憶障害なのだろうか。
大事を取って彼女はこの旅籠で二、三日逗留し、様子を見ることになった。
俺たちは彼女と介護をする力鬼等数人を置いて先を急いだ。信乃介との決闘に敗れた邪鬼の行方はわからないそうだ。
不気味だ。このままおめおめと引き下げる相手ではないだろう。
特に信乃介は警戒を怠るワケにはいかない。
いつどこで、復讐に燃える邪鬼が襲いかかって来るのかわからないのだ。
朝方には雨も小降りになり、出発することにした。
まだまだ先は長い。こんなところで長居はできない。
グズグズしてはいられない。一路、揚羽の里へ出発だ。
お蝶や加助らを先頭に平家の落人の集落へ向かった。
「よォ、信さん。昨夜は本陣で切った張ったの殺しがあったんだってェ……」
山師のヒデは愉しそうに訊いてきた。まるで浄瑠璃の演目のような口ぶりだ。
「まァな……」信乃介も応え難そうに眉をひそめた。ひけらかすつもりはないようだ。
「なんだよ。御前様が首が斬られたんだってェ……。
清丸様の祟りらしいなァ。おごる平家は久しからずかァ。怖いねェ……」
どこで話しを聞いたのか、尾ひれがついている。
「さァな、ヒデは酔っ払って飯盛女等と一緒に寝ていたんだろォ。ご機嫌じゃねえェか……」
「いやいや起こしてくれよ。せっかくの見物を」
「見せ物じゃないわよ。あんな気持ち悪いの」
お蘭も不快な面差しで眉をひそめた。首を切断された遺体など好きこのんで見るものではない。
「なんだ。盛り上がったんだろ。信さん」
相変わらず、ヒデは馴れ馴れしい態度だ。
「ヒデさんと源内先生だって飯盛女と宴で盛り上がったクセに……」
お蘭は唇を尖らせて批判した。
「いやいや、みんな年増だぜ。お蝶やお蘭みたいな若くて美女なら愉しいんだけどな」
ヒデはチラッとお蝶を盗み見て笑みを浮かべた。
「フフゥン……」信乃介も苦笑した。
☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚
夜が明けてもまだ雨は降り続いていた。
だが幾分、峠は越えたようだ。徐々に雨足は弱まってきた。
あれから俺たちも各々、部屋へ戻り憩んだ。束の間の休息だ。かなり昂奮していたようだ。
床に入っても眠れない。ようやく寝れたと思ったら来訪者に起こされた。
来訪してきたのは、土蜘蛛衆の面々だ。
将宗や加助等は俺たちの集まった部屋へ訪れ、手を差し伸べた。
「御前様亡きあと、我ら土蜘蛛衆は、ただの寄せ集めの烏合の衆に過ぎない。そこで、これからは清雅殿と手を組んで平家復興に尽力を注ぎたい」
なんとも調子が良い話しだ。
「はァ……」
なんとなく彼等と手を組むのを躊躇われた。昨夜まで命を狙われていたのだ。
今ひとつ、信用はできないが断る理由もない。敵にすれば怖ろしいが、味方ならば心強い。
「……」お蝶も硬い表情で将宗らを見ていた。
一方、信乃介は怪我を負った美鬼を診察していた。
ようやく明け方、美鬼は意識を取り戻したが、昨夜のことは、まるで覚えていないと云う。
「ううゥ……、本陣でのこと? 酒を二、三杯呑んだあとのことは何も覚えてないわ」
やはり酒に睡眠薬が混入していたのだろう。
それとも後頭部を強打した所為かもしれない。今でいう記憶障害なのだろうか。
大事を取って彼女はこの旅籠で二、三日逗留し、様子を見ることになった。
俺たちは彼女と介護をする力鬼等数人を置いて先を急いだ。信乃介との決闘に敗れた邪鬼の行方はわからないそうだ。
不気味だ。このままおめおめと引き下げる相手ではないだろう。
特に信乃介は警戒を怠るワケにはいかない。
いつどこで、復讐に燃える邪鬼が襲いかかって来るのかわからないのだ。
朝方には雨も小降りになり、出発することにした。
まだまだ先は長い。こんなところで長居はできない。
グズグズしてはいられない。一路、揚羽の里へ出発だ。
お蝶や加助らを先頭に平家の落人の集落へ向かった。
「よォ、信さん。昨夜は本陣で切った張ったの殺しがあったんだってェ……」
山師のヒデは愉しそうに訊いてきた。まるで浄瑠璃の演目のような口ぶりだ。
「まァな……」信乃介も応え難そうに眉をひそめた。ひけらかすつもりはないようだ。
「なんだよ。御前様が首が斬られたんだってェ……。
清丸様の祟りらしいなァ。おごる平家は久しからずかァ。怖いねェ……」
どこで話しを聞いたのか、尾ひれがついている。
「さァな、ヒデは酔っ払って飯盛女等と一緒に寝ていたんだろォ。ご機嫌じゃねえェか……」
「いやいや起こしてくれよ。せっかくの見物を」
「見せ物じゃないわよ。あんな気持ち悪いの」
お蘭も不快な面差しで眉をひそめた。首を切断された遺体など好きこのんで見るものではない。
「なんだ。盛り上がったんだろ。信さん」
相変わらず、ヒデは馴れ馴れしい態度だ。
「ヒデさんと源内先生だって飯盛女と宴で盛り上がったクセに……」
お蘭は唇を尖らせて批判した。
「いやいや、みんな年増だぜ。お蝶やお蘭みたいな若くて美女なら愉しいんだけどな」
ヒデはチラッとお蝶を盗み見て笑みを浮かべた。
「フフゥン……」信乃介も苦笑した。
☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。

陣借り狙撃やくざ無情譚(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)
牛馬走
歴史・時代
(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)猟師として生きている栄助。ありきたりな日常がいつまでも続くと思っていた。
だが、陣借り無宿というやくざ者たちの出入り――戦に、陣借りする一種の傭兵に従兄弟に誘われる。
その後、栄助は陣借り無宿のひとりとして従兄弟に付き従う。たどりついた宿場で陣借り無宿としての働き、その魔力に栄助は魅入られる。
剣客逓信 ―明治剣戟郵便録―
三條すずしろ
歴史・時代
【第9回歴史・時代小説大賞:痛快! エンタメ剣客賞受賞】
明治6年、警察より早くピストルを装備したのは郵便配達員だった――。
維新の動乱で届くことのなかった手紙や小包。そんな残された思いを配達する「御留郵便御用」の若者と老剣士が、時に不穏な明治の初めをひた走る。
密書や金品を狙う賊を退け大切なものを届ける特命郵便配達人、通称「剣客逓信(けんかくていしん)」。
武装する必要があるほど危険にさらされた初期の郵便時代、二人はやがてさらに大きな動乱に巻き込まれ――。
※エブリスタでも連載中
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した
若き日の滝川一益と滝川義太夫、
尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として
天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が
からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。
蘭癖高家
八島唯
歴史・時代
一八世紀末、日本では浅間山が大噴火をおこし天明の大飢饉が発生する。当時の権力者田沼意次は一〇代将軍家治の急死とともに失脚し、その後松平定信が老中首座に就任する。
遠く離れたフランスでは革命の意気が揚がる。ロシアは積極的に蝦夷地への進出を進めており、遠くない未来ヨーロッパの船が日本にやってくることが予想された。
時ここに至り、老中松平定信は消極的であるとはいえ、外国への備えを画策する。
大権現家康公の秘中の秘、後に『蘭癖高家』と呼ばれる旗本を登用することを――
※挿絵はAI作成です。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

信忠 ~“奇妙”と呼ばれた男~
佐倉伸哉
歴史・時代
その男は、幼名を“奇妙丸”という。人の名前につけるような単語ではないが、名付けた父親が父親だけに仕方がないと思われた。
父親の名前は、織田信長。その男の名は――織田信忠。
稀代の英邁を父に持ち、その父から『天下の儀も御与奪なさるべき旨』と認められた。しかし、彼は父と同じ日に命を落としてしまう。
明智勢が本能寺に殺到し、信忠は京から脱出する事も可能だった。それなのに、どうして彼はそれを選ばなかったのか? その決断の裏には、彼の辿って来た道が関係していた――。
◇この作品は『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n9394ie/)』『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093085367901420)』でも同時掲載しています◇
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる