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嵐の中の惨劇✨✨✨

嵐の中で……

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 ようやく憤怒の形相で睨みつけていた力鬼リキも落ち着きを取り戻したようだ。
「良いですか。将宗殿!  俺たちが敵対しても敵の思う壺だ」
 信乃介が提言した。

「ぬうぅ、敵のだとォ……?  誰のことじゃ!!」
「この本陣での闇御前暗殺の真相をこの信長の末裔、織田信乃介が解いて進ぜよう!!」
 また歌舞伎役者のように格好をつけた。
「な、なにィ、真相……!!」
 一同が信乃介の言動に注視した。

「まさか……?」
 この短時間に、真相を解いたと言うのか。
 いったい如何いかようにしてこの密室の本陣の中で、闇御前を暗殺出来たと云うんだ。
 俺にはまったく解らない。

「鳴かぬなら裁いてくれようホトトギス。
 天に代わりて、主らの悪事を!!」
 また信乃介は大見得を切った。もしかしたら時間稼ぎかもしれない。まだ考えがまとまっていないのだろう。

「信乃介!  本当に、この事件の下手人がわかったと云うのか」
 頭目の将宗が睨みつけて訊いた。
「フフゥン、俺はあんた等が誰を憎んで、誰に怨みがあるのか、皆目見当がつかない」
「何をォ、では真相はわからぬではないか!」

「いや下手人は、わからぬが、この密室のカラクリはけなくもない」

「ぬうぅ、では、どうしたと云うんだ」

「そうだな……。まず、本陣の前に見張り番をしていたものに、何者かが飯盛女に化け酒と夜食を運んできた。そうだろう」
 信乃介は見張り番をしていた力鬼リキらに訊いた。
「ううゥン……」尋ねられた力鬼も唸るだけだ。

「そうだ。そやつの云う通り……」見張り番のひとりが応えた。
「ああァ……、そうか。あの夜食と酒の中に眠り薬が」
 別の見張り番をしていた手下の一人がボソボソとつぶやいた。
「ぬうぅ……」力鬼リキも苦々しい顔で頷いた。

「そうだ。やがて見張り番が正体もなく眠った所で、下手人は本陣へ忍び込み闇御前を暗殺したんだ」

「ぬうぅ、では眠り薬を仕込んだその飯盛女が下手人なのか」
 すかさず将宗が聞き返した。

「いやそうとは思えない。飯盛女は、金で雇われた手先に過ぎないだろう。もしかしたら土蜘蛛衆の誰かが飯盛女に化けたのかもしれない。真の下手人は他にいる」
「ンううゥ……、なぜ、そう断言できるんだ?」
「見ろ。この闇御前の首を!!」

「ぬうぅ」
「見事な斬り口だ。よほどの手練であろう。お主のようにな。将宗!」

「なにをォ……、無礼な!  このワシが斬ったと云うのか」
「フフゥン、例えばの話しだ。そこいらの飯盛女に、こんな芸当が出来るはずはないだろう」
「なるほど……、しかしその飯盛女に化けたのはコヤツ……。美鬼ミキかもしれんだろう。
 美鬼コヤツならば、御前様の首を一刀両断に斬る事も可能だ」
 キツネ目の加助が手刀で斬る真似をした。

「フフゥン、可能性の話しならば、あんたかもしれないだろう」
 信乃介は笑みを浮かべ顎で加助を差した。
「な、何ィ……!  ワシが!!」

「ちょうど小柄なあんたなら女形に化けるのも造作のないこと。アンタが飯盛女に化けて暗殺したのかもしれない」

「ぬうぅ、ふざけるな。俺が御前様を殺すいわれは無い」
「ならば同じことが云えるだろう。美鬼と云う彼女も闇御前を殺す謂れ無いはずだ!!」

「そうだ。姉御が御前様を殺す道理は無い」
 怪物の力鬼も頷き信乃介に同意した。
「ぬうぅ……」加助も口では信乃介に叶わない。

「そこまでは良かろう。いずれ、眠り薬を盛った飯盛女も突き止めよう。
 だが本陣は内側からカギが掛けられておったのだぞ。内にいた美鬼以外、そんな芸当はできまい」
 しかし将宗は異論を述べた。

「いや、違うね。このカラクリはただの思い込みだ」
 信乃介は断言した。

「なにィ……、思い込みだとォ」
 










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