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嵐の中の惨劇✨✨✨
嵐の中で……
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『ドッドドドドォォォォーーンン!!』
時折り地響きをたてて雷鳴が轟いた。
「キャァァァーー、ねえェ、信さん。怖いよ」
まるでお蘭が悲鳴を上げ、仔猫のように信乃介へ抱きついた。
「だ、大丈夫だ。俺がついている」
信乃介も苦笑いを浮かべ諦めたようだ。美少女をきつく抱きしめた。
「ねえェ……、信さん。お蘭を一人にしないでよ」
「ああァ、わかってるよ」
その刹那、湯治場の入り口から異様な殺気を感じた。
「ぬうぅ!」
一同の視線が注がれる。
「!!」信乃介も美少女のお蘭を背後に匿い、警戒に怠りない。
「な、なんなの……?」お蘭も目を丸くして入ってきた男女を見つめた。
「……」ゆっくりと若い男女の二人連れが洗い場へ現れた。
若い男は眼光が鋭く筋骨隆々の色男だ。
身体じゅうに無数の傷跡やアザがあった。
頬にも傷がある。侍のようには見えないが相当の手練だ。
研ぎ澄まされた身体つきを見れば、一目瞭然だ。土蜘蛛衆のひとりだろう。
洗い場へ足を踏み込むと、すぐさま信乃介を睨んだ。まったく他の者たちには目もくれない。
信乃介だけが狙いのようだ。おそらくこの中では信乃介だけが、彼と同格の腕前だろう。
鳥肌が立つほど殺気が漲っている。
一方、女の方は艶しく豊麗な美女だ。
女人にしては腕や肩、脚も筋肉で締まっている。
彼女の腕や脚にも、いくつか傷跡やアザが見える。
くノ一であろうか。見るからに普通の町娘ではない。
「美鬼……」
お蝶は謎の美女を睨みつけ、かすかにつぶやいた。
「え、ミキ……?」俺も聞き返した。
お蝶は、あの謎の美女を知っているのだろうか。
だがヒデは、美人の飯盛女《メシもりおんな》かと勘違いし歓声を上げた。
「よぉ、ベッピンさんだね。宜しく頼むよ」
馴れ馴れしく近寄り、謎の美女の肩へ手を差し伸べた。
だが、まるで幽霊のようにヒデの手はすり抜けた。
「あれえェ……」ヒデは前のめりに、つんのめっていく。
「フフッ」
その間も謎の美女は信乃介を見つめ妖しく笑みを浮かべていた。ヒデのことなど歯牙にも掛けない。
頬に傷のある男はかなり俺たちと距離を取って、軽く湯を浴び大きな湯船の端の方へ身を浸けた。
その間も、信乃介を意識しているみたいだ。
けれどもどうやら今すぐ、ここで修羅場になる気配はない。
☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*
時折り地響きをたてて雷鳴が轟いた。
「キャァァァーー、ねえェ、信さん。怖いよ」
まるでお蘭が悲鳴を上げ、仔猫のように信乃介へ抱きついた。
「だ、大丈夫だ。俺がついている」
信乃介も苦笑いを浮かべ諦めたようだ。美少女をきつく抱きしめた。
「ねえェ……、信さん。お蘭を一人にしないでよ」
「ああァ、わかってるよ」
その刹那、湯治場の入り口から異様な殺気を感じた。
「ぬうぅ!」
一同の視線が注がれる。
「!!」信乃介も美少女のお蘭を背後に匿い、警戒に怠りない。
「な、なんなの……?」お蘭も目を丸くして入ってきた男女を見つめた。
「……」ゆっくりと若い男女の二人連れが洗い場へ現れた。
若い男は眼光が鋭く筋骨隆々の色男だ。
身体じゅうに無数の傷跡やアザがあった。
頬にも傷がある。侍のようには見えないが相当の手練だ。
研ぎ澄まされた身体つきを見れば、一目瞭然だ。土蜘蛛衆のひとりだろう。
洗い場へ足を踏み込むと、すぐさま信乃介を睨んだ。まったく他の者たちには目もくれない。
信乃介だけが狙いのようだ。おそらくこの中では信乃介だけが、彼と同格の腕前だろう。
鳥肌が立つほど殺気が漲っている。
一方、女の方は艶しく豊麗な美女だ。
女人にしては腕や肩、脚も筋肉で締まっている。
彼女の腕や脚にも、いくつか傷跡やアザが見える。
くノ一であろうか。見るからに普通の町娘ではない。
「美鬼……」
お蝶は謎の美女を睨みつけ、かすかにつぶやいた。
「え、ミキ……?」俺も聞き返した。
お蝶は、あの謎の美女を知っているのだろうか。
だがヒデは、美人の飯盛女《メシもりおんな》かと勘違いし歓声を上げた。
「よぉ、ベッピンさんだね。宜しく頼むよ」
馴れ馴れしく近寄り、謎の美女の肩へ手を差し伸べた。
だが、まるで幽霊のようにヒデの手はすり抜けた。
「あれえェ……」ヒデは前のめりに、つんのめっていく。
「フフッ」
その間も謎の美女は信乃介を見つめ妖しく笑みを浮かべていた。ヒデのことなど歯牙にも掛けない。
頬に傷のある男はかなり俺たちと距離を取って、軽く湯を浴び大きな湯船の端の方へ身を浸けた。
その間も、信乃介を意識しているみたいだ。
けれどもどうやら今すぐ、ここで修羅場になる気配はない。
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