上 下
30 / 119
嵐の中の惨劇✨✨✨

嵐の中で……

しおりを挟む
 こうして見ると、圧倒的な美女だ。
 しかも妖艶で蠱惑的だ。
 見る者全ての男心を鷲掴みにしていくようだ。
 知らぬ間に鼻息が荒くなってしまう。

「ゴックン」誰かが音を立てて生唾を飲み込んだ。
 まさに固唾を飲んで見つめている感じだ。
 無理もない。歌麿の浮世絵よりも生々しく芸術的なのだ。

 もちろんお蘭も美少女だが、お蝶の匂いたつような色香に俺たちは目を奪われた。
 花で例えれば、まだツボミのお蘭とは違って今が満開の見頃だろう。

 男らの注目の中、湯浴みをし俺の前へ歩み寄り苦笑いを浮かべた。
「清雅様……、恥ずかしいので、そんなに凝視しないでください」
 ゆっくり足を上げ入浴していく。

「あ、ああァ……、ゴメン」慌てて、俺も視線を逸らした。
 知らぬ間に、彼女の官能的な肢体に魅入られていたようだ。

「もう、信さんもヨダレ垂らして」
 横では、お蘭が嫉妬したように眉をひそめ信乃介の脇腹へ肘鉄を入れた。

「うッぐうゥ……、別にヨダレなんか」
 信乃介は、少し呻きながら誤魔化そうと手ぬぐいで口元を拭いた。

「フフ、温ッたかいですね。清雅様」
 お蝶は肌が触れ合うほど近くへ浸かってきた。
 こんなに近くに女人の柔らかな身体を感じた事は初めてだ。
「ええェ、そ……、そうですね」
 頬が引きつり上手く笑えない。
 豊満で柔らかな胸の膨らみが俺の二の腕へ押しつけられた。一気に、全身が熱く火照ってくるようだ。
 身体じゅうが燃えるように熱くなった。
 敏感に股間も反応してしまう。

「ケッケケェ……、お蝶さんと旅が出来て嬉しいぜ。ムサ苦しい野郎と鼻を垂らした小娘だけじゃ、味気なくてイケねェよォ」
 山師のヒデが馴れ馴れしく笑顔で寄ってきた。
 視線は、お蝶のたわわに実った胸元へ注がれたままだ。

「はぁ……、何よ。鼻を垂らした小娘ッて誰のことなのォ!!」
 ムッとして、お蘭がヒデを睨んだ。

「ケッケケ、別に、お蘭のことじゃねえェよ」
 ようやくみんな温かい湯に浸かりくつろいできたみたいだ。
 外は荒れ狂ったような雷雨だ。

 大地を切り裂くみたいな雷鳴が轟いていく。
 嵐の中、俺たちはこの旅籠に閉じ込められることになった。










☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

陣借り狙撃やくざ無情譚(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走
歴史・時代
(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)猟師として生きている栄助。ありきたりな日常がいつまでも続くと思っていた。  だが、陣借り無宿というやくざ者たちの出入り――戦に、陣借りする一種の傭兵に従兄弟に誘われる。 その後、栄助は陣借り無宿のひとりとして従兄弟に付き従う。たどりついた宿場で陣借り無宿としての働き、その魔力に栄助は魅入られる。

剣客逓信 ―明治剣戟郵便録―

三條すずしろ
歴史・時代
【第9回歴史・時代小説大賞:痛快! エンタメ剣客賞受賞】 明治6年、警察より早くピストルを装備したのは郵便配達員だった――。 維新の動乱で届くことのなかった手紙や小包。そんな残された思いを配達する「御留郵便御用」の若者と老剣士が、時に不穏な明治の初めをひた走る。 密書や金品を狙う賊を退け大切なものを届ける特命郵便配達人、通称「剣客逓信(けんかくていしん)」。 武装する必要があるほど危険にさらされた初期の郵便時代、二人はやがてさらに大きな動乱に巻き込まれ――。 ※エブリスタでも連載中

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した 若き日の滝川一益と滝川義太夫、 尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として 天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

蘭癖高家

八島唯
歴史・時代
 一八世紀末、日本では浅間山が大噴火をおこし天明の大飢饉が発生する。当時の権力者田沼意次は一〇代将軍家治の急死とともに失脚し、その後松平定信が老中首座に就任する。  遠く離れたフランスでは革命の意気が揚がる。ロシアは積極的に蝦夷地への進出を進めており、遠くない未来ヨーロッパの船が日本にやってくることが予想された。  時ここに至り、老中松平定信は消極的であるとはいえ、外国への備えを画策する。  大権現家康公の秘中の秘、後に『蘭癖高家』と呼ばれる旗本を登用することを―― ※挿絵はAI作成です。

信忠 ~“奇妙”と呼ばれた男~

佐倉伸哉
歴史・時代
 その男は、幼名を“奇妙丸”という。人の名前につけるような単語ではないが、名付けた父親が父親だけに仕方がないと思われた。  父親の名前は、織田信長。その男の名は――織田信忠。  稀代の英邁を父に持ち、その父から『天下の儀も御与奪なさるべき旨』と認められた。しかし、彼は父と同じ日に命を落としてしまう。  明智勢が本能寺に殺到し、信忠は京から脱出する事も可能だった。それなのに、どうして彼はそれを選ばなかったのか? その決断の裏には、彼の辿って来た道が関係していた――。  ◇この作品は『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n9394ie/)』『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093085367901420)』でも同時掲載しています◇

旧式戦艦はつせ

古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

処理中です...