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平家伝説財宝殺人事件✨✨

異形の寺✨✨✨

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 夜空には仄かに青白い月明かりが照っている廃寺だ。
 放りっぱなしの庭には草が生い茂り鈴虫が鳴いていた。

 朽ち果てた本堂に怪しい影がひとつふたつと増えていく。辺りにいる土蜘蛛衆は夜叉羅刹の面をかぶっていた。見るからに不気味だ。

 仏像を背に頭巾と夜叉羅刹の面で顔を覆った闇御前が目を光らせた。
 三つの影が闇御前の前に姿を見せた。

「ン、お主等。よく参ったな」
 闇御前が、一同にねぎらいの言葉を述べた。

「フフゥン、御前様。あたしたちを呼ぶっで事は、よほど凄腕の剣豪ツワモノなんでしょうね……」
 影のひとりは美女だ。やけに紅い唇が艶《なま》めかしい。

「うむゥ……、美鬼ミキか!」
「ハッ、闇御前のためなら如何様いかよう戦場ところへでも参ります」

「フフゥン、頼もしいな」
「ッで、狙いをつけた敵と言うのは」

「ぬうぅ、織田信乃介とか申す浪人だ」
 将宗が、あまり感情を交えず応えた。

「フフゥン、腕がたつと言っても、しょせん浪人風情に……、土蜘蛛衆が総出で掛かることはないでしょう。この美鬼ミキひとりで始末して差し上げますわ。ホッホホホ」
 美貌のくノ一はあざ笑ってみせた。

「ゲッへへ、そうだぜ。織田だろうが明智だろうが、豊臣だろうが、そんなヤツは、ひと捻りだろう」
 背後に座る大きな怪物のような男が嗤った。
 顔には無数の傷痕があった。しかし何処か愛嬌が感じられる。
 名は力鬼リキと言う。

「フフ、力鬼《リキ》。油断してるとそのブサイクな顔に、刀傷が二つ三つ増える事になるぞ」
 邪鬼と呼ばれる忍者だ。筋骨隆々の色男だ。頬に傷があった。

「ン、だとォ、邪鬼!」巨漢は立ち上がりかけた。
 あまり二人は仲が良くない。

「よさぬか。闇御前の前だ。良いか。若い清雅と言う男は無傷で、『揚羽の里』までやり過ごすんだ」
 土蜘蛛衆の頭目、将宗が命じた

「フフゥン、なんだい。注文が多くて面倒くさいねェ……。片っ端からまとめて片づけてやろうぜ」
 美鬼ミキが上から目線で応えた。

「よせェ……、美鬼。清雅に死なれると、『隠し財宝』の在りがわからなくなる」
 しかし将宗が厳命した。

「フフゥン、うるさいね。このわたしに命令するんじゃないよ。
 わたしに命じられるのは闇御前だけだ」

「ぬうぅ……、こしゃくな」将宗は顔を顰めた。

「ゲッへへ、『隠し財宝』かァ。たらふく喰えそうだな」
 力鬼は懐ろから出した大きな蛙を宙吊りにし、ペロリと飲み込んだ。

「そうだ。我ら『平家の隠し財宝』が手に入るかどうかの瀬戸際だ。だが未だに、羽子板や千羽鶴に隠された謎が解明出来ん!  清雅や源内らに解いてもらうしかあるまい」
 将宗は悔しげに睨んだ。

「フフゥン、じゃァ彼等は、お宝までの案内人ッて所かしら?」
 美鬼は苦笑いを浮かべた。
「そうだ。ヤツらが在り処を突き止めた所で、こちらがを戴くと言う寸法だ」
 
「フフゥン、首尾よくいけば、あたしらにも分け前は戴けるんでしょうねェ……」
 妖艶に笑みを浮かべ美鬼も愉しげだ。

「もちろんだ。取り敢えず、取り巻きの信乃介とお蝶を斬って捨てろ」
「お蝶も……、良いのか。斬っても」
 確認するように聞き返した。

「構わぬ。我らを裏切りし者は、死を持って償わせるまでだ!  行けェ……!」
 闇御前が命じた。

「御意!」
 影は音もなく消えた。











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