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平家伝説財宝殺人事件✨✨

源内邸✨✨✨✨

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 夜空には妖しく月が照っている。満月だ。
 月明かりが煌々と江戸の町を照らしていた。

 庭では涼やかに鈴虫が鳴いている。
 深川清住町の源内邸では未だに羽子板の飾り絵を調べていた。


「ケッケケ、源内先生よ。なにかわかったらオイラにも教えて下さいよォ。なにしろあの『平家の隠し財宝』だ。ほらオイラの懐にァ、たんまり余裕があるんだから」
 山師のヒデは陽気に酔っ払っていた。

「フフゥン……、ヒデ!  取らぬ狸の皮算用だぜ。所詮、『平家の隠し財宝』など幻影まやかしに過ぎないんだからな」
 信乃介はバカにしたような口調でたしなめた。

「なんでぇ、信さん。いいじゃねえェか……。ご禁制、ご禁制で息も詰まっちまう。せめて夢くらい自由に見させてくれよ」
 ヒデも愚痴をこぼした。

「フフゥン、確かにな。だが、この羽子板だけじゃ雲を掴むような話しだ。せめて洞窟のある場所だけでも特定できれば良いのだが……」
 しかし源内もお手上げの様子だ。平家の落人伝説だけでも全国にいくつもある。

「だったら、オイラにもその羽子板を貸してくださいよ」
 ヒデがニヤッと笑みを浮かべ手を伸ばした。

「バカなの。ヒデさんなんかが見たって、穢《けが》れるだけよ」
 すかさずお蘭がヒデの手の甲をパチンと叩いた。

「痛ッたた……」慌てて手を引っ込めた。
「まだ他に何か、キヨのおっかぁさんが遺してないか、明日にでも訊いてみるかァ」
 源内も今夜は諦めたみたいだ。

「それと……、あのお蝶とかいう美女おなごを襲っていた連中のことなんだが」
 信乃介も眉をひそめ源内に相談した。

「ううゥン……、土蜘蛛衆か。どうやら雲行きが怪しくなってきたな」
 源内も腕を組み深くうなずいた。

「ウソだろう。明日は雨かい。ヤダねえェ……」
 ヒデは不満そうに夜空を見上げた。
「フフ……」信乃介も夜空を仰ぎ苦笑した。

 夜空には煌々と満月が照っている。










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