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平家伝説財宝殺人事件✨✨

お蝶✨✨✨

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 夜空に数え切れぬほどの星が瞬いていた。

 満月の夜、深川清住にある柿の木長屋の俺の家へお蝶が身を寄せていた。
 治療を受けた源内の屋敷へとどまれば良かったのだが、彼女は強引に俺の家へ押しかけた形だ。

 若い女人が俺の家へ入ったのは初めてだった。
 もちろん何ももてなしなど出来ない。
 お蝶が料理をし、俺の前へ食事を用意していた。

「いやァ、お蝶さん。そんな怪我をしているのに、大丈夫なんですか」
 心配なので俺も配膳を手伝った。こうしていると本当に夫婦めおとになったような気分だ。
 お蝶と目が合うだけで、気分が高揚してくる。

「ええェ……、信乃介先生に治療して戴きましたから。さァ、どうぞ。召し上がって下さい」

「ハッハハ、どうも……」
 お蝶の手料理だと思うと、いつもよりお膳の上がはなやかに見える。
 ひと口食べたが格別だ。

「いかがでしょうか」
「旨っめェ……。料理も得意なんですね。お蝶さんは」
 美女の手料理など始めて口にした。

「フフ、お蝶と呼んで下さい。キヨ様」
「いやいや、キヨ様なんて柄じゃないですよ」
「ご家族の方は……」
 お蝶が家の中を見回した。

「いやァ、おっぁが亡くなってからずっとひとりなんで、まともなメシを食ったことがありませんよ。本当に夢のようです……」

「そうですか。お母様は、いつお亡くなりに……」
「はぁ、そうですねェ……。かれこれ三年ほど前に」
 早いものだ。母親が亡くなってからもう三年の月日が流れていた。

「申し訳ありません。それでは奥方様は……」
「奥方……、ハッハハ、こんなむさ苦しいトコに奥方なんて来てくれる物好きはいませんからね」

「そんなことはないでしょう。どうぞ、お酒も」
 ツヤのある微笑みを浮かべ酒を勧めてきた。

「どうも……、あまり飲めないのですが」
 だが美女のお酌では断る理由もない。
「フフ……」お蝶は妖艶な笑みを浮かべた。
 何か魂胆がありそうな気配だ。

 しかし今の俺は天にも昇るような気分なので、彼女のたくらみなど知るよしもなかった。












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