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平家伝説財宝殺人事件✨✨

信乃介見参✨✨✨

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「信長の末裔だァァーー。
 鳴かぬなら裁いてくれようホトトギス。
 天に代わって、主らの悪事を!!」
 
「ぬうぅ、ふざけた事を!」
 敵の頭目らしき男も大上段の構えから斬りかかった。
 
「おいおい、あんまり怖い顔をするなよ。夜中に一人で寝れなくなるだろう」
 信乃介は口では弱気だが、笑みを浮かべ余裕すら感じさせる。
 斬りかかってきた敵の刀を打ち払うように、剣を一閃させた。さすが鬼斬り丸だ。
 ユラユラと妖気が漂っている。

「くうゥ……、笑止!」
 敵の頭目は剣を弾き返され睨んだ。

「笑い事じゃねえェさ……。こっちも必死だからな」
 だが信乃介は頭目の剣を受けると、返す刀で土蜘蛛衆へ反撃した。

「ぐっわァ!!」血煙りを上げ倒れていく。
 あっという間に形勢が逆転したようだ。
 閃光のように剣が煌めき、敵を撃ち倒していく。信じられない腕前だ。

「ぬうぅ……」敵の軍勢も怯んだ。
 こうなっては、まったく相手にならない。
 妖気漂うけんさばきに、土蜘蛛衆もたじろいだ。

 「ぬうぅ、邪魔だてするなァァーー!!」
 頭目は怒りに燃え、石の飛礫ツブテを指先で弾いた。

「ああァ!!」俺にはまったく見えない。閃光を発し石の飛礫が信乃介の元へ目掛けて飛んでいく。

「くうぅ!」だが、まさに魔剣の力か。
 剣を振るうと、あっさり飛礫など撃ち落としていった。
「うううゥ……」土蜘蛛衆も驚愕の眼差しで事の成り行きを見ている。

 魔王の如き圧倒的な強さだ。俺もこれほど強い剣豪をの当たりにしたのは初めてだった。
 信長の末裔と云うのもあながち嘘ではないようだ。

「フフゥン、どうした。口ほどにもないな」
 あっという間に、土蜘蛛衆は血祭りに上がった。
 それはまるで舞いでも踊っているような華麗な殺陣たてだ。俺のような並みの浪人には及びもつかない。

「うッううゥ……」なんて云う剣の達人だ。
 鳥肌が立つような真剣の演舞を見せつけられたみたいだ。とても人間業とは思えない。
 修羅を思い起こすほどの圧倒的な剣さばきだ。

「ぐぅ、その妖刀は……」敵も茫然自失だ。呆れるほど強い。

「フフゥン、こいつか。人呼んで、『鬼斬り丸』だ。鬼だろうが妖怪だろうが刃向かう敵は、ぶった斬るッてシロモンさ。いくら土蜘蛛衆でも鬼よりは強くなかろう!!」
 信乃介は己の剣を自慢した。

 大江山で源頼光が鬼の頭領、酒呑童子の首をねたといわれる幻の妖刀、『鬼斬り丸』だ。


 名だたる名君の手を渡り、田沼意次の屋敷にあるとされていた伝説の名刀だ。
 なぜ今、信乃介の手元にあるのかは定かではない。

「くッ、いったん退けェ……」
 敵の頭目も目算が狂ったのか、慌てて顎で命じた。
「ぬうぅ、しかし将宗様……」
 手下の加助は悔しそうに眉をひそめた。
 だが劣勢は明らかだ。

「信長の末裔だか、知らんが、コヤツと張り合ってもなんの得にもならん。行くぞ」
 もはや勝負は決した。如何に土蜘蛛衆と云えども鬼斬り丸の前には為すすべがない。
 散り散りになって退散していく。

 一瞬にして影どもは疾風のように消えていった。

「フフゥン……、なんだ。つまらねえェな。せっかくのうたげも、お開きか」
 信乃介は笑みを浮かべ軽口を叩いた。まだ余力を残しているようだ。
 なんとも怖ろしい剣豪と云えるだろう。
 
 結局、信乃介の活躍で影たちを追い払った。

「ありがとう。信乃介先生!」
 俺は礼を言って傷ついた美女に手を貸した。
「ううゥ……、ありがとうございます」
 手負いの美女は畏まって礼を述べた。

「フフゥン、なんだ。娘さんずい分と厄介な連中に狙われているな。見たところ土蜘蛛衆か……」
 信乃介も手を貸そうとした。

「えェ……?  それじゃァやはりヤツらは本当に土蜘蛛衆。忍者なのですか」
 思った通りだ。俺は夢で幾度となくアイツ等に襲われていた。正夢だったのだろうか。

「ううゥ、ハイ……」美女も小さくうなずいた。

「フフゥン、見ろよ。ほらァ、甲賀や伊賀と云った連中は独特な手裏剣を使うが、土蜘蛛衆のヤツらは小さな飛礫つぶてを中指で弾くんだ」
 信乃介は木の幹に突き刺さった飛礫を小刀でほじくりだし、俺の元へ放り投げた。

「石の飛礫つぶて……」受け取り、手にした飛礫を見つめた。小さくて丸い小石だ。
 これを中指で弾くのか。これなら戦場でいくらでも補充がきく。手裏剣などよりも実戦に則した武器と云えるだろう。

「ううゥ……」
 美女がかすかに呻いた。腕からは血が流れている。

「大丈夫ですか。信さん、ご面倒ですが早くこの方の怪我を診て上げて下さい」
 さっそく俺は信乃介に頼んだ。杉田玄白の弟子を名乗り、この辺りでは最も信頼できる医者だ。
 
「ああァ、そうだな。ンうゥン……、ここからなら源内先生のトコへ連れて行こう」
 辺りを見回し、一番近い源内の屋敷へ向かった。

「あ、あの……」美女は心配そうに俺の顔を窺った。
「心配には及ばないさ。こう見えても、この方は蘭学医で信乃介先生だ。腕は一流だよ」

「バァカ、一流じゃねえェよ……」
 信乃介は俺を睨んだ。
 
「ええェ……?  ですが」さすがに、二流とは紹介できないだろう。

「フフゥン、一流じゃなくて、さ」
 信乃介は不敵にニヤリと微笑んだ。

「ハッハハ、違いねえェ……」
「ウッフフ……」謎の美女も微笑んだ。
 少しだけ場がなごんだみたいだ。

「ああァ、そう云えば俺はキヨって言います。ええェッと……、あなたは?」
 名前を尋ねた。

「私ですか……。私は蝶です」
「ちょう……?」

「ハイ、揚げ羽蝶の蝶!」
「お蝶さんか……」一瞬、蝶の紋章が脳裏をよぎった。名前の通り可憐で美しい女性だ。

「ほぉ、お蝶さんねェ……。しかしなんだって、あんな土蜘蛛衆みたいな忍者に……」
 信乃介も少し詮索して訊いた。

「それは……、ちょっと解りかねます」
 お蝶も話しにくそうだ。言葉を濁した。

「まァ、詳しい話しは手当してからにして。とにかく早く手当をしよう。さァ」
 俺と信乃介で謎の美女お蝶を抱きかかえ、源内邸へ連れていった。












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