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東洲斎写楽

写楽

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『問題は当時、写楽が売れたか、どうかだ』


「売れたんでしょ。売れたから蔦重が次々、出版したんじゃないの?」



『そうだ。北斎は写楽じゃないっていうヒトは必ずそう言う。だけどね。浮世絵類項にもハッキリ書かれている通り、当時、写楽は売れなかったんだよ』


「そんなバカな……」


『写楽を発掘したのは、日本人じゃないんだ』


「えェ、日本人じゃないの?」


『ああァドイツの心理学者ユリウス・クルトが写楽を絶賛したことから逆輸入の形で写楽が日本でもブームになったんだ』



「ドイツの心理学者が?」


『そう、日本では写楽は売れなかったし、もともと浮世絵なんて芸術的価値はないと思われていたんだ』


「そうなの?」


『だから誰もが忘れ去っていた浮世絵師だったんだよ。写楽は!』


「はァ」


『写楽が外国で評価されたので、日本人もようやく写楽の芸術性を認めたんだ』



「そ、そうなのか」


『これで北斎が写楽だった謎が解けるんだ』

「えェ、どうして?」


『写楽はたったの十ヶ月だけ百四十点も作品を残したにも関わらず、こつ然と姿を消し、その後、いっさい浮世絵の世界に現われた形跡がないんだ』


「ああァ、北斎が元の生活に戻ったから?」

『そうだ。春朗と写楽の二重生活をする必要がなくなった』 

「はァ」



『しかも写楽は思ったよりも江戸での評価が低くて、写楽と言うペンネームも価値がない。だから蔦重の死後、写楽の画号を売ろうとしても、売れなかったんだよ』










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