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東洲斎写楽

天才

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『当時、そんなことはできないとアニメ関係者は証言している。一話、四百カットから五百カット。それを二十六話分だ。それを毎週描きあげるなんて、天才でなければできなかっただろうからね。しかも一話目のラッシュを見て作画監督の大塚康夫氏にキレたらしいんだ』


「作画監督にキレた?」

『ヒロインのラナが思っていた以上にブスだったらしいんだ。それで宮崎氏が怒って、二話目以降はラナのカットだけ宮崎駿氏が修正したらしい。言っておくが大塚康夫氏は日本でトップのアニメーターで、のちにルパン三世『カリオストロの城』でも作画監督をしているんだ。かつて手塚治虫氏が、自身のアニメ『ワンダースリー』のオープニングの作画を見て驚いたらしいんだ。日本にもディズニーに匹敵するアニメーターがいると。その作画を大塚康夫氏がやっていたことを知って嫉妬したらしいんだ。それほどのアニメーターでも宮崎駿氏はリテイクしたんだよ!』



「へえェ、でも宮崎さんは全カット場面設定をしながらだろう」



『そうだよ。もちろん場面設定とはいえ、止め絵として使えるレベルだ。圧倒的なデッサン力。そしてスピードとタフさで、『未来少年コナン』を作り上げたんだ。もちろん高畑勲監督の力も大きいけどね』


「はァ」


『見てもらえばわかるが『コナン』は『天空の城ラピュタ』を彷彿とさせるストーリーだ。絵はラピュタの方が遥かに、豪華で上手くなっている。だけどおそらく世界で一番面白くてハラハラするアニメは『未来少年コナン』なんだよ』
 ナポレオンは熱く語った。よほど『未来少年コナン』が好きなようだ。



「そうなのか。じゃァボクも今度、見てみるよ」


『ああァ、絶対にお薦めだ』
「うん」


『だからアニメ関係者でさえ絶対に無理だと言うことも、天才ならできるのさ。北斎も宮崎駿氏に負けず劣らず、天才だろうからね』



「ううゥ……」
 確かに。北斎なら春朗として仕事を全うしながら、東洲斎写楽として役者絵を描けたのだろう。









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