十秒探偵ナポレオン＆トモロー 写楽の正体を暴け！

東洲斎写楽

北斎

『葛飾北斎が写楽ではないという理由は、いくつかあるんだけど』


「理由があるの？」

『ああァ、一番、大きな理由は彼にはアリバイがあるんだよ』


「え、アリバイって、何それ。殺人事件じゃないんだから」



『うん、さっきも言ったけど北斎は浮世絵師として長く活躍していたけど、写楽が彗星のように現われた時、北斎は春朗の名前で別に仕事をしていたんだよ』



「ああァ、なるほどねえェ。春朗として仕事をしていたから写楽を演じるのは無理だって言うのか」
　いわゆるふたつの仕事を同時に請け負う掛け持ちだ。


　確かに北斎としての仕事をしながら、たったの十ヶ月で百四十点の役者絵を描くのは至難の業だ。



『うん、まァ、でも掛け持ちができないと言うのは美術評論家やミステリー作家の言うことだからね。しょせん彼らは天才浮世絵師の事がわかってないんだよ』


「天才浮世絵師？」


『そう並の浮世絵師だったら無理だろうけど。北斎は天才なんだよ。それも群を抜いたねえェ』


「群を抜いた天才……！」


『そう、世の中には常人では計り知れない天才がいるんだ』



「はァ自分のことかァ」
　ナポレオンも群を抜いた天才だろう。

『例えば、現代なら宮崎駿監督だ！』

「え、ジブリの？」


『ああァ彼は映画ルパン三世『カリオストロの城』をやる前に、『未来少年コナン』と言うシリーズのレイアウトを切っていたんだ』


「レイアウト？」


『そう場面設定だ。それも全話全カットだ』


「全カット？」