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東洲斎写楽

蔦重

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『だけどねえェ。売れたにしても売れなかったにしても、どうしても矛盾が生じるんだ!』


「矛盾?」



『『浮世絵類項』にあるように売れなかったすれば、どうして蔦重が十ヶ月間で百四十点も出版したのかわからないだろう』



「なるほどねえェ。逆にメチャクチャ売れたとすれば?」



『そりゃァなんで浮世絵類項に売れなかったと記されたのか、意味不明だ』



「なるほどねえェ」


『それもこれも蔦重が写楽の正体を明かさず、こつ然と姿を消した事が一番の問題なんだ』


「版元の蔦重は正体を知っていたの?」


『ああァ、そりゃァ知っていただろう。大金を掛けて華々しくデビューさせたんだからな。当時、まったく無名の浮世絵師を!』



「それほど蔦重は写楽の腕を買っていたんだろうね」


『当然だ。蔦重は絶対に売れると踏んで、雲母キラ摺り大首絵を二十八枚、店頭に並べて売り出したんだからねェ』


「キラ摺り?」


『別名、雲母うんも摺りと言って背景をキラキラさせて絵を際立たせる技法だよ』


「ふぅん」


『これまで写楽の正体と言われたのは有名、無名合わせて、三十人以上いるんだ』


「そんなに?」


『ああァ、北斎、歌麿、平賀源内、そして版元の蔦重!』

「え、蔦重も。版元が浮世絵師なの?」


『まァ蔦重も浮世絵を描いてたからね。写楽と名乗って売り出したと言うのも、まるっきりデタラメとは言えないけどね』

「ううゥン……」

『果ては、シャーロックというオランダ画家と言うのもあるね』


「シャーロックだから『写楽』?」



『ああァ、いずれにしても確認の取りようがない。他に描いた浮世絵が見つからないから比較のしようがないんだ。そう言えば他にも秋田のラン画家と言うミステリー作家もいたよ』







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