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ドブ板ライブ……✨🎸✨✨💕
ドブ板……✨✨✨
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初日は、あれだけ売れたのに二日目はまったく客足が途絶えた。
あと数十枚で完売だと言うのに足踏み状態だ。
翌日は、昨日とは打って変わって閑古鳥が鳴いていた。
「ううゥン……、なによ。これェ」
すぐそこにゴールが見えているのに途中棄権するようで嫌な気分だ。
ウソのように売上げが落ちた。
最悪だ。
買ってもらおうとしても、まったくひと通りがない。
こんなことなら昨日のうちに全部売ってしまえば良かった。
もちろん、学校でクラスの同級生らに頼めば何枚か売れるだろう。
卒業Tシャツの代わりに記念としてと『ヨコスカ ネイビー パーカ』をと言えば、無下に断られることもないだろう。
しかし……。
ここまで自分たちの力だけでやってきたのに、最後の最後に縁故に頼るのは情けない。
「どうする……」今日さばけなければ、買取りになってしまう。
メンバー六人で数十着だ。頭数で割れば十五、六枚だろう。
こんなことならサクラを用意しておけば良かった。
その時、ようやく私の前に女性客が現れた。
「あのォ、野原さんですよねェ……」
少し遠慮がちに声を掛けられた。
「あ、ハイ? そうですけど」可愛らしい女性だ。
しかし失礼だが、はじめは誰なのか全然わからなかった。
「ご無沙汰してます。八田です」
丁寧に頭を下げて来たが名前を聞いても思い出せない。
「はァ、どうも八田さんですね」
こちらも頭を下げたが心当たりがない。
「フフ……、わかりませんか」
「え、ええェッと……、小学校の時の」
なんとなく思い出してきた。
「ハイ、あの時川崎君にイジメられていると勘違いした。ハッチです」
「ああァ! ハッちゃんねえェ……」
「ハイ、八田遥香です」
「あの時の……」
そうだ。ようやく思い出した。
イジメられていると勘違いして、ショーリに飛び蹴りを食らわした時の少女だ。
見違えるくらい綺麗なレディになっていた。
「昨日、SNSで横須賀Y高校の野原さんたちが、どぶ板通りでパーカを販売したッて知って、居ても立ってもいられなくなって来てしまいました」
「いえ、こっちこそありがとう。来てくれて」
「あの時は本当にありがとうございます。あれ以来、野原さんのおかげでイジメられなくなりました」
「そう、ゴメンねえェ……。変わったから全然、気づかなかったわ」
おそらく街ですれ違ってもわからないだろう。
「フフ……、野原さんは、すぐにわかりましたよ。むかしのまま綺麗で可愛らしいから」
「いやいやァ……、野原さんなんて他人行儀な。気安くイチゴッて呼んでよ」
「イチゴさんですか」
「フフゥン、イチゴで良いよ。呼び捨てで」
ウインクをした。
「じゃァ、イチゴと同じグレイのパーカを一枚、戴けますか」
「えええェ……、お買い上げ、ありがとうございます」
こうして懐かしい友達が来てくれた。
だが、その後はまた停滞しだした。
どうやら今日は厄日のようだ。
残っていたハッちゃんが声をかけてくれた。
「そこの三笠のアーケード前でチラシを配ったらどうでしょうか?」
「そうねえェ……。ここで指を咥えて待っていてもお客さんは来ないものね」
良い考えだ。
急遽、私たちは三笠アーケードの前でチラシを配ることにした。
「私もチラシを配るのを手伝います」
ハッチも今、買ったばかりのパーカに袖を通し微笑んだ。
「ど、どうもありがとう」
一緒にハッチも手伝ってくれた。
☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚☆゚.*・。゚
あと数十枚で完売だと言うのに足踏み状態だ。
翌日は、昨日とは打って変わって閑古鳥が鳴いていた。
「ううゥン……、なによ。これェ」
すぐそこにゴールが見えているのに途中棄権するようで嫌な気分だ。
ウソのように売上げが落ちた。
最悪だ。
買ってもらおうとしても、まったくひと通りがない。
こんなことなら昨日のうちに全部売ってしまえば良かった。
もちろん、学校でクラスの同級生らに頼めば何枚か売れるだろう。
卒業Tシャツの代わりに記念としてと『ヨコスカ ネイビー パーカ』をと言えば、無下に断られることもないだろう。
しかし……。
ここまで自分たちの力だけでやってきたのに、最後の最後に縁故に頼るのは情けない。
「どうする……」今日さばけなければ、買取りになってしまう。
メンバー六人で数十着だ。頭数で割れば十五、六枚だろう。
こんなことならサクラを用意しておけば良かった。
その時、ようやく私の前に女性客が現れた。
「あのォ、野原さんですよねェ……」
少し遠慮がちに声を掛けられた。
「あ、ハイ? そうですけど」可愛らしい女性だ。
しかし失礼だが、はじめは誰なのか全然わからなかった。
「ご無沙汰してます。八田です」
丁寧に頭を下げて来たが名前を聞いても思い出せない。
「はァ、どうも八田さんですね」
こちらも頭を下げたが心当たりがない。
「フフ……、わかりませんか」
「え、ええェッと……、小学校の時の」
なんとなく思い出してきた。
「ハイ、あの時川崎君にイジメられていると勘違いした。ハッチです」
「ああァ! ハッちゃんねえェ……」
「ハイ、八田遥香です」
「あの時の……」
そうだ。ようやく思い出した。
イジメられていると勘違いして、ショーリに飛び蹴りを食らわした時の少女だ。
見違えるくらい綺麗なレディになっていた。
「昨日、SNSで横須賀Y高校の野原さんたちが、どぶ板通りでパーカを販売したッて知って、居ても立ってもいられなくなって来てしまいました」
「いえ、こっちこそありがとう。来てくれて」
「あの時は本当にありがとうございます。あれ以来、野原さんのおかげでイジメられなくなりました」
「そう、ゴメンねえェ……。変わったから全然、気づかなかったわ」
おそらく街ですれ違ってもわからないだろう。
「フフ……、野原さんは、すぐにわかりましたよ。むかしのまま綺麗で可愛らしいから」
「いやいやァ……、野原さんなんて他人行儀な。気安くイチゴッて呼んでよ」
「イチゴさんですか」
「フフゥン、イチゴで良いよ。呼び捨てで」
ウインクをした。
「じゃァ、イチゴと同じグレイのパーカを一枚、戴けますか」
「えええェ……、お買い上げ、ありがとうございます」
こうして懐かしい友達が来てくれた。
だが、その後はまた停滞しだした。
どうやら今日は厄日のようだ。
残っていたハッちゃんが声をかけてくれた。
「そこの三笠のアーケード前でチラシを配ったらどうでしょうか?」
「そうねえェ……。ここで指を咥えて待っていてもお客さんは来ないものね」
良い考えだ。
急遽、私たちは三笠アーケードの前でチラシを配ることにした。
「私もチラシを配るのを手伝います」
ハッチも今、買ったばかりのパーカに袖を通し微笑んだ。
「ど、どうもありがとう」
一緒にハッチも手伝ってくれた。
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