新十秒探偵『ナポレオン＆トモロー』 ナポレオンの辞書に不可能と解けない謎はない！

ダイイングメッセージは『８１』

ダイイングメッセージ

　カーペットには血文字でダイイングメッセージが残されていた。



　なぜか『８１』と記されてあった。


　すぐさま誰かが警察へ通報した。



　やがて嵐の夜、パトカーのサイレンが響く中、警察によって捜査が始められた。



　ハジメたちはリビングへ集められて事情聴取を受けていた。

　テーブルの中央にはひまわりの花が飾られてあった。
　

　高価なアンティークのキャビネットにはフォトフレームが並んでいた。
　
　日付が８月１日になっていた。金倉金造の誕生日の家族写真だ。


　六十歳の時のものか、赤いちゃんちゃんこを着た金倉金造を中心に長男のほずみと次男のカズヤ、そして第四夫人のマリアが微笑んでいた。


　金倉金造は両手にたくさんのひまわり花束を抱えていた。
　どうやら金倉金造はひまわりが好きなようだ。




　また雷鳴が轟いた。



　嵐の中、容疑者は絞られていた。



　当時、邸内にいたのは、ハジメと離婚調停中のマリア。そして長男のほずみ、次男のカズヤ、愛人の売れっ子キャバ嬢キララ。

　さらに愛人との子供、九十九《つくも》流星、そして家政婦の八田一子だ。



　おそらくこの中に金倉金造を殺した真犯人がいるのだろう。




　八神ハジメは警察が到着する前に、スマホで幼馴染みのトモローへ連絡した。


「もしもし。トモローか。ボクだ。八神ハジメだよ」


『ああァ、どうしたの。お母さんの件ですか？』
　トモローもハジメの母親が病気だと言うことは承知していた。


「ああァ、そのことで今、父親の屋敷へ来て借金の申し立てをしようとしたんだ」


『お父さんのトコへ？』


「そうだ。まァいろいろ話したい事はあるけど。大変な事が起きたんだよ」

『大変な事って？』

「あの人が殺されたんだ！」

『えェ、殺された。マジか？』

「そうなんだ。それでボクが第一発見者なんだよ」

『ううゥン、なるほどねえェ。第一発見者は最も有力な容疑者のひとりだからねえェ』


「そうなんだ。でも信じてくれ。ボクじゃないんだ。あの人を殺したのはボクじゃないんだよ」

『わかってるよ。ハジメさんが殺しなんかできない事はねェ！』


「それで、トモローの相棒にナポレオンって名探偵がいるって聞いたんだけど」


『ああァ、天才探偵『ナポレオン』の辞書には不可能と解けない謎はないからね』
　トモローは自分の事のように自慢した。