上 下
6 / 41
容疑者ジョー

容疑者

しおりを挟む
 事件現場は駅前からすぐ近くだ。


 地元の人ならビルとビルの間の路地を通って近道をするのは当たり前だった。


 この路地で妙齢の女性、山川裕子が何者かにコンクリート片で頭部を殴打され倒れていた。
 突然、襲われ失神したみたいだ。



 そして山川裕子の悲鳴を聞きつけたヤンキーのジョーダンが駆けつけたという話しだ。


 だが警察はひと通り捜査を行った結果、ヤンキーのジョーによる自作自演と断定し連行した。



 今まさに警察によって犯行現場において実況見分が行われていた。



 逃げられないように腰縄につけられた容疑者のジョーダンも一緒だ。




「だから何度も言ってるだろう。オレは悲鳴を聞きつけて、ここへ駆けつけただけだって!」
 喚くように言い訳をしていた。
 真っ赤なモヒカン男だ。

 どう見ても一般人には見えない。ヤンキーだろう。



「いいか。ジョー。防犯カメラには犯人らしきヤツの姿が映ってないんだ。真っ赤なモヒカンのお前以外、誰もな!」
 怖モテの鰐口警部補が苦笑いを浮かべ諭《さと》した。



「そんなこと知るかよ。とにかくオレは関係ねえェんだよ」
 ジョーは何度も首を横に振って応えた。


「いいか。殴打された山川さんは資産家だが優しくて、誰かに怨まれるような人じゃなかったんだ」



「だからオレはそのバァさんなんか知らないよ」



「そいつはどうかな。お前には動機があるだろう」


「はァ、動機?」


「お前は借金で首が回らなかったらしいな。そんな時、目の前に高齢の女性が歩いていた。しかもバッグはブランドものだ。身なりも良い。一見して、かなりの資産家だろう」


「お、おいおいッ、だから何だよ?」


「お前はとっさに後をつけて路地へ差し掛かった際、追いかけコンクリート片で頭を殴打し失神させ金目のバッグやアクセサリーを奪いろうとしたんじゃないのか」



「あのなァ、いくらオレが金に困ったってそんなバァさんを怪我させて盗むワケねえェだろう」


「そいつはどうかなァ」
 鰐口警部補は意味深に微笑んだ。



「えェ?」









しおりを挟む

処理中です...