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126話 辺境伯

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 翌日、港にある船に乗ってジュポン帝国を後にした。

 船に乗ってチュナ帝国に着くと、そこから馬車に乗ってアンブロス帝国の帝都を目指す。

 ずいぶんかかったが、無事にアンブロス帝国の帝都に着いた。

 帝都では皇帝に挨拶をして、魔導飛行機で辺境伯領へと向かった。

 辺境伯領でミーアとの結婚式を挙げた。

 ミーアは

「これで、ようやく妻になれました」

 と、涙ぐんでいた。ウェブスターさんも喜んでいた。

 結婚式のために辺境伯領に戻っていたノエルも嬉しそうだった。

「これで、レオンは義兄さんになるね」

「ああ、これからもよろしく頼むよ」

 父ケイオスはどんどん増えていく嫁達に少し不安を感じていたようだ。

「レオン、少しは自重するように。これ以上はいかん」

 そして、王都に戻ると、私達はクタクタになっていた。さすがに色々ありすぎた。

 私達は解散し、各々の家に戻った。

 私と妻達は屋敷へと戻った。

 ムネマサには家を探すことにしたが、とりあえずは屋敷に住むことになった。

 セシリアも一家の一員になったため、部屋を割り振った。広い屋敷もだんだんと手狭になってきた。

 私とヴィンセントは騎士団に行き、いつも通りの鍛錬を行った。

 ベルはふらりと屋敷を出て行って、たまに帰ってきた。

 ムネマサは騎士団について行きたがったのでなんとか騎士団の鍛錬に参加させてもらうようにした。

 ムネマサのお気に入りは居合を使うアルバートであった。二人は気が合うのかよく稽古していた。

「アルバート殿の居合術はたいしたものだ。ジュポン帝国にもこれだけの居合の使い手はそうはいない」

「ムネマサ殿もたいしたもの。色々と勉強になります」

 ムネマサの剣術は、教えを請う者が続出し、一流派を築いていた。

 屋敷に戻るとベルが久しぶりに帰ってきた。

「レオン、今回は都市国家群に行ってきたぞ」

「また、ダリルとか?」

「ああ、そうだ。ダリルは色々なところに連れて行ってくれるから面白い」

 ダリルは魔道具開発に旅行にと大忙しであった。

 今度は魔導船を開発するのだとか。

 ダリルの開発はもはや他国に知られてはいけない国家機密となっており、爵位も子爵位を与えられ、屋敷を与えられて厳重な警備がついた。

 そんな警備をものともとせず、ダリルは気楽な旅に興じるのであった。

 そして平穏な日々が続いていく。私の屋敷はいつも賑やかであった。妻のマリアンナ、エマ、シズ、ルティア、ミーア、セシリアがいつもなんらかの小さな事件を起こしていた。

 また、連続デートも計画されているようだ。勘弁してほしい。

 そんな日々の中、父から手紙が届いた。その内容は、辺境伯の後継者について話し合いたいので領地まで戻って欲しいとのことであった。

 私はダリルから魔導飛行機を借りると辺境伯領に戻った。連れていくのは妻達とヴィンセント夫婦、そしてノエルだ。

 私達が辺境伯領に着くと、レッド兄さんとヨハン兄さんが出迎えてくれた。

 私達は辺境伯の屋敷に入った。

 屋敷に入ると父ケイオスと母カーラが出迎えてくれた。ウェブスターさんもいる。

 私達は広間に行き、座って待った。

 父がやってきた。

「待たせたな。実は私は隠居しようかと思っている。この場で後継者を決めようと思っている」

 周りがざわざわしてきた。

「候補者は、レッド、ヨハン、レオンの3人だ。私はレオンを後継者にしたい。異論はあるか?」

 レッド兄さんもヨハン兄さんも

「異論はありません」

 と答えた。

「まあ、今更俺が後継者になるはずもないからな。これからも冒険者としてやっていくぜ」

「魔物の襲来の時にレオンが辺境伯にふさわしいと感じました。私は彼の補佐をしたい」

「よし、ならば辺境伯はレオンに決まりだ。私はこの屋敷を出て居を構えるよ」

 父は安堵したように言った。

 周りからは拍手がわき起こった。

 私は周りの拍手に応えた。

 それからは色々と準備に忙殺された。騎士団の整備、辺境伯領の把握。

 一旦王都に戻って騎士団を辞める手続きをした。ノエルも騎士団を辞めて辺境伯領の騎士団に入るようである。

「ヴィンセントともお別れだな」

「今生の別れではない。辺境伯領は数時間で行ける訳だしな」

 アルバートも辺境伯騎士団に入りたそうであった。

 こうして急ではあったが私は王国騎士団を辞めた。

 辺境伯領の屋敷に引っ越しをして、皆で移り住んだ。ベルとムネマサの家も用意した。

 クラン『風』はヴィンセントとダリル、アメリアで新たなメンバーを募集して続けていくようである。レッド兄さんも『風』に入った。

 その後、クラン『風』は世界最大のクランとなっていく。

 私は領地経営に忙しい。妻達がそれを補佐してくれた。ルティアは全く役に立たなかったがマリアンナとセシリアは補佐官として極めて有能であり、私を補佐してくれた。

 妻達のうち、シズ、ルティアを辺境伯騎士団に入団させ、隊長として任命した。彼女達にはこれがいいだろう。また、ユイとイレーネにも騎士団に入ってもらった。

 ノエルも騎士団に入った。ノエルは辺境伯騎士団ではトップクラスの実力のため、隊長として任命した。

 ムネマサにも騎士団に入ってもらって、特別顧問として指導にあたってもらった。

 そして魔導院を設立し、エマを院長とし、ミーアを副院長として各地から魔導の才能のあるものを集めた。

 軍事面ではヨハン兄さんに辺境伯軍軍団長を任じた。辺境伯軍20万人を統率してもらう。

 こうして私の辺境伯としての仕事は軌道に乗りだした。

 『風を追う者』はどうなったのか?

 私達『風を追う者』のメンバーは王都の冒険者ギルドの酒場に集まった。

「久しぶりだな、みんな」

 私はみんなとの再会を喜ぶ。

「レオンとも久しぶりだな」

 ヴィンセントは今は王立騎士団の団長をしている。

「私も魔導院を抜け出すのも大変なのよ」

 と、エマ。

「俺も最近は魔道具で有名になって忙しくてな」

 と、ダリル。どうやらあの店も繁盛しているみたいだ。

「私は店番なので暇なのです」

 と、アメリア。

 全員が久しぶりに集まる中、エマが地図を広げてこう言った。

「『風を追う者』の次の目的地はここよ!」

 エマは目的地を指差した。

 私達の冒険はこれからも続く。

~完~
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