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124話 対戦

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 そしてその翌日、みんなを引き連れて大将軍のいる城へと向かった。

 城に着くと庭に案内された。どうやらこの庭で戦うようだ。大将軍と側近は見物席を設けてそこに座っていた。

 まずはベルと木村清信との戦いだ。

 清信は全身が筋肉が隆々としており、剛の清信と言われているらしい。

 ベルと清信が対峙する。

「始め!」

 ベルと清信はともに振りかぶって剣を合わせる。するとお互いの剣が砕け散った。

 二人とも新しい剣を受け取ると再び打ち合ったがやはりお互いの剣が砕け散った。

 そしてそれを幾度となく繰り返した後、清信から待ったがかかった。

「すまない、もう手が痺れて剣が持てない。私の負けだ」

 こうしてベルの勝利となった。

「私よりも剛のものがいるとは……世界は広いものだ……」

 清信はベルに感心していた。

「まあ、こんなものだ」

 ベルは私達を見てそう言った。

 次は私の番だ。相手は小野久忠。疾風の忠久と呼ばれているらしい。

 私と忠久はお互いに対峙する。

 開始の合図とともに久忠はこちらに向かって駆けてきた。そして素早く抜刀して斬りつけてきた。

 しかし、私にとってはそんなに早い動きではない。忠久の木刀を躱すと、その隙に斬りつけた。

 あっけなく私の勝利に終わった。

「完敗だ。私がこんなに簡単に負けるなんて信じられない。少し、私とは次元が違うようだ」

 久忠はそう言ってがっくりと膝をついた。

 ジュポン帝国側の2連敗となって大将軍の機嫌が悪くなってきた。

「宗正、そなたは負けないであろうな」

「身命を賭けましても」

「そうか、宗正、お前は余の期待を裏ぎない」
 
 そしてヴィンセントと宗正は対峙した。

「始め!」

 開始の合図がなされた。二人はお互いに様子を見ている。ヴィンセントは受けを得意とするため、相手が出てくるまでは動かない。もっともその気になれば電光石火の速さを繰り出す事はできるのだが。

 対して宗正は父の敵とあって気負ってはいるが、ヴィンセントのただならぬ気配を感じて踏み込めないでいる。

 そのまま両者は斬り合う事なく10分が経過した。

 宗正は覚悟を決めると、強く踏み込んで上段から斬り込んだ。

 ヴィンセントはそれを躱すと木刀を宗政のみぞうちに叩き込んだ。

 ヴィンセントの一撃を食らうと、宗正はその場に倒れ込んだまま動かなくなった。どうやら気絶しているようだ。

 大将軍鎌田光喜は持っていた扇子を叩き折った。

「ヴィンセント、レオン、ベル、その方達は大したものだ。だが、この国にはまだまだもっと強い剣豪がたくさんいる。その事を忘れないようにな」

 と、負け惜しみに近い事を言った。

「彼らは最強ではないのですか?」

「帝都では最強だ。だが、各地にはもっと強い者がいると聞く」

「そうですか。それは戦ってみたいものですな」

 そう言って城を後にした。

 私達はそのまま荷造りをしていると伊藤宗正がやってきて私達の前で土下座をした。

「私もあなた達の強さを学びたい。ぜひ一行に加えていただきたい」

 私はまた面倒なことになったなと思った。

「私も父伊藤宗重の後を継ぎ、天下最強と言われる身、決して足手まといにはなりませぬ」

 私達は別に何かと戦っている訳ではなく、単に新婚旅行をしているだけなんだがな。

「まあいい、ついてくるがいい。ただし自分の面倒は自分で見ろよ」

「はい、ありがたき幸せ!」

 こうして伊藤宗正がついてくることになった。

「そうだ、この国を離れたらムネマサ・イトウと名乗るのだぞ」

「かしこまりました」

「……父の敵がいるのだぞ。それでもいいのか?」

「父は決闘に敗れて死んだのです。誰を恨みましょう」

「なるほど」

 そして私はふと

「そういえばまだまだ強いと言われる剣豪はいるのだろう?それはどこにいる」

 それはここから西の地に一人います。それにさらに西に向かった西の都にも」

「それは宗正よりも強いのか?」

「戦った事はありませんのでなんとも。しかしどちらも天下無双を標榜しております」

 ほう、少し戦ってみるか。
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