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107話 計画

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 祝勝会の翌日、私達は冒険者ギルドの酒場に集まった。

 集まったのは風を追う者のメンバーの私、ヴィンセント、エマ、アメリア、ダリルと風の守護者のメンバーのシズ、ルティア、ミーア、ユイ、イレーネ、それにトマス。何故かマリアンナも来ていた。

「マリアンナはなんで来たんだ?」

「私だけのけものなんてつまんないわ。冒険はできないけど何か参加させて」

「何をするつもりだ?」

「そうね、総監督なんてどう?総司令官でもいいわよ」

 マリアンナは腕を組んで仁王立ちした。

「却下だ却下」

「レオン、そう無碍にすることないわ。さすがにこれだけの人数になると統率をとるのも大変よ。準備も統率する人がいるわ。それに冒険者だとまず自分の準備が大事だからそこまでする余裕がないの」

 エマは続ける。

「それにマリアンナは一緒に暮らしていてわかったけど、とっても聡明なの。家事の統率を取ってるのもマリアンナだしね」

 どうやらエマのマリアンナ評は高いようだ。

「よし、わかった。じゃあマリアンナ、総監督と総司令官どっちにするんだ?」

「そうね、総司令官かしら、やっぱり」

「よし、じゃあマリアンナ、後は任せた」

「そうね、まず『風を追う者』と『風の守護者』で『風』というクランを設立しましょう」

「それはいいわね。組織は明確にした方がいいわ」

 とエマ。

「で、私がクラン『風』の責任者ってことでギルドに登録しとくわね。それでいい?みんな」

 全員が頷く。

「組織が決まれば、次は沈黙の谷の行程ね。これはダリルから説明があるわ」

 マリアンナは、いつダリルと調整していたのだろうか。

「この日に備えてコツコツと準備していたのよ」

 マリアンナが笑った。

「じゃあ沈黙の谷への行程についてだ。知ってのとおり、ここから馬車で沈黙の谷に向かうとすれば、3ヶ月程度はかかる。夏とはいえ、アンブロス帝国の北方はまだ雪が積もっていて、行軍が難航すれば更に時間がかかる」

 ダリルはそう言うと、一呼吸おいた。

「そこでだ、俺の開発した魔導飛行機と魔導自動車の出番だ。魔導飛行機なら、エルドバーン辺境伯領まで半日で行ける。そこから魔導自動車で走れば、おおよそ2週間で沈黙の谷に着くことができる」

 おお~、と声が上がる。

「質問!」

 シズが元気よく手を挙げる。

「その魔導なんとかは安全なんですか?」

「大丈夫だ。テストにテストを重ねてある。魔導自動車はアンブロス帝国の雪原地帯でのテストも行っている」

「どのぐらいの台数で行くんですか」

 ミーアが質問した。

「エルドバーン辺境伯領には大型の魔導飛行機1台で行く。そして魔導自動車は大型の8人乗りが2台、輸送用の魔導自動車が1台だ。魔導自動車はすでにエルドバーン辺境伯領に運んである」

「なんだか準備万端ね」

 エマが呟いた。

「この辺のことは、マリアンナに相談して決めさせてもらった」

「と言うわけでダリル、ご苦労様。出発は1週間後、保存食や消耗品は、エルドバーン辺境伯の屋敷の倉庫に用意してもらっているわ」

 なんだかマリアンナの口調がエマに似てきたぞ。

「レオン、何か意見ある?」

「アンブロス帝国の許可は取ってあるのか?」

「もちろんよ。抜かりはないわ」

 どうやら「風」の責任者はマリアンナで大丈夫そうだ。

「それと、沈黙の谷攻略の拠点となるのはカラムの街よ。沈黙の谷から車で半日で辿り着けるわ」

「半日もかかるのか」

「それが一番近い街なのよ。食料や消耗品の補充も必要になるかも知れない」

「それは厳しいな」

「だから、準備をしっかりしておかないとね。防寒装備は、できれば王都で揃えたいところね。アンブロス帝国で、どんなもの売ってるかわからないし」

「そういえば、アンブロス帝国でのお金はどうするんだ?」

「それは両替済みよ。白金貨2枚分あれば大丈夫でしょう」

「たいした子ねえ」

 エマがマリアンナに感心していた。
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