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40話 指名依頼

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 私たちは広場の預け所に行って荷物を受け取った。預け所の店員は少し怪訝な顔をした。

 食糧などの消耗品を全て捨てると魔物の頭と財宝はなんとかバックパックにすべて入った。

 そして長い道のりを経て王都に帰ってきた。

 王都に戻ると冒険者ギルドに向かった。

 冒険者ギルドに着くと別室に案内された。ギルド長がやって来た。

「今度は一体何なんだ?」

 帰らずの迷宮を攻略したこと。迷宮は地下15階まであったこと。最奥部にはスケルトンが財宝を守っていて、それを持ち帰ったこと。そして魔物の頭などをバックパックから取り出して見せた。

「なるほど、これは偉業だな。倒した魔物も伝説級の魔物ばかりだ。この角はサイクロプスか」

 ギルド長は腕を組んだ。

「それで、財宝とはどのようなものだ。見せてもらえるか?」

「いいわよ」

 そしてと剣と黄金色に輝く石をテーブルに並べた。

 まず、ギルド長は剣を手に取ると鞘から抜いた。剣は眩い光を放っていた。

「これは……オリハルコンか……寓話の世界の剣だぞ」

 ギルド長は心底驚いているようだ。

「これはもう値が付けられない。何せ他には存在しない。オリハルコンはこの世で最も硬い物質と言われているがそれを発見したものはいない」

 ギルド長は黄金に輝く石を手にとった。

「これは……賢者の石……伝承の中ではあらゆる願いがかなう石と言われている」

 ギルド長は目を閉じてしばらく考えていた。

「よし、君らはAランクパーティーに昇格だ。Aランクパーティーはこの世界で6組しか存在しない。君らが7組目だ。また、Sランクパーティーの申請も出しておこう。これはギルド長会議で決定される」

「Sランクパーティー!」

 エマが叫んだ。

「そうだ、君らには何十年も空位であったSランクパーティーの資格があると私は見ている。もっともギルド長会議の結果によるがね」

「でもAランクパーティーにはなったのよね」

「そうだ。だが、Aランクパーティーには色々な責務を負うことになる。そのことについては後日説明することになる」

 そして、ギルド長はしばらく考えた後

「賢者の石とオリハルコンの剣は当面ギルドで預からせてもらう。そしてギルドで協議する。場合によっては王国に報告することになるだろう」

 私達が席を立とうとすると。

「言い忘れてたがギルドは今回も特別報償金として金貨1,000枚を出す」

 部屋を出て、受付嬢に冒険者カードの更新をしてもらい、特別報酬金を受け取った。これでとうとうAランク冒険者だ。

「とうとう私達もAランク冒険者ね」

「意外と早くなれたな」

「Cランクぐらいになれるかなって思ってたけどね」

「私なんかがAランクでいいんでしょうか?」

「アメリアの聖魔法は一流よ。いいんじゃない」

 そして今回の報酬をトマスに渡す。

「みんなお疲れさん。今回は大儲けさせてもらったよ。もう君らの専属でもいいぐらいだ」

 ヒラヒラと手を振ってトマスは去っていった。

「エマさん達ちょっとよろしいですか?」

 受付嬢がこちらにやって来て言った。

「どうしたの?」

 実はエマさん達に指名依頼が来てるんです。

「誰から?」

「実はルアール伯爵からです」

 前回の護衛任務の依頼主だ。

「内容は?」

「ルアール伯爵領から王都へ向かう御令嬢の護衛です」

「何か気に入られたみたいね」

「どうされますか?」

「今回も合同で?」

「冒険者はエマさん達だけです。伯爵の方で他の護衛は用意するようです」

「なら私達いらないじゃない……でもいいわ受けましょう」

「かしこまりました。では依頼受付カウンターの方へ」

 そしてエマは依頼を受ける手続きをした。

「いいでしょみんな、どうせ暇でしょ」

「暇なのはエマだけだ。私達は剣の鍛錬に忙しい」

「まあ、いいじゃないヴィンセント。鍛錬は後ででもできるわよ」

「その考えがいかんのだ!」

「まあまあヴィンセント、もうAランク冒険者なんだから指名依頼も受けなきゃだめだろ」

「それはそうだが」

 依頼内容では私達が着くのを待って出発するらしい。なるべく急いで欲しいとのことだ。

「じゃあみんな、準備が終わったらすぐ出発よ」

 よく考えれば帰らずの迷宮から帰って休んでいない。体が疲れている。

「馬車の中で休みましょ」
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