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31話 ミスリルソード

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 ミスリルソードを買いたいが、ギルド前の店では少し心許ない。バルダーク武器店で買いたいところだが領地まで戻るわけにもいかない。

「ヴィンセント。そのミスリルソードはどこで買ったんだ?」

「王都のはずれに腕のいい職人のいる店がある。行ってみるか?ちょうど私もミスリルソードの刃が少し欠けたので持って行きたいと考えていた」」

「エマとアメリアはどうする?」

「私達は別に買い物があるからそっちに行くわ。夜に冒険者ギルドで会いましょ」

 そして王都のはずれにあると言う、ケルトナー武器店に向かう。

 そこは小さな店で武器が並んでおりその奥にカウンターがある。店には武器を打つ音が響いていた。

 カウンターには背は低いが恰幅のある髭を蓄えた男が腕を組んでいた。ヴィンセントに気がつくと声をかけてきた。

「この前ミスリルソードを買ってくれた兄ちゃんじゃないか。今日はどうした?」

「連れがミスリルソードを買いたいんだ」

「そっちの兄ちゃんか?」

「そうだ」

「知ってるとは思うがミスリルソードは少しばかり値が張るぞ」

「知っている。金は用意している」

 金貨の入った袋をテーブルに置く。

「おお!じゃあ早速作らせてもらうよ。長さの参考にするから今の剣を出してくれ」

 腰に差している剣を渡す。

「何と言う痛み方だ。どういう使い方をすればここまで痛むんだ?」

「帰らずの迷宮で戦った時だと思う。地下12階まで行ったんだ」

「何と!地下12階!嘘としか思えんが、ポンとミスリルソードを買えるぐらいだから、あながち本当かもしれんな」

「店主、実は私のミスリルソードも欠けてしまって」

「おお!俺のミスリルソードが欠ける?……これは研げば治りそうだが一体何を切ったんだ?」

「おそらくデュラハンとヒュドラを切った時だろう。特にデュラハンは鎧ごと斬ったからな」

「デュラハンにヒュドラか……本当だとしたらすごい事だぞ。よし!どちらも準備しよう。俺自ら打つからな。3日後にまた取りに来てくれ」

 そして店を後にした。冒険者ギルドに戻るとエマとアメリアそれにトマスは既に酒場にいた。

「レオンこっちよ」

 エマ達の席に座る

「今回も大変だったわね」

「俺も荷物運び長くやってるけど、初めての経験だよ」

「トマスにはほんと感謝してるわ」

「報酬も大きいからいいけどね、しかし危なかったな」

 荷物運びの契約は基本料金として1日金貨1枚、それにパーティーの得た報酬から一部を追加報酬として受け取る。

「報酬も受け取ったんでここで帰らせてもらうよ。また頼むよ」

 そういうとトマスは去っていった。

「それでエマ、これからの事はどうする?」

「今回のでちょっと肉体的にも精神的にも少し疲れちゃったなって。それなりに成果も出たしね」

「少し休むということか」

「帰らずの迷宮はしばらく休もうかなって。次の長期休暇にまた再開しましょう。今回の残りの休暇はまた依頼を受けましょ。私護衛任務がやってみたいの」

「確かに護衛任務は長期休暇中しかできないな」

「でしょ。明日から探してみましょうよ」

「今、剣を注文しているからそれを受け取ってからになるな。3日後に受け取るからそれ以降なら構わない。ヴィセントはどうだ?」

「そうだな、それでいいと思う。でも休暇中の冒険はそこで一旦、区切りにしたいな。レオン、まさか騎士学校選抜大会のことを忘れていないだろうな」

「そういえばそうだったな」

「そんなのがあるんだ。レオンもヴィンセントも選抜されてるんだね。そりゃそうよね、あんだけ強いんだから。アメリア、あなたは大丈夫?」

「はい、私は大丈夫です」

「だったら決まりね。じゃあ乾杯しましょう。乾杯!」

 そして食事を注文して打ち上げをした。

 剣の受け取りの日にケルトナー武器店に行きミスリルソードを受け取る。

「いい出来に仕上がったぜ兄ちゃん。自信作だ。修理の方もちゃんと直ってるよ」

 店主は笑顔でそう言った。確かにいい出来だ。

 帰り道で少し気になったことがあるのでヴィンセントに尋ねてみた。

 「ああ、あの店主はドワーフだ。ドワーフ秘伝の技があるらしい。王国内でも最高の品質だ。私も満足している」

 バルダーク武器店とどちらが上だろうか?

 剣を受け取ると宿屋へと戻った。
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