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30話 ヒュドラ

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 そしてデュラハンを倒した後部屋で少し休息した後、再び探索に戻る。相変わらずアンデッド共が群れをなして襲いかかってくる。

 それをなんとか潜り抜け、扉の前にたどり着いた。

「また扉ね。今度は何かしら?」

 扉を開けて部屋に入る。

「これはまずいわ!」

 部屋の中にはヒュドラがいた。8つの首がこちらを睨んでいた。巨大な体を揺すらせて前進してくる。

「レオン!ヴィンセント!魔法陣展開!」

 そして3人の魔法陣が重なる。

 エマが叫ぶ。

 「エクスプロード!」

 そして大爆発が起こった。大爆発の後、辺りは煙に包まれる。

 魔力を使いすぎたのか軽い目眩が起こる。煙によりヒュドラの生死を確認することはできない。

 視界が元に戻るとヒュドラは……半分の4つの首を失いながらも生きていた。

 次の瞬間には私とヴィンセントはヒュドラに向けて駆け出していた。エマもそれに続いた。

 ヒュドラの失われた首は少しづつ回復していた。

 私とヴィンセントはヒュドラに斬りかかり、エマはありったけの攻撃魔術を唱えた。

 そして数時間の戦闘の後、ヴィンセントによってヒュドラの最後の首が切り落とされた。

 この戦いで私とヴィンセント、それにエマも重傷を負ってしまったためアメリアの治療を受けることになった。アメリアがいなければここから地上へ帰還することは不可能だろう。

 ヒュドラの討伐部位についてはヒュドラの頭の一つを持って帰ることにした。かなり巨大な頭だが、トマスのバックパックになんとか入れることはできそうだ。先程のデュラハンの頭はパーティーで分散して持つことにする。

 満場一致で撤収することとなった。食料もエーテルも少なくなってきた。ここから地上へ戻る事を考えるとこれ以上探索するべきでない。

 激戦が続いて皆の疲労がたまっている。アメリアもこれ以上聖魔法を使うことはできないだろう。

 この部屋で一泊した後、地上を目指して出発した。

 帰還も困難を極めた。アンデッド共が群れをなして襲いかかってくる。地下6階まで上がるとリッチが出なくなるのでようやく一息つける。最短距離で戻っているのだが、それでも被害は大きい。

 そしてようやく地上へと帰還した。広場に戻り、簡易宿泊所に行って眠る事にする。今回はダメージが大きいため、広場内で何日か過ごした。

 十分に休息を取った後、帰路に着いた。

 王都に着くと冒険者ギルドに向かった。素材買取カウンターに向かってデュラハンの頭を見せると別室に案内された。

 別室に案内され、しばらくするとギルド長がやってきた。

「なにやら大変な物を持ってきたみたいだな。騒ぎが起きても困るから別室に案内させてもらったよ。今回は何だい?」

 バックパックからデュラハンの頭5つとヒュドラの頭を取り出した。

「これはデュラハン!それも5体も、こっちは……ヒュドラじゃないか、信じられん!」

 ギルド長はデュラハンとヒュドラの頭を交互に見比べた。

「ランクアップが必要だな。後で受付にカードを渡しなさい。今のAランク冒険者でもヒュドラは倒せんよ。大昔に存在したと言う伝説のSランクパーティーならあるいはと言ったところだ」

 ギルド長は腕を組んでしばらく目を閉じた。

「デュラハンやヒュドラは何階にいた?」

「地下12階にいたわ」

「地下12階……未知の領域だな。他にどんな魔物がいる」

「基本的には他の階と同じでアンデッドが出てくるわ。リッチとワイトが強敵ね。階を降りる毎に強くなってくるし、それに数も増えていく」

「リッチは単体でも驚異だ。それが複数出てくると言うのか」

「それに加えてワイトやスケルトンと連携してくるわ」

「なるほどありがとう。あと、今回の報酬の件だが、おそらくデュラハンもヒュドラも素材としてはあまり価値がない。しかしギルドは今回特別報酬を金貨500枚出そう」

「わあ!ありがとう」

 そして部屋から出て、受付嬢に冒険者カードの更新をしてもらい、特別報酬金を受け取った。これでCランクである。
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