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21話 冒険者
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学校生活にも慣れ始めたその頃から授業が終わると、騎士学校の門の外では冒険者学校の生徒や本職の冒険者がウロウロするようになった。
騎士学校の生徒を冒険者仲間に引き込もうというのだ。騎士学校の生徒は戦士として即戦力になるらしい。騎士学校からは冒険者になることは禁止されてはいないが、騎士学校生としての本分を忘れないようにと止められている。
「なあレオン、冒険者ってどう思う?」
帰り道にジンがそう言った。
「上の兄が冒険者だからな。下の兄も騎士学校の頃はやってたっていうし。一度やってみてもいいかなと思っている」
「なに、レオンは冒険者に興味があるのかい」
最近一緒に帰るようになったヴィンセントが食いつく。
「人間じゃもう飽きたらないんじゃないの」
ノエルが毒ずく。
「レオンと一緒に戦うというのもいいな。冒険者のことはよく分からないが相当活躍できそうだ」
「ああ、ヴィンセントと組むのは頼もしいな」
「じゃあ、今から冒険者ギルドに行ってみないか?」
「あのウロウロしてる冒険者に話を聞くのは?」
「いや、冒険者やるかどうかもまだ未定だろ。一度社会見学がてらに行ってみようぜ!」
ジンの提案に一同は同意した。
騎士学校からしばらく歩くと王都の中心部に出る。そこからさらにしばらく歩くと冒険者ギルドだ。王都の冒険者ギルドだけにかなり大きな建物だ。
冒険者ギルドの中に入ると大きな酒場があり、大勢の冒険者がそこで酒を飲んだいた。酒場と言っても食堂も兼ねており、冒険者が集まる時にも使われるようだ。
そして受付のカウンターがあり冒険者が並んで順番待ちをしていた。その奥には壁一面の掲示板に依頼書が貼られていて冒険者がそれを物色していた。
そんな冒険者ギルドの熱気に煽られて立ちすくんでいると、ある冒険者パーティーが目に止まった。戦士2人に女魔術師、治癒師、荷物持ちという5人のパーティーだ。使い古した剣に防具、大きな荷物。そして何より戦士の一人の皮の鎧からわずかに見える見覚えのある顔。
「もしかしてレッド兄さんですか?」
近づいて思い切って聞いてみた。すると隣にいた魔術師が
「レッド、あんたを呼んでる子がいるよ」
とその戦士を呼んでくれた。
「なんだよサリア。誰が呼んでるって……って、おお!レオンじゃねえか!こりゃ久しぶりだなあ。ずいぶん大きくなったじゃねえか」
「お久しぶりです。レッド兄さん」
レッド兄さんは少し口調が乱暴になったような気がした。
「そうか、レオンも騎士学校に入ったか。まさか、もう冒険者やろうってんじゃないだろうな」
「この子があのレオン君かい?」
「そうだ、地上最強の弟だ。俺の百倍は強いぞ」
「確かに存在感が違うねえ。あんなところに突っ立ってても周りの冒険者が避けていくんだもん」
「隣の兄ちゃんも只者じゃねえな」
「私はレオンの終生のライバル、ヴィンセント・ミッドガルだ」
「おいおい、ミッドガル家かよ、こりゃとんでもないな。でもレオンの相手にゃちょうどいいかもな」
「ノエル・コーエンです。レッド様、お初にお目にかかります」
「おお、コーエンの。しっかりした子じゃないか。まあ、ここでは『様』付けはちょっとやめてくれ」
「ジン・デイマーです」
「そうか、デイマー家か。……まあ頑張れよ」
デイマー家の評価は高くないようだ。
そう言うとレッド兄はこちらに向かって座り直した。
「それでここへは何しに来た?パーティー探すなら学校前にウロウロしている連中がいるだろう」
「冒険者がどういうものか知りたかったんですよ」
「ああ、だから冒険者ギルドに来たんだな。まあ、あの連中についていってもわけのわからんパーティーを組まされるだけだからな。まあ、それも必要な経験なんだが」
そういうとレッドは手に持ったエールを飲み干した。
「まあ、生の冒険者ってやつを肌で感じてみるのもいいことさ。ここでは強いだけじゃ生きていけないからな。……生き残る能力ってのが必要になってくる。ところでノエルとジンも冒険者になるのか?」
「いや、僕はついて来ただけなんで」
「俺はやりたいんだけど、この雰囲気を見るとまだ早いかなと」
「とにかく皆、せっかく冒険者ギルドまできたんだし、冒険者登録だけでもしておいたらどうだ。騎士学校生はEランクから始められるしな。ちなみに俺はCランク、この歳でCランクは異例中の異例なんだぜ」
そう言われたので冒険者登録のカウンターへ向かう。
「いらっしゃいませ。冒険者登録ですね。4名様ですか?」
「はい、そうです」
「それではこの冒険者カードに血を滴らせてください」
皆カードに血を滴らせて受付嬢に渡す。ノエルは少し嫌そうだった。
「この用紙に記入していってください」
「はい、それでは登録完了です。カードをお返ししますね。皆さんは騎士学校の生徒ですのでランクはEからになります」
それから受付嬢による冒険者の説明があった。
ランクは上からAからFまであること。Sランクは例外的な存在であること。
奥の壁に貼ってある依頼書を依頼受付カウンターに持っていくことで依頼を受けることができること。
依頼の品を依頼完了カウンターに持っていくと依頼が完了になること。
討伐した魔物や採取した素材は素材買取カウンターで買い取ってもらえること。
依頼が討伐である場合、討伐部位を持ってくることが必要であり、魔物の討伐部位が図解でわかりやすく説明してある本が冒険者ギルド売店で絶賛発売中であること。
依頼で薬草収集をする場合があり、薬草が図解でわかりやすく説明してある本が冒険者ギルド売店で絶賛発売中であること。
であった。討伐部位と薬草の本は後で買っておかなければ。受付嬢に礼をしてレッドの元に戻る。
「おう、冒険者登録が終わったか。冒険者は気が向いた時にやればいいと思うぞ。あと、最初は危険のない依頼から始めるんだぞ。ランクEは結構危ない依頼も受けられるから、最初はランクFの依頼を受ける方がいい。
あと、レオンとヴィンセントにはぴったりの相手がいるから明日の今ぐらいにここに来てくれ」
「そんな人がいるんですか?」
「ああ、ちょうど戦士2人を探しているパーティーがいるんだよ」
「それは楽しみです。じゃあまた明日来ます」
「おう、また明日な。あと次からは冒険者らしい口調にしろよ」
「冒険者らしい口調?」
「まあ、いつも仲間と喋ってる時のような口調だ」
「ああ、わかったよ兄さん」
騎士学校の生徒を冒険者仲間に引き込もうというのだ。騎士学校の生徒は戦士として即戦力になるらしい。騎士学校からは冒険者になることは禁止されてはいないが、騎士学校生としての本分を忘れないようにと止められている。
「なあレオン、冒険者ってどう思う?」
帰り道にジンがそう言った。
「上の兄が冒険者だからな。下の兄も騎士学校の頃はやってたっていうし。一度やってみてもいいかなと思っている」
「なに、レオンは冒険者に興味があるのかい」
最近一緒に帰るようになったヴィンセントが食いつく。
「人間じゃもう飽きたらないんじゃないの」
ノエルが毒ずく。
「レオンと一緒に戦うというのもいいな。冒険者のことはよく分からないが相当活躍できそうだ」
「ああ、ヴィンセントと組むのは頼もしいな」
「じゃあ、今から冒険者ギルドに行ってみないか?」
「あのウロウロしてる冒険者に話を聞くのは?」
「いや、冒険者やるかどうかもまだ未定だろ。一度社会見学がてらに行ってみようぜ!」
ジンの提案に一同は同意した。
騎士学校からしばらく歩くと王都の中心部に出る。そこからさらにしばらく歩くと冒険者ギルドだ。王都の冒険者ギルドだけにかなり大きな建物だ。
冒険者ギルドの中に入ると大きな酒場があり、大勢の冒険者がそこで酒を飲んだいた。酒場と言っても食堂も兼ねており、冒険者が集まる時にも使われるようだ。
そして受付のカウンターがあり冒険者が並んで順番待ちをしていた。その奥には壁一面の掲示板に依頼書が貼られていて冒険者がそれを物色していた。
そんな冒険者ギルドの熱気に煽られて立ちすくんでいると、ある冒険者パーティーが目に止まった。戦士2人に女魔術師、治癒師、荷物持ちという5人のパーティーだ。使い古した剣に防具、大きな荷物。そして何より戦士の一人の皮の鎧からわずかに見える見覚えのある顔。
「もしかしてレッド兄さんですか?」
近づいて思い切って聞いてみた。すると隣にいた魔術師が
「レッド、あんたを呼んでる子がいるよ」
とその戦士を呼んでくれた。
「なんだよサリア。誰が呼んでるって……って、おお!レオンじゃねえか!こりゃ久しぶりだなあ。ずいぶん大きくなったじゃねえか」
「お久しぶりです。レッド兄さん」
レッド兄さんは少し口調が乱暴になったような気がした。
「そうか、レオンも騎士学校に入ったか。まさか、もう冒険者やろうってんじゃないだろうな」
「この子があのレオン君かい?」
「そうだ、地上最強の弟だ。俺の百倍は強いぞ」
「確かに存在感が違うねえ。あんなところに突っ立ってても周りの冒険者が避けていくんだもん」
「隣の兄ちゃんも只者じゃねえな」
「私はレオンの終生のライバル、ヴィンセント・ミッドガルだ」
「おいおい、ミッドガル家かよ、こりゃとんでもないな。でもレオンの相手にゃちょうどいいかもな」
「ノエル・コーエンです。レッド様、お初にお目にかかります」
「おお、コーエンの。しっかりした子じゃないか。まあ、ここでは『様』付けはちょっとやめてくれ」
「ジン・デイマーです」
「そうか、デイマー家か。……まあ頑張れよ」
デイマー家の評価は高くないようだ。
そう言うとレッド兄はこちらに向かって座り直した。
「それでここへは何しに来た?パーティー探すなら学校前にウロウロしている連中がいるだろう」
「冒険者がどういうものか知りたかったんですよ」
「ああ、だから冒険者ギルドに来たんだな。まあ、あの連中についていってもわけのわからんパーティーを組まされるだけだからな。まあ、それも必要な経験なんだが」
そういうとレッドは手に持ったエールを飲み干した。
「まあ、生の冒険者ってやつを肌で感じてみるのもいいことさ。ここでは強いだけじゃ生きていけないからな。……生き残る能力ってのが必要になってくる。ところでノエルとジンも冒険者になるのか?」
「いや、僕はついて来ただけなんで」
「俺はやりたいんだけど、この雰囲気を見るとまだ早いかなと」
「とにかく皆、せっかく冒険者ギルドまできたんだし、冒険者登録だけでもしておいたらどうだ。騎士学校生はEランクから始められるしな。ちなみに俺はCランク、この歳でCランクは異例中の異例なんだぜ」
そう言われたので冒険者登録のカウンターへ向かう。
「いらっしゃいませ。冒険者登録ですね。4名様ですか?」
「はい、そうです」
「それではこの冒険者カードに血を滴らせてください」
皆カードに血を滴らせて受付嬢に渡す。ノエルは少し嫌そうだった。
「この用紙に記入していってください」
「はい、それでは登録完了です。カードをお返ししますね。皆さんは騎士学校の生徒ですのでランクはEからになります」
それから受付嬢による冒険者の説明があった。
ランクは上からAからFまであること。Sランクは例外的な存在であること。
奥の壁に貼ってある依頼書を依頼受付カウンターに持っていくことで依頼を受けることができること。
依頼の品を依頼完了カウンターに持っていくと依頼が完了になること。
討伐した魔物や採取した素材は素材買取カウンターで買い取ってもらえること。
依頼が討伐である場合、討伐部位を持ってくることが必要であり、魔物の討伐部位が図解でわかりやすく説明してある本が冒険者ギルド売店で絶賛発売中であること。
依頼で薬草収集をする場合があり、薬草が図解でわかりやすく説明してある本が冒険者ギルド売店で絶賛発売中であること。
であった。討伐部位と薬草の本は後で買っておかなければ。受付嬢に礼をしてレッドの元に戻る。
「おう、冒険者登録が終わったか。冒険者は気が向いた時にやればいいと思うぞ。あと、最初は危険のない依頼から始めるんだぞ。ランクEは結構危ない依頼も受けられるから、最初はランクFの依頼を受ける方がいい。
あと、レオンとヴィンセントにはぴったりの相手がいるから明日の今ぐらいにここに来てくれ」
「そんな人がいるんですか?」
「ああ、ちょうど戦士2人を探しているパーティーがいるんだよ」
「それは楽しみです。じゃあまた明日来ます」
「おう、また明日な。あと次からは冒険者らしい口調にしろよ」
「冒険者らしい口調?」
「まあ、いつも仲間と喋ってる時のような口調だ」
「ああ、わかったよ兄さん」
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