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15話 兄との再会
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そんなことを考えながら馬車から降りると懐かしい声が聞こえた。
「レオン、久しぶりだな」
「ヨハン兄さん。お久しぶりです」
「大きくなったなレオン、それに随分たくましくなったな。この体にあの才能か、これは凄い事になったな。もう勝てないな。いや、前も勝ってないけど」
「いやそんな事ないですよ」
「それより隣の子は騎士団長の息子か?」
「そうですよ。紹介します、ノエル・コーエン君です」
「初めまして、お噂には聞いています。ヨハン・エルドバーン様」
「そんな堅苦しくなくていいや。ヨハンでいいよ」
「それよりレッド兄さんはどうなったのですか?」
「どうもこうもないよ。どうやら小遣い稼ぎで冒険者学校の連中とつるんで冒険者登録をしたらしいんだ。それど魔物退治したりダンジョンもぐったりしているうちに……」
「そっちの方が楽しくなったと」
「そうなんだ」
「ヨハン兄さんが止めればよかったのに」
「俺もやってたから説得力なかったんだよ」
「なんだ、ヨハン兄さんもやっていたのですか」
「結構楽しいんだよ、冒険者。レッドもそのうち飽きて戻ってくるとは思ってるんだけどな。別に騎士団は後で入ればいいわけだしな。俺の方が先輩になるけどな」
そうヨハン兄さんは言った。楽観的である。
「けど、まあ、なんだ、冒険者をやる事に反対はしないがのめり込んではいけないぞ。レオン、それにコーエン君も。じゃあ騎士学校試験頑張れよ」
そう言うとヨハン兄さんは去って行った。
「よし、とりあえず寄宿舎に荷物を運ぼうか」
同行しているモリスさんと他の使用人、護衛の冒険者で荷物を運んだ。護衛の冒険者は荷物運びまでが依頼内容だったらしい。
騎士学校に到着したのは少し早く、試験の一週間前だった。旅がもなく予定通りに到着したためである。
寄宿舎の部屋は合格するまでは仮の部屋であり、不合格になれば出ていかなければならない。
受験者数の方が遥かに多いため部屋の数は不足する。騎士学校は貴族・平民共に等しく受験できるが、貴族の子弟に優先的に部屋が割り振られる。コーエンは騎士爵の子になるので貴族扱いである。
その後余った部屋は抽選で決められるらしい。そして部屋を取れなかった受験生は王都の宿屋に泊まる事になる。一番近い宿屋からでも騎士学校は結構離れているので宿屋組は大変だろう。前日に騎士学校の付近に野宿する者もいたらしいが現在は禁止されている。
受験者数は500人超で合格者はわずかに50人、当然寄宿舎は合格人数分しか用意されていないのでほとんどが宿屋組とも言える。もちろん合格後は合格者全員に部屋が割り振られる。もっとも貴族と平民では部屋の広さは違うが。
寄宿舎には食堂もあり、食事の時間になると受験生でも食べる事ができる。
ちょうどお腹が空いていたので、コーエンと一緒に夕食を食べる事にした。割とカチカチのパンに具だくさんではあるが妙に味の薄いスープ。さらに、これまた固いステーキであった。後に聞いた話では実戦の粗食への訓練と栄養価を同時に満たした食事なんだそうだ。
他の受験生とのトラブルを避けるために、食事以外はあまり部屋の外に出ないように言われている。なんでも、受験生同士が決闘したり徒党を組んで嫌がらせをしたりするのが絶えないために、このような措置が取られているらしい。
割と退屈な毎日を過ごしているうちに試験当日となった。
「レオン、久しぶりだな」
「ヨハン兄さん。お久しぶりです」
「大きくなったなレオン、それに随分たくましくなったな。この体にあの才能か、これは凄い事になったな。もう勝てないな。いや、前も勝ってないけど」
「いやそんな事ないですよ」
「それより隣の子は騎士団長の息子か?」
「そうですよ。紹介します、ノエル・コーエン君です」
「初めまして、お噂には聞いています。ヨハン・エルドバーン様」
「そんな堅苦しくなくていいや。ヨハンでいいよ」
「それよりレッド兄さんはどうなったのですか?」
「どうもこうもないよ。どうやら小遣い稼ぎで冒険者学校の連中とつるんで冒険者登録をしたらしいんだ。それど魔物退治したりダンジョンもぐったりしているうちに……」
「そっちの方が楽しくなったと」
「そうなんだ」
「ヨハン兄さんが止めればよかったのに」
「俺もやってたから説得力なかったんだよ」
「なんだ、ヨハン兄さんもやっていたのですか」
「結構楽しいんだよ、冒険者。レッドもそのうち飽きて戻ってくるとは思ってるんだけどな。別に騎士団は後で入ればいいわけだしな。俺の方が先輩になるけどな」
そうヨハン兄さんは言った。楽観的である。
「けど、まあ、なんだ、冒険者をやる事に反対はしないがのめり込んではいけないぞ。レオン、それにコーエン君も。じゃあ騎士学校試験頑張れよ」
そう言うとヨハン兄さんは去って行った。
「よし、とりあえず寄宿舎に荷物を運ぼうか」
同行しているモリスさんと他の使用人、護衛の冒険者で荷物を運んだ。護衛の冒険者は荷物運びまでが依頼内容だったらしい。
騎士学校に到着したのは少し早く、試験の一週間前だった。旅がもなく予定通りに到着したためである。
寄宿舎の部屋は合格するまでは仮の部屋であり、不合格になれば出ていかなければならない。
受験者数の方が遥かに多いため部屋の数は不足する。騎士学校は貴族・平民共に等しく受験できるが、貴族の子弟に優先的に部屋が割り振られる。コーエンは騎士爵の子になるので貴族扱いである。
その後余った部屋は抽選で決められるらしい。そして部屋を取れなかった受験生は王都の宿屋に泊まる事になる。一番近い宿屋からでも騎士学校は結構離れているので宿屋組は大変だろう。前日に騎士学校の付近に野宿する者もいたらしいが現在は禁止されている。
受験者数は500人超で合格者はわずかに50人、当然寄宿舎は合格人数分しか用意されていないのでほとんどが宿屋組とも言える。もちろん合格後は合格者全員に部屋が割り振られる。もっとも貴族と平民では部屋の広さは違うが。
寄宿舎には食堂もあり、食事の時間になると受験生でも食べる事ができる。
ちょうどお腹が空いていたので、コーエンと一緒に夕食を食べる事にした。割とカチカチのパンに具だくさんではあるが妙に味の薄いスープ。さらに、これまた固いステーキであった。後に聞いた話では実戦の粗食への訓練と栄養価を同時に満たした食事なんだそうだ。
他の受験生とのトラブルを避けるために、食事以外はあまり部屋の外に出ないように言われている。なんでも、受験生同士が決闘したり徒党を組んで嫌がらせをしたりするのが絶えないために、このような措置が取られているらしい。
割と退屈な毎日を過ごしているうちに試験当日となった。
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