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宝石姫とエルフ
宝石姫とエルフ1
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ここは石の国です。石の町の裏路地にある小さな宝石店。ここは、石の国のお姫さま、ベリルのお店です。ベリルは今日も城を抜け出し、宝石店に立ちます。
今日はどんな人や宝石たちに出会えるでしょうか?
「メノウ? 近くにいるかしら?」
宝石のお姫さま、ベリルがメノウを呼びます。メノウはアゲートの宝石から生まれた、宝石の精霊です。
「なんだい? 姫さま」
「メノウ。ちょっと宝石たちのお手入れをしたいんだけど、棚に手が届かないの。椅子の上に登るから、押さえててくれないかしら?」
ベリルは棚の上から宝石の入った箱を取ろうとしているようです。うんうんと背伸びをしているのですが、届きそうにありません。
「別にいいけど。大丈夫かい? 俺が椅子の上に乗ろうか?」
「大丈夫よ。そんなことまで、あなたにさせられないわ」
ベリルは近くにあった店番の時に使う椅子を持ってきました。メノウは宝石の姫であるベリルを手助けするために生まれてきた精霊です。そんなメノウに気を遣うなんて、姫さまは優しすぎるとメノウは少し呆れていました。
「わかったよ。椅子を押さえているから、気をつけてよ」
メノウは諦めて椅子を押さえます。椅子の上ではベリルが必死に箱に向かって腕を伸ばします。
「あらららら」
やっぱりこうなったかとメノウは思いました。ベリルはバランスを崩し、床に尻餅をついてしまいました。
「だから、俺がやると言ったのに」
メノウが姫さまを起こそうとした時でした。
「あ、あのう」
店の入り口から声がしました。このバタバタで、二人とも店にお客さんが入ってきたことに気がつかなかったのです。
「すみません。気がつかずに」
ベリルは急いで立ち上がりました。
店の入り口にいたお客さんは美しい女性でした。水面にうつる月のように、透き通る青の髪をしていました。美しく、整った顔。特徴的な耳。エルフのようです。エルフはこの世界で人間に似た種族です。
エルフの女の子は言いました。
「あ、あの。きれいになれる宝石が欲しいんです」
その言葉を聞いて、ベリルは目を輝かせました。こんなに綺麗な女の子に宝石を選んであげられるなんて、嬉しくないはずがありません。
「わかりました。では、その前にあなたのことを教えてくださいな」
ベリルは明るく聞きました。
「私はミイナです。隣の森の国から来ました」
ミイナは少しもじもじしています。何か言いにくいことがあるようです。
「ミイナさん。遠慮はしないでください。なんでも聞きますよ?」
ミイナは勇気を出して聞きました。
「私はエルフです。エルフに物を売ってはいけないと言うのであれば、諦めます」
残念なことに、エルフと人間は仲が悪いのです。エルフは人間より長生きです。そして、不思議な魔法を使えるのもエルフの特徴なのです。そんなエルフを人間は不気味に思い、仲良くしませんでした。
しかし、ベリルにはそんな感情は全くありません。なぜそのようなことを聞くのかわからないと言った顔をしています。
そんなベリルにメノウが説明をしました。
「エルフのほとんどは森の国で暮らしてる。エルフのことを良く思わない人間が多いのさ。それは石の国でも、森の国でも同じだよ。エルフがいじめらちゃうことも多いんだ」
「なぜ?」
ベリルは聞きました。本当に理由がわからないようです。
「怖いんだろ。自分と違う物を持っているのが、人間は怖いのさ」
メノウは言いました。ベリルは悲しい顔をして答えます。
「それはひどいですね。エルフも人間も、きっと仲良くなれるのに」
「ほ、本当にそう思いますか?」
ベリルとメノウの話を聞いていたミイナが話に入って来ました。
「ええ。私はそう思いますよ。きっと私とミイナさんも仲良くなれますし、ミイナさんも沢山の人間と仲良くなれますよ」
「そうだといいんですが……」
ミイナは少し辛そうな顔をしています。何か事情があるようです。
「何かあったのですか?」
ベリルは優しく聞きました。まただとメノウは思いました。困っている人を放っておけない姫さまの性格です。
今日はどんな人や宝石たちに出会えるでしょうか?
「メノウ? 近くにいるかしら?」
宝石のお姫さま、ベリルがメノウを呼びます。メノウはアゲートの宝石から生まれた、宝石の精霊です。
「なんだい? 姫さま」
「メノウ。ちょっと宝石たちのお手入れをしたいんだけど、棚に手が届かないの。椅子の上に登るから、押さえててくれないかしら?」
ベリルは棚の上から宝石の入った箱を取ろうとしているようです。うんうんと背伸びをしているのですが、届きそうにありません。
「別にいいけど。大丈夫かい? 俺が椅子の上に乗ろうか?」
「大丈夫よ。そんなことまで、あなたにさせられないわ」
ベリルは近くにあった店番の時に使う椅子を持ってきました。メノウは宝石の姫であるベリルを手助けするために生まれてきた精霊です。そんなメノウに気を遣うなんて、姫さまは優しすぎるとメノウは少し呆れていました。
「わかったよ。椅子を押さえているから、気をつけてよ」
メノウは諦めて椅子を押さえます。椅子の上ではベリルが必死に箱に向かって腕を伸ばします。
「あらららら」
やっぱりこうなったかとメノウは思いました。ベリルはバランスを崩し、床に尻餅をついてしまいました。
「だから、俺がやると言ったのに」
メノウが姫さまを起こそうとした時でした。
「あ、あのう」
店の入り口から声がしました。このバタバタで、二人とも店にお客さんが入ってきたことに気がつかなかったのです。
「すみません。気がつかずに」
ベリルは急いで立ち上がりました。
店の入り口にいたお客さんは美しい女性でした。水面にうつる月のように、透き通る青の髪をしていました。美しく、整った顔。特徴的な耳。エルフのようです。エルフはこの世界で人間に似た種族です。
エルフの女の子は言いました。
「あ、あの。きれいになれる宝石が欲しいんです」
その言葉を聞いて、ベリルは目を輝かせました。こんなに綺麗な女の子に宝石を選んであげられるなんて、嬉しくないはずがありません。
「わかりました。では、その前にあなたのことを教えてくださいな」
ベリルは明るく聞きました。
「私はミイナです。隣の森の国から来ました」
ミイナは少しもじもじしています。何か言いにくいことがあるようです。
「ミイナさん。遠慮はしないでください。なんでも聞きますよ?」
ミイナは勇気を出して聞きました。
「私はエルフです。エルフに物を売ってはいけないと言うのであれば、諦めます」
残念なことに、エルフと人間は仲が悪いのです。エルフは人間より長生きです。そして、不思議な魔法を使えるのもエルフの特徴なのです。そんなエルフを人間は不気味に思い、仲良くしませんでした。
しかし、ベリルにはそんな感情は全くありません。なぜそのようなことを聞くのかわからないと言った顔をしています。
そんなベリルにメノウが説明をしました。
「エルフのほとんどは森の国で暮らしてる。エルフのことを良く思わない人間が多いのさ。それは石の国でも、森の国でも同じだよ。エルフがいじめらちゃうことも多いんだ」
「なぜ?」
ベリルは聞きました。本当に理由がわからないようです。
「怖いんだろ。自分と違う物を持っているのが、人間は怖いのさ」
メノウは言いました。ベリルは悲しい顔をして答えます。
「それはひどいですね。エルフも人間も、きっと仲良くなれるのに」
「ほ、本当にそう思いますか?」
ベリルとメノウの話を聞いていたミイナが話に入って来ました。
「ええ。私はそう思いますよ。きっと私とミイナさんも仲良くなれますし、ミイナさんも沢山の人間と仲良くなれますよ」
「そうだといいんですが……」
ミイナは少し辛そうな顔をしています。何か事情があるようです。
「何かあったのですか?」
ベリルは優しく聞きました。まただとメノウは思いました。困っている人を放っておけない姫さまの性格です。
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