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1章 とある父親の運命
父親の運命9
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「お帰りなさい。ハトさん。今度は早かったですね。もう時間はあまり残っていないと思いますが、何か、進展はありましたか?」
ハトが戻ると、アルブルヘムは調べ途中だった運命の書から顔を上げ、ハトに微笑んだ。
ハトは今までの経過を簡単に説明した。
「わかりました。今、その鉱石が書かれている運命の書を見てみましょう」
そういうと、脇に重ねてある本の束から一冊の本を取り出した。前に戻った時と比べると、さらに本が増えていた。
「…」
アルブルヘムは顔をしかめ、口を固く結んだ。こんな表情は初めて見た。
「どうかしましたか?」
「すいません。言いにくいのですが、運命が、鉱石の運命が変わっています」
「えっ?」
「普段はこんなことないんです。誰かが運命の書の内容を読み、それと真逆の行動をしても、運命は収束する。決して運命が書き変わるなんてことはないんです。しかし、鉱石の運命が変わっている。ハトさんが見つけたことで鉱石は運命を変え、ただの石になってしまった」
「そ、そんな…。なんで」
「わかりませんが、おそらく、あの鉱石はドガーさんと運命が交わることによって病気の治療法へと繋がって行くのでしょう。ドガーさんとの繋がりを断ち切ってしまったのがよくなかったのかもしれません」
「では…。僕は無駄なことをして…」
「それだけではありません。ドガーさんの運命も変わっています…」
そういうとアルブルヘムは口を閉じた。これ以上は言いたくない、と言った様子だった。
「…構いません。どうなったのですか?」
「…」
「教えてください」
「…ドガーさんは、本当なら鉱石を見つけ、医学に貢献したことにより、国から表彰を受けます。その後はわりと裕福な生活ができるはずでした。悪いことからも足を洗うようです。しかし、運命が書きかわり…」
アルブルヘムは少し言葉を詰まらせた。ハトの気持ちを考えているのだろう。アルブルヘムはそっとハトの顔を覗き込みながら話を続けた。
「ドガーさんは鉱山への侵入がバレ、罪人として辛い人生を送ることになります」
「そ、そんな。僕の行動が、ドガーさんの人生まで狂わせてしまったのか…」
ハトは大きな絶望に襲われていた。こんなことなら、自分は最初から関わらなければよかったとさえ思っていた。
「どうしますか?今なら逃げれます。ここにいては?誰もハトさんを責めません…」
アルブルヘムはそっとハトの手を握った。そのては冷たかった。そして、優しかった。
「ありがとうございます。アルブルヘムさん。僕は大丈夫です。ガーボスさんを一人にはできませんから、僕は行きます」
「行っても、何もできませんよ?」
「それでも、僕は最後まで、運命に抗ってみたいんです。たとえ、何もできなくても」
ハトはガーボスの元に向かって、歩き出した。
その足取りは重かった。絶望しか待っていないところに、自ら足を向けることは相当きついことだ。しかし、ハトはその重い足を一歩一歩、前に進めていた。
モノタリの街に着いたハトはガーボスの家へ向かった。いつもなら待ち構えていたガーボスがハトの気配を感じ、飛び出してくるところだった。しかし、その日のガーボスの家は深い沈黙に包まれていた。
家の中に入るとベッドの脇に佇むガーボスの姿があった。
「す、すいません。遅くなりました」
無言のガーボスにハトが声をかけた。
「あ、あぁ。アンが…もう…食事も摂れなくなった…。…手術して胃に穴を開けるか、…特別に調合した魔法薬で栄養を補給すれば、少しは命が繋ぎとめられるが…、そんな金はウチにはない…」
ガーボスはポツリポツリと呟くように話した。
ちょうど、あと1週間だった。
ハトが戻ると、アルブルヘムは調べ途中だった運命の書から顔を上げ、ハトに微笑んだ。
ハトは今までの経過を簡単に説明した。
「わかりました。今、その鉱石が書かれている運命の書を見てみましょう」
そういうと、脇に重ねてある本の束から一冊の本を取り出した。前に戻った時と比べると、さらに本が増えていた。
「…」
アルブルヘムは顔をしかめ、口を固く結んだ。こんな表情は初めて見た。
「どうかしましたか?」
「すいません。言いにくいのですが、運命が、鉱石の運命が変わっています」
「えっ?」
「普段はこんなことないんです。誰かが運命の書の内容を読み、それと真逆の行動をしても、運命は収束する。決して運命が書き変わるなんてことはないんです。しかし、鉱石の運命が変わっている。ハトさんが見つけたことで鉱石は運命を変え、ただの石になってしまった」
「そ、そんな…。なんで」
「わかりませんが、おそらく、あの鉱石はドガーさんと運命が交わることによって病気の治療法へと繋がって行くのでしょう。ドガーさんとの繋がりを断ち切ってしまったのがよくなかったのかもしれません」
「では…。僕は無駄なことをして…」
「それだけではありません。ドガーさんの運命も変わっています…」
そういうとアルブルヘムは口を閉じた。これ以上は言いたくない、と言った様子だった。
「…構いません。どうなったのですか?」
「…」
「教えてください」
「…ドガーさんは、本当なら鉱石を見つけ、医学に貢献したことにより、国から表彰を受けます。その後はわりと裕福な生活ができるはずでした。悪いことからも足を洗うようです。しかし、運命が書きかわり…」
アルブルヘムは少し言葉を詰まらせた。ハトの気持ちを考えているのだろう。アルブルヘムはそっとハトの顔を覗き込みながら話を続けた。
「ドガーさんは鉱山への侵入がバレ、罪人として辛い人生を送ることになります」
「そ、そんな。僕の行動が、ドガーさんの人生まで狂わせてしまったのか…」
ハトは大きな絶望に襲われていた。こんなことなら、自分は最初から関わらなければよかったとさえ思っていた。
「どうしますか?今なら逃げれます。ここにいては?誰もハトさんを責めません…」
アルブルヘムはそっとハトの手を握った。そのては冷たかった。そして、優しかった。
「ありがとうございます。アルブルヘムさん。僕は大丈夫です。ガーボスさんを一人にはできませんから、僕は行きます」
「行っても、何もできませんよ?」
「それでも、僕は最後まで、運命に抗ってみたいんです。たとえ、何もできなくても」
ハトはガーボスの元に向かって、歩き出した。
その足取りは重かった。絶望しか待っていないところに、自ら足を向けることは相当きついことだ。しかし、ハトはその重い足を一歩一歩、前に進めていた。
モノタリの街に着いたハトはガーボスの家へ向かった。いつもなら待ち構えていたガーボスがハトの気配を感じ、飛び出してくるところだった。しかし、その日のガーボスの家は深い沈黙に包まれていた。
家の中に入るとベッドの脇に佇むガーボスの姿があった。
「す、すいません。遅くなりました」
無言のガーボスにハトが声をかけた。
「あ、あぁ。アンが…もう…食事も摂れなくなった…。…手術して胃に穴を開けるか、…特別に調合した魔法薬で栄養を補給すれば、少しは命が繋ぎとめられるが…、そんな金はウチにはない…」
ガーボスはポツリポツリと呟くように話した。
ちょうど、あと1週間だった。
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