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三話 ボイジャーとミラガー

ボイジャーとミラガー2

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「は~。せっかく、きちんとした厨房で、この高級食材を調理してやろうと思ったのによ~」

 ボイジャーは残念そうにイワトカゲをいじっていた。諦めて街中の木陰で料理をするようだ。

「しょうがないよ。はい。鉄網作ったよ」

 コッコはカバンの中の鉄屑を器用に編み上げた。これならイワトカゲを香ばしく焼けそうだ。

「そうだな! イワトカゲは丸焼きが一番うめー!」

 食事のこととなると、ボイジャーの立ち直りは早い。
 火を起こし、ジューシーにイワトカゲを焼いていく。辺りに良質な脂が焼けた、いい香りが立ち込めていた。

「うををを! うまそうだな~」

 ボイジャーは今にも飛びつきそうだ。そんな絶妙なタイミングで背後から声が響いた。

「おいおい。せっかくの再会に挨拶もなく行っちまうとはな~」

「げ! ミラガー!」

 ボイジャーは声の方を振り向き、悲鳴を上げた。そんなボイジャーのことを気にせず、ミラガーはイワトカゲに注目していた。

「おやぁ? イワトカゲの丸焼きか~。いいね。よく手に入れたな。こいつは唐辛子がよく会うんだよな~。どれ、ちょっと味付けしてやろう」

「待てよ! そんなことしたらイワトカゲの良質な脂の甘味が消えちゃうじゃないか。イワトカゲはシンプルな塩味が一番うまいんだよ」

 何やら調理方法の意見が食い違い、ボイジャーとミラガーで睨み合っていた。そんな二人を無視するようにコッコとリューナはイワトカゲの丸焼きを口に運んだ。トロけるような柔らかい肉。これはおいしい。シンプルな味付けもいいが、唐辛子でアクセントをつけても美味そうだ。次第にコッコ達もこの二人のやりとりに慣れてきたようだ。毎回このようなやりとりをしているのだろう。似たもの同士なのかもしれない。

「勝負するか?」「ぐぬぬぬぬ」

 二人はまだいがみ合っていた。

「そんなことより、ミラガーさん。ピンツァ国の王子様が病気って聞いたんだけど大丈夫なの?」

 コッコは気を逸らそうと話題を変えることにした。

「ああ。そうなんだよ。私もその話を聞いてな。なんとか力になれないかと様子を見にきたんだ」

 うなずくミラガー。その話にはボイジャーも興味があるようだ。

「それは気になるな。何しろ食事が出来ないってのが心配だな。一大事だ」

「うむ」

 ボイジャーの意見にミラガーが同調する。やっぱり似たもの同士なのだ。

「世界屈指の料理人が二人も揃ってるんだ。王子様の様子を見に行ってやろうか」

 ミラガーの提案に一同は同意した。
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