バイバイバイ

ふと、考える。
世の中の一体どれだけの人間が、他人との繋がりを強く感じているだろうか、と。

挨拶を交わす、食事をとる、テレビを見る。
同じ空間にいるだけでもいい。

当たり前に流れる時間、毎日のように行う習慣を、誰かと共有している人が一体どれだけいるのだろうか。

母親、父親、姉、兄、妹、弟、家族と呼ばれるもの。
親友、友人、知人、仲間と呼ばれるもの。
夫、妻、愛人、恋人と呼ばれるもの。

相手の空間に自分がいて、自分の空間に相手がいる、という奇跡。

そんな世の中に溢れている奇跡が、自分には訪れてない。
ふと足を止めて冷静になると、それがわかる。

家族はいる、友人はいる、恋人はいる。

「いる」、ただそれだけで、それ以上でもそれ以下でもない。

繋がっているように見えて、私は誰とも繋がっていない。

そう考えるのは、自己中心的かつ逃避的と非難されるだろう。

しかし、それは紛れもなく事実であり、変えることのできないものだと思っていた。

あの日、彼女の目の奥に宿る炎を見るまでは。
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