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2章

2-21 葬儀

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辺境伯に2人そろって負けた後、他の者たちとも模擬戦をした。
妹ちゃんにちゃんと寸止めできるように剣を振ってくださいって頼んでいたな。
辺境伯が「急所でなければ問題なかろう」などと混ぜっ返していたが、そうはいくか。
寸止めをし、寸止めをさせるのだ。
妹ちゃんにけがをさせてなるものか。
幸い、辺境伯の兵も妹ちゃんに怪我をさせるつもりがなく、無事に模擬戦は終わった。
模擬戦の勝率は6勝4敗でした。
もともと突きが主体なので攻撃が素早く、能力値が高いので先手が簡単に取れた。
剣技と能力値のごり押しで充分に戦えるのだが、カウンターは技能レベルと駆け引きがものをいうということが分かった。
そして、駆け引きはほぼ負けた。
この辺は戦闘経験がモノを言っているので、もっとここで鍛錬しろと言われた。
辺境伯が俺で遊びたいだけだと思うんだよな。

夕食はラザニアでした。
小麦粉を面しているのだからもう一歩、麺にするところまでくれば俺はこの世界でも蕎麦を食べられそうだな。
あ・・・でも・・・わさびと醤油をまだ見ていないなぁ。
そばつゆに醤油は必要だよな・・・。
そんな食事時だが、話題は明るい話ではなかった。

「テレサ殿の死を公表する。
筋書きとしては討伐の時に負った怪我が原因で死亡したという形じゃ」

まぁ、そうだろうな。
死体が動いていたというのは『神の声』や『鑑定』の結果で出てくる話で、普通に考えれば王宮で勲章をもらうまでは生きていたってのが客観的な事実だろな。

「でじゃ。
問題はテレサ殿の死体をどう処理するかだ。
王都で埋葬するのか。
故郷に持って帰って埋葬するのか。
くろがね殿の存在進化に用いるのかだ。
もちろん、どの選択であっても葬儀はする」

うわぁ・・・とうとう言ったよ。

俺と妹ちゃんに視線が集まる。
何か言われる前に俺の意見を提示しておくか。

『妹ちゃんに一任する』

ここがダンジョンの中なら、モンスターに食われるよりは俺が吸収して共に生きるという選択をしただろう。
だが、ここはダンジョンの外で彼女の妹と婚約者がいるのだ。
俺が口をはさむことではない。
少なくとも、俺はテレサから形見をもらったからな。

「・・・カールさんはどう思いますか?」

妹ちゃんはカールの意見も聞きたいのだろう。

「僕はきちんと埋葬してあげたいと思っている。
だけど、存在進化とその有用性を否定するわけではない。
だからどう進化するのか教えてほしい」

おっと・・・俺に戻ってきちゃったよ。
でも、テレサの死体が存在進化するための鍵になることはわかっても、それ以上はわからない。

『現時点では把握していない』

確か前回の時は進化するかの質問に「YES」と答えたら進化先が出たんだよな。

『存在進化するぞ』

『条件を満たしておりません』

テレサの死体を使わないと無理ってことか。
こりゃ進化先も選べそうにないなぁ。
そのことを伝えるとカールはきっぱりと反対した。
それに倣うかのように妹ちゃんも反対し、辺境伯も「使えない進化では困る」と言い、俺の存在進化はお流れになった。
間違いなく強くはなるだろうが、人間の死体を使った進化というのがどうなるのかわからないので嫌われたんだろうな。
ちょっと惜しい気もするが、変な方向に進化しても仕方がないしね。


「くろがねさん、ちょっといいですか?」

葬儀の相談が終わったころ、いもうとちゃんがはなしかけてきた。
もちろん、いつでも構わないけどなんでしょう?

「おトイレってどうすればいいんですか?」

呆気にとられた。
俺は何でこんな簡単なことすら気が付かなかったんだ?
テレサは俺と合体してから一度もトイレに行かなかった。
数日過ごしたのにただの一度も行かなかった。
なぜそれを疑問にすら思わなかったんだ?
今のおれにそういう本能がないからだろうか?

「くろがねさん?」

本能的に股の装甲を開ける方法はわかるので声をかけてくれれば開けるといった。
その上で今の話をしたら

「わたしもそこまで頭が働かなかったです。きっと知らない間にしているんだとばかり・・・。
わたし・・・本当にバカですね」

かける言葉が見つからなかった。


翌日、葬儀はひっそりと行われた。
なんか、ずいぶんと偉そうな貴族や王子も来ていたが、特に騒動もなかった。
強いて言えば、王子から半年後を目安に次の鎧の装着者を選択するから希望を言ってほしいと言われたくらいかな。
『美人でエロくて信頼できる人』と答えておいた。
触手鎧での凌辱を許し楽しんでくれるような人がいいな。
初めての意思疎通にちょっと面食らった感じだったけど、にこやかに笑って「考えておくよ」と答えた。

その日の夜に王子から贈り物が届いた。
妹ちゃんが嬉々として受け取った。

「王子さまってとてもおしゃれで趣味がいいんですよ。
おしゃれな剣帯とか、額あてでしょうか?
あ、くろがねさんはグルメで有名ですからおいしいソースか珍味かもしれません。
ケーキやクッキーもいいですよね」

おいしいクッキーやケーキもいいけど・・・妹ちゃんも女の子だなぁ。
甘いものに目がないみたいだ。
リボンに包まれた純白の箱を開けると中にはヒルやらナメクジやらムカデなどの詰めあわせが入っていた。
あ、蛇みたいに体の長いナメクジが触手みたいに腕を這い上ってきた。
おっと~~~!!!
妹ちゃんは意識が飛んだようで思いっきり顔面から箱に突っ込むところだったぞ。

手紙が添えられており、『君のイメージに合いそうな強化アイテムになりうるものを送る』と書いてあった。
あ~~、葬式の時にどんな装着者がいいか聞かれたときに触手鎧で凌辱するイメージがこぼれたかな?
残念ながら生きている虫も死んだ虫も強化アイテムにはならなかった。

妹ちゃんはとても嘆いていたが、俺はむしろ王子のイメージがよくなったよ。
最初のイメージが悪かったが、結構いい人なのかもしれない。
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