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久しぶりです。こんにちは。初めまして。さようなら。

料理、掃除洗濯、農作業。あと、釣り。

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 拝啓 愛する母ちゃん

 天国にいる母ちゃん。
 アルと婚約破棄も出来ず、貴族として除籍もしてもらえず、なぜか私はアーリャ修道院に居ます。
  
 よくこの短時間の間に準備できたなってレベルの送別会を開いてもらい、号泣するマーサさんに「頑張ってきてください。エリザベス様なら絶対大丈夫です。だってソフィア様の産んだお子様ですもの。お帰りになった時には立派な侯爵令嬢になっているはずです。」と謎の応援をもらいました。
 無理だと思います。
 アルには「僕は学校に戻らないといけないから、ここでお別れだよ。修道院では周りの人に迷惑をかけることもあるだろうけど、感謝の気持ちを忘れずにね。色んな事を学んでくるんだよ。」と無表情で言われました。
 あのね、母ちゃん。アルが送別会前に辛そうな瞳をしたから、お別れの時にアルの瞳をじっと見つめてみたけどそこからなにも感じなかったの。あの時アルが辛そうに見えたのは勘違いだったのかしら。
 お祖父様はそれは素晴らしい笑顔で送り出してくれました。

 修道院の生活は日の出前から始まるし同世代の子もいないけど、おばあちゃんの修道女の人達に色々教えてもらっています。今日は美味しいお豆料理の作り方を教えてもらいました。基本的には菜食だけど、たまにお魚料理もでるらしいの。ワインも出るわ。私は飲まないけどね。
 修道院の広い敷地内には川や畑もあって農作業もします。私の鍬の持ち方がなってないらしく一から教えてもらいました。家にも畑はあったけどこんなに大きな畑ではなかったので本格的な農作業に全身筋肉痛で体が悲鳴をあげています。今度の魚料理の時には釣りも教えてもらえるそうです。

 アルは色んなことを学べと言っていたけど、料理や掃除洗濯、農作業のことを言っていたのかしら。あと釣り。

 明日はシスターさんたちも来て一緒にマドレーヌを焼くそうです。ここのマドレーヌは絶品でそれを売って地域の初等学校や中等学校の寄付金にするそうです。私もこうやって知らないところで修道院の人達にお世話になっていたのね。
 
 そういえば母ちゃん。私アーリャ修道院に来て初めて知ったんだけど、修道女とシスターって違う立場の人達だったのね。修道女の人達って一生この修道院から外出しないんですって。それと違ってシスターの人達は敷地外にも出て学校に教えに向かったり、医療の現場に赴いたりするらしいわ。私ちゃんと女子修道院のこと理解してなかったのね。

 まだここに来て数日だけど、毎日学ぶことが多くて楽しいです。そして、今度新しい子が来るそうです。

 今から胸がドキドキしてたまりません。仲良くできるといいな。

 

 あなたの愛する娘 エリザベスより

























 今思えば、この頃が一番楽しかったのかもしれない。

























 


 
 


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