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久しぶりです。こんにちは。初めまして。さようなら。
母ちゃんであって、母ちゃんでない、お母様のこと。でも、やっぱり母ちゃん。
しおりを挟む「私は何をするためにここまで来たんだっけ?………」
私はベットに寝ながら思わず呟いた。
夕食は美味しかった。ぶっちゃけ、見たこともない料理ばっかりで何を食べたのか分からないけど美味しかった。スープはじゃがいもを使ったスープだった。きっと、あのじゃがいもが使われたんだと思う。
屋敷の使用人の皆さんは優しかった。こんな田舎娘の平民の娘にも優しかった。屋敷の主人であるお祖父様にじゃがいもを投げたのに意地悪されなかった。実はよくある少女向け小説みたいに、メイドさんやら執事さん達から「こんな平民には残飯で十分だ!」って嫌がらせでも受けるかと思っていたけど、そんなこともなかった。
それどころか、私に会って涙ぐんでいる人までいた。
「エリザベスお嬢様。私は貴方様のお母様であるソフィア様の乳母を務めておりましたマーサです。どうか、ばあや、とお呼び下さい」
これだよ!こう言うのを期待したんだよ!お祖父様!あのクソジジイ、なんで一番最初に容姿について文句言ったんだよ………と、一人ジーンとしていると、「マーサ気をつけろよ。下手なこと言うとじゃがいもが飛んでくるぞ」とかクソジジイは言ってくるし、「ベス。まさかとは思うけど、もうじゃがいも持ってないよね?」とアルがやっぱり無表情のくせに疑いの目で聞いてきたので、思いっきり体重をかけてアルの足を踏んだら両足を縄で縛られそうになったけど。
私が泊まる部屋は母ちゃんが結婚する時まで使っていた部屋だったらしい。
貴族のお嬢様の部屋らしく天蓋の付いたベットに装飾の付けられた家具の数々。絵画まで飾ってある。その中には母ちゃんの肖像画があって、ドレスを着た母ちゃんが、いつもの母ちゃんじゃない知らない笑顔の母ちゃんで描かれていた。
「母ちゃん………本当にお貴族様のお嬢様だったんだ………なんか、母ちゃんじゃなくて、お母様、って呼ばなくちゃいけない人みたいだった………」
私の知らない母ちゃん。
私の知っている母ちゃんは豪華なドレスなんて着てなくて飾り気の無いワンピースにエプロンを着けて、すっぴんで口を大きく開けて笑うし、フライパンで父ちゃんを追いかけたりするし、私に護身用と言ってじゃがいもを隠し持っておけって言ってたけど、あの肖像画の母ちゃんは全くと言っていい程そんなことをする人には見えなかった。
マーサさんが言っていたけど、母ちゃんは「社交界に咲いた一輪の白薔薇」なんて言われていたらしい。絶対嘘だと思ったけど、肖像画を見たら、………やっぱり納得出来なかった。
「あれは絶対猫被っていたよね?絶対心の中ではボコボコにフライパンで殴り倒したかった事の方が多かったハズ」
知らない天井に向かって呟いてみるけど、答えは返ってこないし、きっと一生分からない。
ついでに言うなら、今はそれ以上にやるべき事がある!
「明日こそ、絶対婚約を白紙に戻して、ただのエリザベスに戻ってやる!」
ふかふかのベットで私は高らかに宣言したのだった。
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