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とりあえずの昔の話と今の話  世に言うプロローグ的なナニカ

お祖父様

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 お祖父様。

 お祖父様って言っても、私は会った事もなければ見た事も手紙を貰った事もない。そんな言葉だけの存在がなんでか知らないけど、何故か私の幼馴染であるアルを知ってて、養子にしたかった?で、アルが私との婚約を条件に婿養子になる事を決めた?

 「信じられない………」
 「だよね。父ちゃんもいきなりの事に驚いているよ」
 「いや、喜んでいるよね?めっちゃ今ニヤニヤするの我慢しているでしょ?」
 「わかった?でも、相手はアルベルトくんだし悪い話じゃないと思うよ。父ちゃんもアルベルトくん好きだし」
 「父ちゃんが結婚するわけじゃないのに勝手な事を言わないで。私嫌よ。アルと結婚なんて」
 「うーん、でももう決まっちゃったし」
 「決まったって婚約誓約書に私サインしてないじゃない。プロポーズどころか、ここ最近会ってもいないのよ」

 そう、アルとは女学校に入学してから一回も会ってもいない。私は地元にある平民の女学校に通っているけど、アルは奨学金を貰って都会のお貴族様も通っていらっしゃる高等学校にいるし、親元を離れて寮暮らしなのだ。アルと文通をする仲でもないし、ましてや恋人同士でもない。本当に親同士が仲が良いどこにでもいる幼馴染なだけなのである。

 「でもね、ホラこれを見て」
 そう言って渡された紙は、婚約誓約書と題が書かれていて、アルの名前と私の名前が書かれていた。御丁寧に私の名前の隣には「祖父レイラーニー侯爵代筆」とまで書かれている。

 「………ふざけるなあああああああ」

 
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