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桜の妖精
しおりを挟むこの広場にとりあえず向かってみるとするかな~。
あの桜の木をもっと近くで見てみたいし。
あの木をさっきから観察していて思ったんだけど、あの桜の木ってきっと枝垂れ桜系だと思う。
枝の先の方がこう、柳みたいにぐにゃっとしてるし。
てか、あんな太い枝が曲がるってあの花達はどんなけ重いんだろう。
幹も手入れされた公園とかでたまに見る真っ直ぐな木とは違って、自然な感じに曲がっていて凄く綺麗で神秘的だ。
その根本のほうは、これまた太い根っこが沢山あって一本の木ってよりも沢山の木が寄り集まっているみたいにも見える。
あれ?
なんか窓みたいな四角い穴がある……しかもよく見たらいろんな所にある。
何だろう?
きっと何かの虫かなんかの仕業だろう。
桜の木には虫が多いって言うし。
もしくは遺伝子変異的なやつでそうなってしまったのかもしれない。
あれ……?
なんかあそこからベランダみたいな場所がある……その奥にはお洒落な模様のドアまである。
きっと天文学的確率を潜り抜けてあの形になったんだろう。
なんて、すごい木なんだ。
きっと神秘的な木には神の加護があるんだろう。
窓の様な穴の中から和風なタンスや椅子、ベッドなどの家具が覗いて来ているが、どれも木製である事からこれもこの神秘的な木の、神がかった奇跡的な成長が創り出したんだろう。
きっとそうに違いない。
さっきまでの感動を無駄にしない為にも、今からこの木が自然物であることの証明に取り掛かる。
まず、おそらくこれは神籬や依代の類なんだろう。
依代とは神様が意思疎通をするため、現れるときに拠り所としてくる所や物の事で、日本では古くから、神聖な自然の森や樹木に神が降りて来ると言われている。
そして神籬とは、ひもろきと読み、神霊 が天下る 木、「神の依り代となる木」、つまり「神籬」と言うわけだ。
つまり依代のバージョンアップの様な物だ
更に、この木は大きさから見てもかなりの途方もない時間をかけて育ってきたのだろう。
物には長い年月を経ることで付喪神と呼ばれる神や精霊が宿ると言われている。
たしか、その年月は大体100年くらいだったはず。
この木は見た感じ、余裕で樹齢100年は超えている。
何千年もあるんじゃないかな。
つまりこの木には付喪神や神籬、依代などの可能性が高く、いずれにせよ神様が宿っている訳だ。
よって例え人工物の様に見えてもこの木はは神の意志により天文学的確率を突破したとてもありがたい御神木なのだ。
よって窓や部屋、ベランダ、お洒落な装飾、家具など、何があってもおかしくは無い。
いいな?
つまるところそういう事なのだ。
決して屁理屈なんて物ではない。
断じてない。
これにてこの木が自然物という事の証明が完了した。
よってこの木は決して人工物ではない。
決して数分前の俺の感動は無駄ではなかったのだ。
さあ、問題も解決したし、あの木に近づいてみよう。
いつの間にか話しが横転しちゃったから元に戻そう。
あの木にはきっとボスくらいのが居るんだろう。
だってさっきの頂上から見た時に広場に大きく抉られた様な跡が点々としていたり、不自然なくらい四角い穴がぽつんとあったりと、戦った跡っぽい物があるし。
ついさっき最初の敵から逃げた俺がいきなりボス戦して勝てるとは思わない。
流石にね?
そんな訳で、ちょっとボスの攻略法を探すつもりだ。
ヤバそうだったら逃げるし、倒せそうだったらそのまま倒す。
まあ倒せるとは思えないし、
様子見という事でちょっくら行ってみよう。
逃げる準備はバッチリだ。
緊急事の為にすぐにあのリンゴを取り出せる様にしたし、図らずともさっきの熊のおかげで準備運動も大丈夫だ。
感謝はしないがな!
すでに四角い穴のところまで来ているし。
四角い穴は意外と浅くて、でも大きさはちょうど俺の身長の3倍くらいかな。
ふと思ったんだけど俺の身長って尻尾から頭の先までなのか足から背中までの高さなのかどっちの事を言うんだろう?
うーむ、分からん。
まあとりあえずこの穴は俺が3人くらい入りそう。
いや、匹で数えるのか?
いいや、人だ、俺の心は人だから人でいい!
良いに決まってる!
もう良いや、さっさと進もう。
遠目からも分かっていたが、やはり大きいな。
高さだけでもさっきの林に生えていた木の3倍くらいもある。
太さは、もはや小さい一軒家が入りそうなくらいだ。
てか玄関がある。
本当にこの木はもはや家になっているな。
ガチのマジでツリーハウスだ。
もしも敵が出て来なかったら中を探索してみたいな。
上の方はさぞかし綺麗な景色なんだろうな~
おそらく入口と思われる扉まではもう目前といった時、
きぃ~、と少し間の抜けた音を立てながら目の前の扉が開いた。
その瞬間、自分の意思に反して全身の毛が一気に逆立つ。
いつの間にか無意識に戦闘態勢に入っていた。
その扉の後ろから出て来たのは、
クルクルと跳ねた赤髪に花櫛を付けた可愛らしい少女だった
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