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森のくまさん

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 クマさん!?
 なんかもう見た目からして強そうなんですけど?
 くまさんってこんな血の様な赤い眼してたっけ!?
 こんな名刀みたいな爪あったっけ!?
 地球産の熊と迫力が段違いなんですが。
 ってか『危機感知』、ちゃんと仕事しろやっ!

 いつの間にか無意識に脚が震えていた。
 さっきの鎧の方が絶対強そうだったのに何で今!?
『危機感知』が効いてなかったりこんなにも恐怖を感じたり、どう考えても可笑しい。
 いきなり俺って弱くなってた?
 なにそれコワイ。
 幸いまだ気付かれてないっぽいから逃げよう。

 コソ~っと、
 
 私はここにいないぞ~
 そのままこっち見るなよ~
 はっはっはバカめ!
 こちとらお化け屋敷(物理)でステルス任務はもう完璧なんだよ。
『隠密』と『無音』があるし現代のステルスダンボールと言っても過言では無い、はず。
 
 そういえば今でもステダン(略) は今でもダンボール被りながらステルス任務を遂行してたりするのかな?
 てかそもそも今もプレイされてるのだろうか。
 有名だったと思うし。
 確か何年か前のゲームだった様な記憶がある様な……
 まあとりあえず今はどうでもいい。
 何でいつも俺は思考がどんどん脇道に逸れて行くのだろう?

 今は戦闘離脱に集中しよう。
 大丈夫、何もなければバレないはず。

 うわっとあぶねえ!
 前に吹き飛ばした落ち葉を踏むところだった。
 俺はそんな枯葉を踏んだせいで気付かれるみたいなベタな真似はしないんだよ!
 ちゃんと足元にも気を付けているのだよ。
 もうまあまあ離れたし流石にもう良いかな?
 

 はあー。
 何だったんだろう?
 さっきだけやたら恐怖を感じたり『危機感知』がストライキしたり。
 俺が何をしたと言うんだ!
 まあ今まではフツーに働いたから急に弱くなったってよりアイツが特別だったのかな?
 まああいつにはもう会う気は無いからまあ良いか。
 いや、でもまたあんなやつに会った時の為に何か対策を立てておくべきかな。
 うーん、どうしよう。

 ん?
 なんか一気に視界が暗く……しかもなんかもふもふする。
 なんだろう? 森の中に羽毛布団? いやそれとも毛玉?
 もしかして、

 いや、そんなはずはないはず。
 まださっきの熊はさっきまで後ろに…………うん、今もちゃんといるな。
 まっさか!


 もふもふから顔を引き抜いて視界を上に浮かべる。
 !!!

 嘘だろ!


 まさかの二体め!?
 別れを告げたはずの絶望が立派になって帰って来た。

 てかなんかコイツ、あっちのと違って所々の毛が赤いんだけど!
 絶対コイツ強いじゃん!
 なんかあっちもちょっと呆けてる様子もあるが、きっと時間の問題だろう。
 いきなり至近距離にいてちょっと気まずい。
 って言ってる場合か!
 超絶ピンチじゃん!

 こんな時に取れる手段はただ一つ。
 必殺! 戦略的撤退 にげる 
 結局やることは変わらない。
 ちょ~っと難易度が上がるだけ。
 隠密に加え、更にスピードも必要になってくるだけだ。

 先手必勝、とう!
 逃げるは勝ちだし役に立つ!
 さあさあ逃げろ、脱兎の様に逃げるんだ!
 オオカミだけども。
 この四足は何のために有る?
 より速く走る為だろう、そうだろう?

 ウッソ!?
 コイツ足はっや!
 我に返って追いかけて来た赤毛熊の影がどんどん大きくなって来る。
 てゆうかもう真後ろにいる。
 ヤバい不味い。
 こうなったら木登り!
 あっぶねぇ、尻尾にちょっとかすった!
 ギリッギリで逃げ切れた。
 
 でももうこれでアイツも来れまい。
 残念だったな!
 ん?
 足下の木の幹にいきなり亀裂が入ったかと思ったら燃え始めた。
 嘘だろ!?
 自然を大切にって言ってる場合じゃない。
 急いで隣の木に移動しないと!
 ヒュンっと風切り音が聞こえた。

 いきなりブワッと尻尾に熱気が当たった。
 なんか焦げ臭い。
 コレってもしや、尻尾の先が焦げた!?

 俺の尻尾は毛が長いから見た目より本体はちっちゃい。
 なので傷自体は無いのだが、後少しズレてたら普通に当たってた。
 てかアイツやっぱりさっきから何か飛ばしてきとる!
 
 ちょっとアイツを見てみよう。
 流石に足場見ながらだからそこまで正確には見えないけども。
 あ、なんか手が真っ赤になったと思ったらその手をブンって振って来た。
 そしたら手から火の斬撃が飛んできた。
 え!?
 何それ強そう、てか実際に強すぎ。
 手ぇ振るだけで火が飛んでくとかチートでは。
 
 そんなこと思ってる場合じゃない!
 飛んで来ているんだよ。
 火の斬撃が!
 隣の木唯一の脱出口に!

 MPが勿体無い気もするけど命には代えられない。
 水晶盾! これで脱出口を守りつつ逃げろ!
 盾もなんか炎は防げてるけど斬撃までは受け止め切れずに直ぐに壊れるから状況は劇的には変わってない。
 つまりは逃げろっ! てこと。
 やっぱり頼れるのは自分の力か。

 なんかコイツ無茶苦茶しつこい!
 もうかなり移動したと思う。
 盾を張ったり逃げたり飛んだりして色々と頑張ってたから長く感じただけかもしれない。
 それとコイツ凄い強いんですけど。
 途中、コイツの炎で真っ二つの焼き鳥にされてしまった哀れな犠牲者も出たりしたりした。
 俺を食べようとしたバツだな!
 良い匂い。

 俺も一歩間違えたら真っ二つのこんがり肉になっていたかもしれない。
 気を引き締めよう。

 どこかに隠れ家は無いかな?
 あそこの丘の崖の影に洞穴が!
 あそこに逃げ込もう。
 やっぱり頼れるのは自然の力だな。
 
 無我夢中で走っているだけならよかったんだけど流石に攻撃を躱しつつなのでキツイ。
 俺自身を攻撃しようとしてるから退路はまだギリギリ確保出来てる。
 アイツがもっと賢くてじわじわと逃げ道を潰して来てたら終わりだし。
 アイツがクソエイムなのも幸いだ。
 まあ爪なんかで走りながら狙いを絞るのはキツイだろうし。

 あれ?

 いきなり攻撃が止まった。
 何で? まさか
 更に何か大技あんの!?


 
 と思ったら180度回転して帰っていった。
 謎すぎる。
 って思ったけどナワバリ的なヤツかな?
 他に何にも思い付かないし。
 俺に急にビビったとかは絶対に無いし、急に興が冷めたって訳でも無いだろう。
「せっかくの獲物を逃した!」ってかんじの凄い形相して帰って行ったから。

 はあーー。
 今度こそ逃げ切れたー。
 ほんとうに
 クマさんコワイ。
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