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ランチタイム後の告白は
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菅山さんのおばあさんにお会いした翌日。出社した途端、菅山さんが私の席に来た。
「……昨日は祖母が世話になった。ありがとう。それから、これも洗っておいた」
いえ、おかまいなく、とも、運んでいただいてありがとうございました、とも言う暇もなく、さっさと自席に戻っていく菅山さん。私は手渡された紙袋をそっと開けた。
(……あ)
綺麗に折りたたまれたストールだった。鞄に入っていないと思ったら、菅山さんが持っていたのか。
(そのまま返してくれてもよかったのに)
律儀と言うか几帳面と言うか。おかしくて、ぷぷっと吹き出してしまった。
(さあ、今日も頑張りますか!)
紙袋をそのまま机の引き出しに仕舞い込み、よし、と気合を入れてパソコンを立ち上げた。
出社してくる人に挨拶をしながら、今日の予定表を確認した。
そうして日常が始まると、余計な事を考えている暇もない。
その方がかえって良かった。今でも見知らぬ男性が近付いてくると、身体が強張ってしまうけれど、仕事中は大丈夫だ。
(そう言えば、菅山さんも)
おばあさんが面会に来てから、菅山さんもちゃんと休むようになったようだ。ランチのお誘いも何度かに一度は断っているし、会社帰りのデートの回数も減ったと噂で聞いた。
ここ十日程で目の下のくまもほぼなくなったし、顔色も良くなってきている。秘かにほっとした。やっぱりおばあさんの力ってすごいなあ。
(無理しないで欲しいよね)
おばあさんも心配していた事だし、身体には十分気を付けて欲しい。そんな事は本人には言えないけれど、心の中で思う分には構わないだろう。
「水城さん。この前の資料ありがとう。綺麗にまとめてくれて助かったよ」
システム部に来ていた杉本さんが、いつの間にか私の席の隣に立っていた。私は彼を見上げ、にっこりと笑った。
「いえ、こちらの仕事ですから当たり前です」
頭を掻いてる杉本さんは、飲み会を仕切ったり、社内の取りまとめをしてくれる、ムードメーカー的ポジションの人だ。がちっとした体形でスポーツマンタイプだけど、人への気遣いも細やかなところは、さすが営業だと思う。
「水城さんは昼弁当作ってるんだっけ?」
「はい。前の夜の残り物だったりしますが」
一人だと食べきれないから、残ったおかずはお弁当にしてるのよね。
「いやあ、その」
杉本さんがちらと奥の方を見てから言った。
「営業の若い奴らがさ、水城さんと飯食いたいって言ってて。夜は困るだろうから、ランチでも一緒にどうかな?」
「え?」
私が目を瞬くと、杉本さんがくすりと笑った。
「水城さんと仲良くなりたいって男、多いんだよ。でも忙しそうだから声掛けづらいって。それで、顔見知りの俺に白羽の矢が立ったってワケ」
「え、っと」
ぽかんと口を開けたまま固まった私に、杉本さんがぶぶっと吹き出した。
「なんだ、水城さん自覚無いんだ。本社から可愛い子が来たって評判になってるんだよ」
「ええっ!?」
かっと頬が熱くなる。そんな事、言われた事なんて、今まで一度だってなかった。
(いつだって、可愛いって言われるのはりりかの方だったのに)
ふわふわの髪に大きな瞳。祐希と新人もいつだってりりかの方を向いていた。本社でも、りりかは人気者だったし。
杉本さんが机に手を付いて、私の顔を覗き込んできた。
「ま、そんな訳だから、一回ぐらいどう? 当然こっちのおごりで」
「あ、あの」
にっこり笑っている杉本さんから、圧力を感じる。知らない男性とランチ、というのはまだちょっと怖い。でもせっかく声を掛けてくれたのに、と思うと無下に断れない。
(そうだ、どうせなら)
私は思い切って杉本さんに言ってみた。
「おごるとかはいいので、支社の女性社員の方も誘ってもらえるなら。……仕事が忙しくて、他の部署の方ともほとんど話出来てなくて。女性の知り合いが欲しいなって思っていたところだったんです」
杉本さんの顔がぱっと明るくなった。
「それくらいなら、お安い御用! 分かった、何人か声掛けてみるよ。じゃあ、決まったら連絡するから」
ひらひらと右手を振ってシステム部から出て行く杉本さんの後ろ姿を見送って、ふうと溜息をつく。
「少しずつ慣らした方がいいわよね……」
「無理はするな」
「ふえっ!?」
いきなりの声に驚いて右側を見ると、いつの間にか菅山さんが机の横にいた。じろりと冷たい目付きで見下ろされ、口元が強張った。
「まだ怖いんだろう。杉本にも無理はさせないように言っておく」
それだけ言うと、菅山さんはさっと机から離れて、システム部から出て行った。
「……」
(気を遣ってくれてる……のよね。ぶっきらぼうだけど)
――あの子ったら、あまり愛想のよい方じゃないでしょう? だから誤解される事が多くて……本当は優しい子なのに
(十分優しいと思いますよ、志乃さん)
志乃さんの優しい笑顔を思い浮かべながら、私は仕事に戻った。
杉本さんが再び私の席に来たのは、なんとその日の夕方。さすがデキる営業は仕事が早い、と感心してしまう。
「ちゃんとメンバーも厳選したからな! 大丈夫!」と親指を立てる杉本さんに、苦笑いしか返せなかった。
「明日、早めに出てランチセットにしよう。いい店知ってるんだよ。会社から近いし、予約するから楽しみにしてて」
杉本さんが悪戯っぽく笑う。私もつられて笑いながら、杉本さんに頭を下げた。
「はい、分かりました。ありがとうございます、杉本さん」
「じゃあ」
手を振って部屋を出て行く杉本さんの後ろ姿を見送ってから、私は席を立ち、プリンターの方へと歩いて行った。
***
杉本さんが選んでくれた店は、会社から歩いて五分ほどの場所にある、一軒家を改装したレストランだった。艶のある板張りの壁が印象的で、レトロな喫茶店の雰囲気がした。メニューも洋食が多く、ここのオーナーシェフは元ホテルのコックだと聞いて納得した。杉本さんが予約してくれたランチセットは、メインは魚か肉料理、そしてサラダとスープ、パンがついていて、お手頃価格だった。
予約しないとすぐ席が埋まるのも分かる気がする。
総勢八名のメンバーで、四人ずつ向かい合わせに座った。男女入り混じって席に着き、一人ずつ自己紹介をしてからランチタイムとなった。
女性は、営業補佐の井上さんと坂東さん、そして総務部の加納さんの三人。井上さんと加納さんは私の一つ上、坂東さんはかなりベテランらしい。
「本当、水城さんの周りってイケメンばかりよね~羨ましい!」
私の真正面に座った井上さんが、私と私の両隣に視線を彷徨わせながら言った。
「そ、そう、ですか」
スズキのポワレをフォークで食べながら、私は愛想笑いを浮かべる。
「ねえ、水城さんとは同期だって本当? 久遠くん」
井上さんの質問に、私の左隣に座った新人がにこやかに答える。
「ええ。ありさとは大学からの同期で。会社も偶然同じところに就職したんですよ」
「いいなあー、私も久遠くんみたいな同期欲しかったー」
「そうですか?」
新人はにこやかな営業モードになっている。井上さんと穏やかに話が進んでいた。
「……」
私は黙ってグラスからミネラルウォーターを飲んだ。
(杉本さんにしたら、気を利かせてくれたんだろうけど……)
一階ロビーで集合した時、メンバーの中に新人の姿を見つけた私は思わず「え!?」と叫んでしまった。グレー地に白いストライプが入ったスーツにトレンチコートを着た新人は、私を見てにこっと笑う。
『今日出張で来たら、杉本さんに誘われたんだ。ありさが支社のメンバーに馴染むようにランチ企画したからお前も来いって』
『そ、そうなんだ』
胸が一瞬詰まった。新人が気を遣うような目で私を見てる。大丈夫、と私は少し笑ってみせた。
向かって井上さんの二つ右隣、加納さんがふふふと笑いながら声を掛けてきた。
「そう言えば、この間のランチも楽しかったですよね? 菅山さん」
私の右隣に座っている菅山さんが淀みなく返す。
「そうですね。中々美味しかった」
「……」
菅山さんも外出モードだ。黒に近いグレーのスーツを着ている彼の微笑みも、新人に負けず劣らず人目を惹く。
私の向かい側の席は、左から営業の高田くん、井上さん、杉本さん、そして加納さん。私側の席は、左から新人、私、菅山さん、坂東さんだ。
……な、なんと言うか。
(この二人に挟まれて、心安らげる気がしない……!)
杉本さんから『水城に無理させるなって言うからさ、心配ならお前も来いよと言ったら引っ掛かった』って聞いた時は、目が点になった。
新人や菅山さんが参加したから、営業は早い者勝ちで高田くんだけになったって杉本さんが言ってたっけ……。
(ううう……居心地が悪い……)
まあ、井上さんや加納さん、そして坂東さんは、何も気にした様子もなく私や新人、菅山さんに話し掛けてるから、関係ないのかもしれない。
「水城さん。来週末営業でBBQやろうって話あるんですけど、一緒にどうですか?」
「高田くん」
高田くんは入社一年目らしい。まだ初々しくて、少年っぽい雰囲気の人だ。明るい茶色のふわふわの髪に背も新人や菅山さんよりも低くて、弟がいたらこんな感じかなあって思う。
「皆、水城さん来てくれたら歓迎すると思いますよ? 今日だって俺、随分先輩達に羨ましがられて」
「……へえ」
(あ、新人?)
何なんだろう、その低い声は。新人の笑顔がコワイ気がするのは何故?
「帰りが暗くなったら心配だから、遠出は状況が落ち着くまで避けておいた方がいいんじゃないか?」
「そうですか……」
見るからにしょぼんとしてしまった高田くんに、慌てて声を掛ける。
「あ、あの。ランチなら大丈夫ですから、また今度にでも」
ぱっと高田くんの顔が輝いた。本当に弟みたい。
「はい! 楽しみにしてます!」
坂東さんが私の方に身を乗り出して言った。
「水城さん、この子もお勧めよ~。新人の中でぴか一だし、気も利くしね?」
「か、揶揄わないで下さい、坂東さんっ」
あ、真っ赤になってる。何だか可愛いなあ。新人の頃ってこんなのだったっけ。
「そうそう、前から聞きたかったんだけど、水城さん」
坂東さんがさらに身を乗り出す。
「毎日迎えに来てくれてるイケメン、水城さんの彼氏?」
新人がひゅっと息を呑む音が聞こえた。
「え」
呆気にとられた私に、更に加納さんが畳みかけてきた。
「あー私も聞きたかった! すっごいスポーツマンって感じの男子よね? 短髪で笑顔が爽やかな」
お兄ちゃんの事? 私は首を傾げたまま言った。
「おにいちゃ……彼は幼馴染よ。姉の同級生なの。小さい頃からお兄ちゃんって呼んでて、向こうも私を妹みたいに可愛がってくれて。物騒な事件があったから、念のためにって迎えに来てくれてるの」
「水城さんっ」
加納さんが手を合わせて私を拝み始めた。
「それだったら、紹介してくれない? 彼、すっごく私のタイプなのっ」
(お兄ちゃんを?)
お兄ちゃんはみすずお姉ちゃんを好きなはず……。
加納さんは、はきはきしてて明るいし、見掛けはりりかみたいに可愛いし、お兄ちゃんが嫌うタイプではないと思うけれど。
(……無理強いはしたくないよね)
「彼に聞いてからでいいですか? もしかしたら、好きな人いるかも知れないし」
そう言うと、加納さんは「もちろんよ! ダメ元で言ってるだけだから。水城さんが嫌なら別にいいし」とあっけらかんと笑ってくれた。
こういうサバサバしたところ、お姉ちゃんに似てるなあ。もしかしたら、もしかする……かも。
(今日にでも聞いてみよう)
「水城、戸津さんは好意で迎えに来てくれてるのだから、無理強いするなよ」
耳元で菅山さんがぼそっと囁いた。低音ボイスに一瞬息が止まる。分かってます、と私はこくこくと首を縦に振った。
坂東さんが、ふふふと笑いながら私に言った。
「水城さん、支社の女子社員って本社に比べて数が少ないから、結構集まったりしてるのよ。また声掛けるわね」
「はい、お願いします!」
良かった、これで顔見知りが出来た。坂東さんはどうやら女子社員の取りまとめ役みたい。ストレートの黒髪が綺麗なお姉様ってイメージだ。紹介してくれた杉本さんに感謝しないと。
そんな感じで、ランチタイムは始終和やかな雰囲気で幕を閉じた。お料理も美味しかったし、またこの店に来よう。
他愛ない話をしながら会社に戻り、ロビーで解散となった。杉本さんに改めてお礼を言うと、「こっちも楽しかったから。また企画するよ」と笑ってくれた。
ふうと息を吐くと、いつの間にか隣に新人が立っていた。
「……ありさ。少し話があるんだ。十五分ほど付き合ってくれないか」
「新人?」
妙に神妙な面持ちの新人に首を傾げたけれど、十五分ぐらいなら大丈夫、と頷いた。新人は私の後ろにいる菅山さんに顔を向けた。
「菅山さん。水城を少しお借りします。この後出ないといけないので」
菅山さんの顔をちらと見ると、少しだけ眉を顰めていた。
「……三十分以内にしろ。水城、システム部に戻るついでに社内メール便を確認して来てくれ」
「分かりました」
菅山さんが立ち去った後、新人に連れられて行ったのは――屋上だった。
屋上庭園の奥――前に私が倒れた場所で新人の足が止まった。ここなら、人気はないし、誰に話を聞かれる事もない。
新人が私を振り返る。目の前に立つ彼を私は見上げた。ざっと吹いた風が、新人の前髪やトレンチコートの裾を揺らしている。
私の髪や、マキシスカートの裾も、同じように揺れていた。フリース素材のジャケットを着ていても、少し肌寒い。
「新人、話って?」
新人の口元がくっと締まった。私を見下ろす瞳に真剣な光が宿る。その瞳の色に、不安な気持ちが広がっていく。
「ありさ」
新人がゆっくりと言葉を紡いだ。
「その前に一つ聞きたい。――さっき言ってた『お兄ちゃんに迎えに来てもらってる』っていうのは、あの事件があったからか?」
「うん、そうだけど――菅山さんが頼んでくれたの」
私が頷くと、新人が微妙な表情をした。
「あれから、危険な目に遭ってないんだな?」
「うん。お兄ちゃんのお陰だと思う」
新人の顔付きがどこか苦々しいものになってるのは、私の気のせい? 新人は深い溜息をついた後、私の目を真っ直ぐに見た。
「ありさ。俺がこんな事言う資格はないっていうのは分かってる。だけど今言わないと――多分一生後悔するから」
新人の視線に、私の息が止まった。心臓が変な鼓動を打ち始める。
「ありさが好きだ」
「……え……?」
新人の口から発せられた言葉を、私は咄嗟に理解出来なかった。
頭の中が真っ白になって、何も考えられない。私は目を大きく見開いた。
(私を……好き……?)
新人が? どうして? だって新人は
りりかを好きだったはずでしょう?
私の疑問を感じ取ったのか、新人が言葉を続けた。
「前にありさに言った通り、俺はりりかを好きだった。だけど、ありさがいなくなって……胸に穴が開いたみたいで。ずっと心の痛みが消えなかった」
新人が私に向ける瞳。その切なそうな瞳の色は、前にはなかったものだ。
「ありさに酷い事をして後悔してた。いなくなって、寂しかった。そして、あの時――ありさが連れ去られそうになった時」
ぐっと新人が右手を握り締めた。
「あの時、分かったんだ。俺はありさに傍にいて欲しいと思ってる、ありさに手を出す奴は、絶対に許せないって」
「あら、と」
新人の右手が私の頬を撫ぜた。その冷たい指の感触に、私は何も言えなくなった。
「……ごめん。今日こんな事を言うつもりはなかったんだ。ありさの信頼を回復してからって思ってた。だけど」
――このまま、何もしなかったら……ありさは他の男に奪われてしまう。
「……そう思ったんだ」
「そんな、こと、」
そんな事ない。そう言おうと思ったけれど、新人が首を横に振ったのを見て口をつぐんだ。
「ありさは可愛くて優しい。好きになる男なんて、それこそいくらでもいる。今日だってそうだ」
「……」
破れそうなくらいの勢いで心臓が脈打ってる。身体が熱いのか冷たいのか、分からない。新人が私の頬から手を離し、すっと頭を下げた。
「ありさ。もう一度、俺を見てくれないか。……頼む」
「新、人……」
私の前で深々と頭を垂れる新人に、掛ける言葉が見つからない。息が出来ない。
本当に? 本当に私の事、好きになってくれたの?
りりかの事、本当に諦められたの?
今新人が嘘を言ってないのは分かる。誠実な人だから。だけど――
新人が泣いているりりかを抱き締めている場面がちらつく。あれはゲーム? それとも……
(――怖い……)
怖い。また新人を好きになるのが。好きになってから、新人がやっぱり私よりもりりかの方が好きだったって気付くのが。
私はぎゅっと自分を抱き締めた。心も頭も……ぐちゃぐちゃになってる。
「ごめ、ん……すぐ、には返事、出来ない……」
ようやく言葉を絞り出すと、新人は顔を上げてじっと私を見つめた。
「それでいい。無理を言ってるのは俺の方だから。ただ……」
新人の瞳に吸い込まれそうになり、また息が苦しくなる。
「俺が好きなのはありさだと、ちゃんと覚えていて欲しいんだ」
「……わ、かった」
掠れ声でそう言うと、新人がほっとしたのか口元を緩めた。どくんと心臓が鳴る。
新人が左手首の腕時計を確認した。その見慣れた仕草にも、胸の奥が痛くなる。
「もう、行こうか」
「う、ん」
一歩先を歩く新人の背中を見つめながら、私はどうしたらいいのか、分からなくなっていた。
「……昨日は祖母が世話になった。ありがとう。それから、これも洗っておいた」
いえ、おかまいなく、とも、運んでいただいてありがとうございました、とも言う暇もなく、さっさと自席に戻っていく菅山さん。私は手渡された紙袋をそっと開けた。
(……あ)
綺麗に折りたたまれたストールだった。鞄に入っていないと思ったら、菅山さんが持っていたのか。
(そのまま返してくれてもよかったのに)
律儀と言うか几帳面と言うか。おかしくて、ぷぷっと吹き出してしまった。
(さあ、今日も頑張りますか!)
紙袋をそのまま机の引き出しに仕舞い込み、よし、と気合を入れてパソコンを立ち上げた。
出社してくる人に挨拶をしながら、今日の予定表を確認した。
そうして日常が始まると、余計な事を考えている暇もない。
その方がかえって良かった。今でも見知らぬ男性が近付いてくると、身体が強張ってしまうけれど、仕事中は大丈夫だ。
(そう言えば、菅山さんも)
おばあさんが面会に来てから、菅山さんもちゃんと休むようになったようだ。ランチのお誘いも何度かに一度は断っているし、会社帰りのデートの回数も減ったと噂で聞いた。
ここ十日程で目の下のくまもほぼなくなったし、顔色も良くなってきている。秘かにほっとした。やっぱりおばあさんの力ってすごいなあ。
(無理しないで欲しいよね)
おばあさんも心配していた事だし、身体には十分気を付けて欲しい。そんな事は本人には言えないけれど、心の中で思う分には構わないだろう。
「水城さん。この前の資料ありがとう。綺麗にまとめてくれて助かったよ」
システム部に来ていた杉本さんが、いつの間にか私の席の隣に立っていた。私は彼を見上げ、にっこりと笑った。
「いえ、こちらの仕事ですから当たり前です」
頭を掻いてる杉本さんは、飲み会を仕切ったり、社内の取りまとめをしてくれる、ムードメーカー的ポジションの人だ。がちっとした体形でスポーツマンタイプだけど、人への気遣いも細やかなところは、さすが営業だと思う。
「水城さんは昼弁当作ってるんだっけ?」
「はい。前の夜の残り物だったりしますが」
一人だと食べきれないから、残ったおかずはお弁当にしてるのよね。
「いやあ、その」
杉本さんがちらと奥の方を見てから言った。
「営業の若い奴らがさ、水城さんと飯食いたいって言ってて。夜は困るだろうから、ランチでも一緒にどうかな?」
「え?」
私が目を瞬くと、杉本さんがくすりと笑った。
「水城さんと仲良くなりたいって男、多いんだよ。でも忙しそうだから声掛けづらいって。それで、顔見知りの俺に白羽の矢が立ったってワケ」
「え、っと」
ぽかんと口を開けたまま固まった私に、杉本さんがぶぶっと吹き出した。
「なんだ、水城さん自覚無いんだ。本社から可愛い子が来たって評判になってるんだよ」
「ええっ!?」
かっと頬が熱くなる。そんな事、言われた事なんて、今まで一度だってなかった。
(いつだって、可愛いって言われるのはりりかの方だったのに)
ふわふわの髪に大きな瞳。祐希と新人もいつだってりりかの方を向いていた。本社でも、りりかは人気者だったし。
杉本さんが机に手を付いて、私の顔を覗き込んできた。
「ま、そんな訳だから、一回ぐらいどう? 当然こっちのおごりで」
「あ、あの」
にっこり笑っている杉本さんから、圧力を感じる。知らない男性とランチ、というのはまだちょっと怖い。でもせっかく声を掛けてくれたのに、と思うと無下に断れない。
(そうだ、どうせなら)
私は思い切って杉本さんに言ってみた。
「おごるとかはいいので、支社の女性社員の方も誘ってもらえるなら。……仕事が忙しくて、他の部署の方ともほとんど話出来てなくて。女性の知り合いが欲しいなって思っていたところだったんです」
杉本さんの顔がぱっと明るくなった。
「それくらいなら、お安い御用! 分かった、何人か声掛けてみるよ。じゃあ、決まったら連絡するから」
ひらひらと右手を振ってシステム部から出て行く杉本さんの後ろ姿を見送って、ふうと溜息をつく。
「少しずつ慣らした方がいいわよね……」
「無理はするな」
「ふえっ!?」
いきなりの声に驚いて右側を見ると、いつの間にか菅山さんが机の横にいた。じろりと冷たい目付きで見下ろされ、口元が強張った。
「まだ怖いんだろう。杉本にも無理はさせないように言っておく」
それだけ言うと、菅山さんはさっと机から離れて、システム部から出て行った。
「……」
(気を遣ってくれてる……のよね。ぶっきらぼうだけど)
――あの子ったら、あまり愛想のよい方じゃないでしょう? だから誤解される事が多くて……本当は優しい子なのに
(十分優しいと思いますよ、志乃さん)
志乃さんの優しい笑顔を思い浮かべながら、私は仕事に戻った。
杉本さんが再び私の席に来たのは、なんとその日の夕方。さすがデキる営業は仕事が早い、と感心してしまう。
「ちゃんとメンバーも厳選したからな! 大丈夫!」と親指を立てる杉本さんに、苦笑いしか返せなかった。
「明日、早めに出てランチセットにしよう。いい店知ってるんだよ。会社から近いし、予約するから楽しみにしてて」
杉本さんが悪戯っぽく笑う。私もつられて笑いながら、杉本さんに頭を下げた。
「はい、分かりました。ありがとうございます、杉本さん」
「じゃあ」
手を振って部屋を出て行く杉本さんの後ろ姿を見送ってから、私は席を立ち、プリンターの方へと歩いて行った。
***
杉本さんが選んでくれた店は、会社から歩いて五分ほどの場所にある、一軒家を改装したレストランだった。艶のある板張りの壁が印象的で、レトロな喫茶店の雰囲気がした。メニューも洋食が多く、ここのオーナーシェフは元ホテルのコックだと聞いて納得した。杉本さんが予約してくれたランチセットは、メインは魚か肉料理、そしてサラダとスープ、パンがついていて、お手頃価格だった。
予約しないとすぐ席が埋まるのも分かる気がする。
総勢八名のメンバーで、四人ずつ向かい合わせに座った。男女入り混じって席に着き、一人ずつ自己紹介をしてからランチタイムとなった。
女性は、営業補佐の井上さんと坂東さん、そして総務部の加納さんの三人。井上さんと加納さんは私の一つ上、坂東さんはかなりベテランらしい。
「本当、水城さんの周りってイケメンばかりよね~羨ましい!」
私の真正面に座った井上さんが、私と私の両隣に視線を彷徨わせながら言った。
「そ、そう、ですか」
スズキのポワレをフォークで食べながら、私は愛想笑いを浮かべる。
「ねえ、水城さんとは同期だって本当? 久遠くん」
井上さんの質問に、私の左隣に座った新人がにこやかに答える。
「ええ。ありさとは大学からの同期で。会社も偶然同じところに就職したんですよ」
「いいなあー、私も久遠くんみたいな同期欲しかったー」
「そうですか?」
新人はにこやかな営業モードになっている。井上さんと穏やかに話が進んでいた。
「……」
私は黙ってグラスからミネラルウォーターを飲んだ。
(杉本さんにしたら、気を利かせてくれたんだろうけど……)
一階ロビーで集合した時、メンバーの中に新人の姿を見つけた私は思わず「え!?」と叫んでしまった。グレー地に白いストライプが入ったスーツにトレンチコートを着た新人は、私を見てにこっと笑う。
『今日出張で来たら、杉本さんに誘われたんだ。ありさが支社のメンバーに馴染むようにランチ企画したからお前も来いって』
『そ、そうなんだ』
胸が一瞬詰まった。新人が気を遣うような目で私を見てる。大丈夫、と私は少し笑ってみせた。
向かって井上さんの二つ右隣、加納さんがふふふと笑いながら声を掛けてきた。
「そう言えば、この間のランチも楽しかったですよね? 菅山さん」
私の右隣に座っている菅山さんが淀みなく返す。
「そうですね。中々美味しかった」
「……」
菅山さんも外出モードだ。黒に近いグレーのスーツを着ている彼の微笑みも、新人に負けず劣らず人目を惹く。
私の向かい側の席は、左から営業の高田くん、井上さん、杉本さん、そして加納さん。私側の席は、左から新人、私、菅山さん、坂東さんだ。
……な、なんと言うか。
(この二人に挟まれて、心安らげる気がしない……!)
杉本さんから『水城に無理させるなって言うからさ、心配ならお前も来いよと言ったら引っ掛かった』って聞いた時は、目が点になった。
新人や菅山さんが参加したから、営業は早い者勝ちで高田くんだけになったって杉本さんが言ってたっけ……。
(ううう……居心地が悪い……)
まあ、井上さんや加納さん、そして坂東さんは、何も気にした様子もなく私や新人、菅山さんに話し掛けてるから、関係ないのかもしれない。
「水城さん。来週末営業でBBQやろうって話あるんですけど、一緒にどうですか?」
「高田くん」
高田くんは入社一年目らしい。まだ初々しくて、少年っぽい雰囲気の人だ。明るい茶色のふわふわの髪に背も新人や菅山さんよりも低くて、弟がいたらこんな感じかなあって思う。
「皆、水城さん来てくれたら歓迎すると思いますよ? 今日だって俺、随分先輩達に羨ましがられて」
「……へえ」
(あ、新人?)
何なんだろう、その低い声は。新人の笑顔がコワイ気がするのは何故?
「帰りが暗くなったら心配だから、遠出は状況が落ち着くまで避けておいた方がいいんじゃないか?」
「そうですか……」
見るからにしょぼんとしてしまった高田くんに、慌てて声を掛ける。
「あ、あの。ランチなら大丈夫ですから、また今度にでも」
ぱっと高田くんの顔が輝いた。本当に弟みたい。
「はい! 楽しみにしてます!」
坂東さんが私の方に身を乗り出して言った。
「水城さん、この子もお勧めよ~。新人の中でぴか一だし、気も利くしね?」
「か、揶揄わないで下さい、坂東さんっ」
あ、真っ赤になってる。何だか可愛いなあ。新人の頃ってこんなのだったっけ。
「そうそう、前から聞きたかったんだけど、水城さん」
坂東さんがさらに身を乗り出す。
「毎日迎えに来てくれてるイケメン、水城さんの彼氏?」
新人がひゅっと息を呑む音が聞こえた。
「え」
呆気にとられた私に、更に加納さんが畳みかけてきた。
「あー私も聞きたかった! すっごいスポーツマンって感じの男子よね? 短髪で笑顔が爽やかな」
お兄ちゃんの事? 私は首を傾げたまま言った。
「おにいちゃ……彼は幼馴染よ。姉の同級生なの。小さい頃からお兄ちゃんって呼んでて、向こうも私を妹みたいに可愛がってくれて。物騒な事件があったから、念のためにって迎えに来てくれてるの」
「水城さんっ」
加納さんが手を合わせて私を拝み始めた。
「それだったら、紹介してくれない? 彼、すっごく私のタイプなのっ」
(お兄ちゃんを?)
お兄ちゃんはみすずお姉ちゃんを好きなはず……。
加納さんは、はきはきしてて明るいし、見掛けはりりかみたいに可愛いし、お兄ちゃんが嫌うタイプではないと思うけれど。
(……無理強いはしたくないよね)
「彼に聞いてからでいいですか? もしかしたら、好きな人いるかも知れないし」
そう言うと、加納さんは「もちろんよ! ダメ元で言ってるだけだから。水城さんが嫌なら別にいいし」とあっけらかんと笑ってくれた。
こういうサバサバしたところ、お姉ちゃんに似てるなあ。もしかしたら、もしかする……かも。
(今日にでも聞いてみよう)
「水城、戸津さんは好意で迎えに来てくれてるのだから、無理強いするなよ」
耳元で菅山さんがぼそっと囁いた。低音ボイスに一瞬息が止まる。分かってます、と私はこくこくと首を縦に振った。
坂東さんが、ふふふと笑いながら私に言った。
「水城さん、支社の女子社員って本社に比べて数が少ないから、結構集まったりしてるのよ。また声掛けるわね」
「はい、お願いします!」
良かった、これで顔見知りが出来た。坂東さんはどうやら女子社員の取りまとめ役みたい。ストレートの黒髪が綺麗なお姉様ってイメージだ。紹介してくれた杉本さんに感謝しないと。
そんな感じで、ランチタイムは始終和やかな雰囲気で幕を閉じた。お料理も美味しかったし、またこの店に来よう。
他愛ない話をしながら会社に戻り、ロビーで解散となった。杉本さんに改めてお礼を言うと、「こっちも楽しかったから。また企画するよ」と笑ってくれた。
ふうと息を吐くと、いつの間にか隣に新人が立っていた。
「……ありさ。少し話があるんだ。十五分ほど付き合ってくれないか」
「新人?」
妙に神妙な面持ちの新人に首を傾げたけれど、十五分ぐらいなら大丈夫、と頷いた。新人は私の後ろにいる菅山さんに顔を向けた。
「菅山さん。水城を少しお借りします。この後出ないといけないので」
菅山さんの顔をちらと見ると、少しだけ眉を顰めていた。
「……三十分以内にしろ。水城、システム部に戻るついでに社内メール便を確認して来てくれ」
「分かりました」
菅山さんが立ち去った後、新人に連れられて行ったのは――屋上だった。
屋上庭園の奥――前に私が倒れた場所で新人の足が止まった。ここなら、人気はないし、誰に話を聞かれる事もない。
新人が私を振り返る。目の前に立つ彼を私は見上げた。ざっと吹いた風が、新人の前髪やトレンチコートの裾を揺らしている。
私の髪や、マキシスカートの裾も、同じように揺れていた。フリース素材のジャケットを着ていても、少し肌寒い。
「新人、話って?」
新人の口元がくっと締まった。私を見下ろす瞳に真剣な光が宿る。その瞳の色に、不安な気持ちが広がっていく。
「ありさ」
新人がゆっくりと言葉を紡いだ。
「その前に一つ聞きたい。――さっき言ってた『お兄ちゃんに迎えに来てもらってる』っていうのは、あの事件があったからか?」
「うん、そうだけど――菅山さんが頼んでくれたの」
私が頷くと、新人が微妙な表情をした。
「あれから、危険な目に遭ってないんだな?」
「うん。お兄ちゃんのお陰だと思う」
新人の顔付きがどこか苦々しいものになってるのは、私の気のせい? 新人は深い溜息をついた後、私の目を真っ直ぐに見た。
「ありさ。俺がこんな事言う資格はないっていうのは分かってる。だけど今言わないと――多分一生後悔するから」
新人の視線に、私の息が止まった。心臓が変な鼓動を打ち始める。
「ありさが好きだ」
「……え……?」
新人の口から発せられた言葉を、私は咄嗟に理解出来なかった。
頭の中が真っ白になって、何も考えられない。私は目を大きく見開いた。
(私を……好き……?)
新人が? どうして? だって新人は
りりかを好きだったはずでしょう?
私の疑問を感じ取ったのか、新人が言葉を続けた。
「前にありさに言った通り、俺はりりかを好きだった。だけど、ありさがいなくなって……胸に穴が開いたみたいで。ずっと心の痛みが消えなかった」
新人が私に向ける瞳。その切なそうな瞳の色は、前にはなかったものだ。
「ありさに酷い事をして後悔してた。いなくなって、寂しかった。そして、あの時――ありさが連れ去られそうになった時」
ぐっと新人が右手を握り締めた。
「あの時、分かったんだ。俺はありさに傍にいて欲しいと思ってる、ありさに手を出す奴は、絶対に許せないって」
「あら、と」
新人の右手が私の頬を撫ぜた。その冷たい指の感触に、私は何も言えなくなった。
「……ごめん。今日こんな事を言うつもりはなかったんだ。ありさの信頼を回復してからって思ってた。だけど」
――このまま、何もしなかったら……ありさは他の男に奪われてしまう。
「……そう思ったんだ」
「そんな、こと、」
そんな事ない。そう言おうと思ったけれど、新人が首を横に振ったのを見て口をつぐんだ。
「ありさは可愛くて優しい。好きになる男なんて、それこそいくらでもいる。今日だってそうだ」
「……」
破れそうなくらいの勢いで心臓が脈打ってる。身体が熱いのか冷たいのか、分からない。新人が私の頬から手を離し、すっと頭を下げた。
「ありさ。もう一度、俺を見てくれないか。……頼む」
「新、人……」
私の前で深々と頭を垂れる新人に、掛ける言葉が見つからない。息が出来ない。
本当に? 本当に私の事、好きになってくれたの?
りりかの事、本当に諦められたの?
今新人が嘘を言ってないのは分かる。誠実な人だから。だけど――
新人が泣いているりりかを抱き締めている場面がちらつく。あれはゲーム? それとも……
(――怖い……)
怖い。また新人を好きになるのが。好きになってから、新人がやっぱり私よりもりりかの方が好きだったって気付くのが。
私はぎゅっと自分を抱き締めた。心も頭も……ぐちゃぐちゃになってる。
「ごめ、ん……すぐ、には返事、出来ない……」
ようやく言葉を絞り出すと、新人は顔を上げてじっと私を見つめた。
「それでいい。無理を言ってるのは俺の方だから。ただ……」
新人の瞳に吸い込まれそうになり、また息が苦しくなる。
「俺が好きなのはありさだと、ちゃんと覚えていて欲しいんだ」
「……わ、かった」
掠れ声でそう言うと、新人がほっとしたのか口元を緩めた。どくんと心臓が鳴る。
新人が左手首の腕時計を確認した。その見慣れた仕草にも、胸の奥が痛くなる。
「もう、行こうか」
「う、ん」
一歩先を歩く新人の背中を見つめながら、私はどうしたらいいのか、分からなくなっていた。
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