2 / 27
[2] 天才
しおりを挟む
3秒ほど意識が飛んでた。意識が飛んでたから正確なところはわからないけど体感3秒ほどだったということ。「えっと、もう1回言ってもらってもいいかな?」
「いーよー」
りっちゃんはまた一旦私に背中を向ければ、くるりと振り返って金色の髪をふぁさっと広げると、青い目をきらきら輝かせて言った。
「私、冒険者になる!」
見事な再現。そこまでやってくれとは思ってなかったのだけれど、かわいかったのでよしとする。
そして私の聞き間違いとかでなくてりっちゃんはやっぱり『冒険者になる』と言っていた。
耐性がついてたおかげで2度目は気を失わずにすんだ。それにしても冒険者、冒険者かー。
私の人生プランが一瞬にして音を立てて崩れだした。まだ修正は可能だろうか、頭をフル回転させる。
そもそもりっちゃんは天才である。
旅の占い師が街にやってきたことがあっておもしろそうだから2人で見に行った。まあ私はそこまで興味なくて、りっちゃんがあんまり行こう行こうと言うのでついてっただけなんだけど。
その占い師はずいぶん繁盛していて私たち以外にもたくさん人が集まっていたにもかかわらず、その中で一目見ただけなのに、あと金も払ってないのに、彼女はりっちゃんのことをまっすぐ指さし言った。
『あなたは将来とてつもない英雄になる相を持ってるわね』
重ねて言うが私のことではない、りっちゃんのことである。ちなみに私はその隣にいたのだけれど特に何も言われなかった(別に残念とかではない)。
その占い結果について私は特に驚かなかった。
りっちゃんが特別な何かに愛された存在であることは傍にいる私が一番理解している。私の幼なじみはすごい娘なのだ。
どっちかというとそれを一目で見抜ける占い師がいたということにちょっと驚いた。インチキばかりやってる偽物だけじゃなくてちゃんと本物の占い師というのもどうもこの世にはいるらしい。
当のりっちゃん本人はと言えば私がすごいのは私なんだから当たり前じゃんと言った感じで少しは喜んでいたけど3日たてば忘れていた。
今となってはそんなことがあったことすら覚えてないと思う。
それから魔法測定の時のこと。
6歳になってすぐの頃、魔法適性を計測することになった。私は私になんか秘められた力があって大変なことになるかもとちょっと心配したけど問題なかった。
風属性の適性が私にあることがわかって、それはそこそこの適性であってそれ一本で食ってくことはできなくても、有効に使えば人生をわたっていくのに便利というような具合のものだった。
問題はやはりりっちゃんの方で、りっちゃんが適性測定器具に魔力を流し込んでみたところ、その丸い鏡みたいな器具は一瞬について凍りついて砕け散ってしまった。
その場にいたのは私とりっちゃんと院長先生だけで、院長先生は「ずいぶんと古いものだったからなあ。しょうがないしょうがない」と笑っていた。
けれども先生がほんの少しだけ困った顔をしたのを私は見逃してなくて、ほどなくして私は先生に呼ばれてこのことは黙っているようにと言われた。
りっちゃんがものすごい才能を持っていることがばれたら、どこか遠いところに連れてかれるんじゃないかと思っていたから、それに関して私は先生と同意見で即座にうなずいた。
まありっちゃんはやっぱりりっちゃんで、そのあたりのことも特に気にすることなく、変わったことと言えば、遊ぶときに水を出したり氷の剣を作ったり、そういうことが増えただけだった。
ともかくかようにしてりっちゃんは才能にあふれてるかわいいかわいい女の子なのだけれど、それはそれとして冒険者はとてもとてもとーっても危険な職業なのである。
必要なら感覚のきかない樹海やら罠たっぷりの迷宮やらに入っていかなくちゃいけないし、善悪のタガがはずれた山賊やらそもそも予測不能の魔物やらの相手もしなくちゃいけない。死と隣り合わせだ。
いくらりっちゃんが『将来とてつもない英雄になる』としても万が一ということはあるし、死ななくってもひどい目にあう可能性もあるのだ(エロ同人みたいに!)。
結論。私はりっちゃんに冒険者になってほしくない。
――と、そのようなことを私は内面百面相、外面冷静沈着を装って考えていた。
「ちなみになんで冒険者になりたいのか理由とか聞いてもいいのかな?」
多分昨日読んだ絵本でめっちゃかっこよかったとか、ものすごく単純な理由だと思うけど。
「昨日読んだ絵本でめっちゃかっこよかったから!」
思った通りにぴったり単純な理由だった。しかし単純故に言葉で説得するのは非常に難しいかもしれなかった。
だいたい私は余計なこと言ってりっちゃんに嫌われるのはイヤだ! ということで考えに考えた末に私はその役目を他人に丸投げすることにした。
やわらかい微笑を表にはりつけて、いつもの少しだけ年上のお姉さんの風を装って私は言った。
「私はいいと思うけど、まずは院長先生に相談してみるのはどうかな? 私はいいと思うけどね!」
「いーよー」
りっちゃんはまた一旦私に背中を向ければ、くるりと振り返って金色の髪をふぁさっと広げると、青い目をきらきら輝かせて言った。
「私、冒険者になる!」
見事な再現。そこまでやってくれとは思ってなかったのだけれど、かわいかったのでよしとする。
そして私の聞き間違いとかでなくてりっちゃんはやっぱり『冒険者になる』と言っていた。
耐性がついてたおかげで2度目は気を失わずにすんだ。それにしても冒険者、冒険者かー。
私の人生プランが一瞬にして音を立てて崩れだした。まだ修正は可能だろうか、頭をフル回転させる。
そもそもりっちゃんは天才である。
旅の占い師が街にやってきたことがあっておもしろそうだから2人で見に行った。まあ私はそこまで興味なくて、りっちゃんがあんまり行こう行こうと言うのでついてっただけなんだけど。
その占い師はずいぶん繁盛していて私たち以外にもたくさん人が集まっていたにもかかわらず、その中で一目見ただけなのに、あと金も払ってないのに、彼女はりっちゃんのことをまっすぐ指さし言った。
『あなたは将来とてつもない英雄になる相を持ってるわね』
重ねて言うが私のことではない、りっちゃんのことである。ちなみに私はその隣にいたのだけれど特に何も言われなかった(別に残念とかではない)。
その占い結果について私は特に驚かなかった。
りっちゃんが特別な何かに愛された存在であることは傍にいる私が一番理解している。私の幼なじみはすごい娘なのだ。
どっちかというとそれを一目で見抜ける占い師がいたということにちょっと驚いた。インチキばかりやってる偽物だけじゃなくてちゃんと本物の占い師というのもどうもこの世にはいるらしい。
当のりっちゃん本人はと言えば私がすごいのは私なんだから当たり前じゃんと言った感じで少しは喜んでいたけど3日たてば忘れていた。
今となってはそんなことがあったことすら覚えてないと思う。
それから魔法測定の時のこと。
6歳になってすぐの頃、魔法適性を計測することになった。私は私になんか秘められた力があって大変なことになるかもとちょっと心配したけど問題なかった。
風属性の適性が私にあることがわかって、それはそこそこの適性であってそれ一本で食ってくことはできなくても、有効に使えば人生をわたっていくのに便利というような具合のものだった。
問題はやはりりっちゃんの方で、りっちゃんが適性測定器具に魔力を流し込んでみたところ、その丸い鏡みたいな器具は一瞬について凍りついて砕け散ってしまった。
その場にいたのは私とりっちゃんと院長先生だけで、院長先生は「ずいぶんと古いものだったからなあ。しょうがないしょうがない」と笑っていた。
けれども先生がほんの少しだけ困った顔をしたのを私は見逃してなくて、ほどなくして私は先生に呼ばれてこのことは黙っているようにと言われた。
りっちゃんがものすごい才能を持っていることがばれたら、どこか遠いところに連れてかれるんじゃないかと思っていたから、それに関して私は先生と同意見で即座にうなずいた。
まありっちゃんはやっぱりりっちゃんで、そのあたりのことも特に気にすることなく、変わったことと言えば、遊ぶときに水を出したり氷の剣を作ったり、そういうことが増えただけだった。
ともかくかようにしてりっちゃんは才能にあふれてるかわいいかわいい女の子なのだけれど、それはそれとして冒険者はとてもとてもとーっても危険な職業なのである。
必要なら感覚のきかない樹海やら罠たっぷりの迷宮やらに入っていかなくちゃいけないし、善悪のタガがはずれた山賊やらそもそも予測不能の魔物やらの相手もしなくちゃいけない。死と隣り合わせだ。
いくらりっちゃんが『将来とてつもない英雄になる』としても万が一ということはあるし、死ななくってもひどい目にあう可能性もあるのだ(エロ同人みたいに!)。
結論。私はりっちゃんに冒険者になってほしくない。
――と、そのようなことを私は内面百面相、外面冷静沈着を装って考えていた。
「ちなみになんで冒険者になりたいのか理由とか聞いてもいいのかな?」
多分昨日読んだ絵本でめっちゃかっこよかったとか、ものすごく単純な理由だと思うけど。
「昨日読んだ絵本でめっちゃかっこよかったから!」
思った通りにぴったり単純な理由だった。しかし単純故に言葉で説得するのは非常に難しいかもしれなかった。
だいたい私は余計なこと言ってりっちゃんに嫌われるのはイヤだ! ということで考えに考えた末に私はその役目を他人に丸投げすることにした。
やわらかい微笑を表にはりつけて、いつもの少しだけ年上のお姉さんの風を装って私は言った。
「私はいいと思うけど、まずは院長先生に相談してみるのはどうかな? 私はいいと思うけどね!」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい!
ももがぶ
ファンタジー
猫たちと布団に入ったはずが、気がつけば異世界転生!
せっかくの異世界。好き放題に思いつくままモノ作りを極めたい!
魔法アリなら色んなことが出来るよね。
無自覚に好き勝手にモノを作り続けるお話です。
第一巻 2022年9月発売
第二巻 2023年4月下旬発売
第三巻 2023年9月下旬発売
※※※スピンオフ作品始めました※※※
おもちゃ作りが楽しすぎて!!! ~転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい! 外伝~
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

転生しても山あり谷あり!
tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」
兎にも角にも今世は
“おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!”
を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる