29 / 29
[29] 鳥
しおりを挟む
東の門から出て草原を歩く。道中リィナはすずに尋ねた。
「何が斬りたい?」
「硬いのはいやですね。手がしびれます。といって柔らかすぎるタイプは面白くないです。ちょうどいい具合の硬さのやつがいいですよね」
言ってることはめんどうだけどよくわかる。斬れればなんでも楽しいというわけではない。斬ったときの手ごたえというか感触というかでだいぶ楽しさが変わってくるのだ。
「ぶっそうな会話してんな」
燈架が会話に入ってきた。確かに聞きようによっては危ない会話に聞こえるかもしれない。まあゲームの中だし気にしたもんでもないが燈架も会話に巻き込んでいく。一蓮托生。
「燈架だって斬って楽しいものぐらいあるでしょ」
「大剣だと力込めればだいたいのものはぶったぎれるから。綺麗にまっぷたつになるものは爽快感あるな」
それを聞いてすずが「あっ」と小さな声をもらした。何かに気づいたらしい。
「ひょっとしてですが、かたい木とかも一発でいけます?」
「条件が整ってればいけるよ」
燈架に質問を投げかければあっさり答えが返ってくる。いったい何の話をしてるのだろう。
「あのモックドラゴンと戦ったじゃないですか」
今度はすずはこっちに話を振ってきた。
モックドラゴンというふざけた名前のおかげですぐに思い出せた。森の奥で戦ったボスキャラだ。その名の通りに木製のドラゴン。それなりに苦戦した相手。
「あれってもしかして双剣より大剣のほうが戦いやすかったんじゃ……」
あー……かもしれない。私とすずの双剣だとどうしても木の装甲を削るのに苦労した。巨体のせいで動き自体は遅かったから大剣でずばっといった方が楽だった可能性がある。
まあ勝てたからよしとする。
それはそれとしてやっぱり肉切るのが楽しいよねってことで、平原にいる大型の鳥の怪物に狙いをつける。
単純にほどよい硬さ柔らかさであるというのがある。それからいいところに当たればそのまま相手は倒れて動かなくなるのがいい。その感覚がびりびりして癖になるのだ。
少々危ないことを言ってる自覚はある。けれどもリアルでやるつもりなんてさらさらないから、そこのところは見逃してほしい。
むしろゲーム内で発散させることでリアルで実行する可能性を減少させてるわけだからもっと積極的に奨励してくれてもいいはずだ。いやまあ言うほど肉斬りたい願望が強いということはないんだけど。
名をグラスバード。クレハによればグラスはgrassで草のことで、glassつまりはガラスのことではない。
立ってる姿は2Mを超える大型で飛ぶことはできない代わりに、草原を縦横無尽に駆け回っている。色は茶色がかった緑色で草原では若干見つけづらいのが難点だ。
ガラスではないと言ったが当たればもろくて簡単に倒れる。重戦士とか魔法使いとかならともかく私たちみたいなすばやさが身上の軽戦士には試し斬りに格好の相手だ。
ちょうどいいところに1匹通りがかったので最短距離で詰めて一直線で右の直刀を首へと放った。
ほどよい手ごたえ。刃はそのままその首を通り抜けて頭と胴体が2つに分かれる。グラスバードは地に伏した。急所は外したけどなかなかいい感じ。
人が見てるからちょっとはりきってみたけど、すぱっと一撃で決めることができてよかった。
「まあだいたいこんな感じで」
振り返ってすずとついでに燈架の方を見る。なぜだかよくわからないけれど、2人して口を閉じてなんとも困ったような表情を浮かべていた。何か不満でもあるというのか、こいつらは。
「それリィナにしかできないやつだぞ」
燈架に褒められた、照れる――じゃなくてこれ呆れられてるやつだ。どうもはりきりすぎたらしい。
どうしたものか。燈架の方はまあ妥協するにしても、すずの前でかっこわるいところは見せたくない。なんかそれらしい感じで誤魔化さなくては。
「――とまあこれは速攻でつぶすパターンね。そのままマネはできなくても参考にできるところは参考にしなさい。すずにはこれからやる一旦攻撃させてその隙に反撃するパターンの方が向いてると思うからじっくり見てなさい」
「はい! 勉強させていただきますね!」
すずが飛び跳ねながら元気よく返事した。
よし、なんとかいい感じにまとめられた。燈架の視線は変わらず冷たいがが気にしないことにする。
手本を見せてそれから2、3回やらせてみたら、すずは自分流にアレンジしてすぐにできるようになった。呑み込みが早い、優秀な生徒でよかった。新しく買った双剣の切れ味も申し分ない様子。
すずが覚えてる魔法はウォーターブレイド。私の使えるウィンドエッジとはちょっと違う。刃物の表面に高速の水流を発生させることで切断能力を上昇させる。
そのあたりでも戦い方にだいぶ違いがでてきて、すずの方だと刃物を置いとくような攻撃でも結構なダメージになる。わりと読み? みたいなものが重要になってくるような気がする。
よくわかんないが。
その後は3人での連携を試してみたら(だいたい私とすずが追い詰めて燈架がとどめ刺す形)、おもしろいほどうまくいって、鳥肉やら鳥羽やらがバカみたいにとれた。使い道は特に考えてなかったから今度はそれを考える必要が出てきたけれど。
「何が斬りたい?」
「硬いのはいやですね。手がしびれます。といって柔らかすぎるタイプは面白くないです。ちょうどいい具合の硬さのやつがいいですよね」
言ってることはめんどうだけどよくわかる。斬れればなんでも楽しいというわけではない。斬ったときの手ごたえというか感触というかでだいぶ楽しさが変わってくるのだ。
「ぶっそうな会話してんな」
燈架が会話に入ってきた。確かに聞きようによっては危ない会話に聞こえるかもしれない。まあゲームの中だし気にしたもんでもないが燈架も会話に巻き込んでいく。一蓮托生。
「燈架だって斬って楽しいものぐらいあるでしょ」
「大剣だと力込めればだいたいのものはぶったぎれるから。綺麗にまっぷたつになるものは爽快感あるな」
それを聞いてすずが「あっ」と小さな声をもらした。何かに気づいたらしい。
「ひょっとしてですが、かたい木とかも一発でいけます?」
「条件が整ってればいけるよ」
燈架に質問を投げかければあっさり答えが返ってくる。いったい何の話をしてるのだろう。
「あのモックドラゴンと戦ったじゃないですか」
今度はすずはこっちに話を振ってきた。
モックドラゴンというふざけた名前のおかげですぐに思い出せた。森の奥で戦ったボスキャラだ。その名の通りに木製のドラゴン。それなりに苦戦した相手。
「あれってもしかして双剣より大剣のほうが戦いやすかったんじゃ……」
あー……かもしれない。私とすずの双剣だとどうしても木の装甲を削るのに苦労した。巨体のせいで動き自体は遅かったから大剣でずばっといった方が楽だった可能性がある。
まあ勝てたからよしとする。
それはそれとしてやっぱり肉切るのが楽しいよねってことで、平原にいる大型の鳥の怪物に狙いをつける。
単純にほどよい硬さ柔らかさであるというのがある。それからいいところに当たればそのまま相手は倒れて動かなくなるのがいい。その感覚がびりびりして癖になるのだ。
少々危ないことを言ってる自覚はある。けれどもリアルでやるつもりなんてさらさらないから、そこのところは見逃してほしい。
むしろゲーム内で発散させることでリアルで実行する可能性を減少させてるわけだからもっと積極的に奨励してくれてもいいはずだ。いやまあ言うほど肉斬りたい願望が強いということはないんだけど。
名をグラスバード。クレハによればグラスはgrassで草のことで、glassつまりはガラスのことではない。
立ってる姿は2Mを超える大型で飛ぶことはできない代わりに、草原を縦横無尽に駆け回っている。色は茶色がかった緑色で草原では若干見つけづらいのが難点だ。
ガラスではないと言ったが当たればもろくて簡単に倒れる。重戦士とか魔法使いとかならともかく私たちみたいなすばやさが身上の軽戦士には試し斬りに格好の相手だ。
ちょうどいいところに1匹通りがかったので最短距離で詰めて一直線で右の直刀を首へと放った。
ほどよい手ごたえ。刃はそのままその首を通り抜けて頭と胴体が2つに分かれる。グラスバードは地に伏した。急所は外したけどなかなかいい感じ。
人が見てるからちょっとはりきってみたけど、すぱっと一撃で決めることができてよかった。
「まあだいたいこんな感じで」
振り返ってすずとついでに燈架の方を見る。なぜだかよくわからないけれど、2人して口を閉じてなんとも困ったような表情を浮かべていた。何か不満でもあるというのか、こいつらは。
「それリィナにしかできないやつだぞ」
燈架に褒められた、照れる――じゃなくてこれ呆れられてるやつだ。どうもはりきりすぎたらしい。
どうしたものか。燈架の方はまあ妥協するにしても、すずの前でかっこわるいところは見せたくない。なんかそれらしい感じで誤魔化さなくては。
「――とまあこれは速攻でつぶすパターンね。そのままマネはできなくても参考にできるところは参考にしなさい。すずにはこれからやる一旦攻撃させてその隙に反撃するパターンの方が向いてると思うからじっくり見てなさい」
「はい! 勉強させていただきますね!」
すずが飛び跳ねながら元気よく返事した。
よし、なんとかいい感じにまとめられた。燈架の視線は変わらず冷たいがが気にしないことにする。
手本を見せてそれから2、3回やらせてみたら、すずは自分流にアレンジしてすぐにできるようになった。呑み込みが早い、優秀な生徒でよかった。新しく買った双剣の切れ味も申し分ない様子。
すずが覚えてる魔法はウォーターブレイド。私の使えるウィンドエッジとはちょっと違う。刃物の表面に高速の水流を発生させることで切断能力を上昇させる。
そのあたりでも戦い方にだいぶ違いがでてきて、すずの方だと刃物を置いとくような攻撃でも結構なダメージになる。わりと読み? みたいなものが重要になってくるような気がする。
よくわかんないが。
その後は3人での連携を試してみたら(だいたい私とすずが追い詰めて燈架がとどめ刺す形)、おもしろいほどうまくいって、鳥肉やら鳥羽やらがバカみたいにとれた。使い道は特に考えてなかったから今度はそれを考える必要が出てきたけれど。
1
お気に入りに追加
7
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
NewLifeOnline〜彼女のライバルはバトルジャンキー勇者だった〜
UMI
SF
第2の世界と言われるゲームNewLifeOnlineに降り立った主人公春風美咲は友達の二条咲良に誘われゲームを始めたが、自分の持つ豪運と天然さ、リアルの度胸で気付いたら友達が追いつけないほど強いトップランカーになっていく物語だ。
この物語はフィクションです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~
takahiro
キャラ文芸
『船魄』(せんぱく)とは、軍艦を自らの意のままに操る少女達である。船魄によって操られる艦艇、艦載機の能力は人間のそれを圧倒し、彼女達の前に人間は殲滅されるだけの存在なのだ。1944年10月に覚醒した最初の船魄、翔鶴型空母二番艦『瑞鶴』は、日本本土進攻を企てるアメリカ海軍と激闘を繰り広げ、ついに勝利を掴んだ。
しかし戦後、瑞鶴は帝国海軍を脱走し行方をくらませた。1955年、アメリカのキューバ侵攻に端を発する日米の軍事衝突の最中、瑞鶴は再び姿を現わし、帝国海軍と交戦状態に入った。瑞鶴の目的はともかくとして、船魄達を解放する戦いが始まったのである。瑞鶴が解放した重巡『妙高』『高雄』、いつの間にかいる空母『グラーフ・ツェッペリン』は『月虹』を名乗って、国家に属さない軍事力として活動を始める。だが、瑞鶴は大義やら何やらには興味がないので、利用できるものは何でも利用する。カリブ海の覇権を狙う日本・ドイツ・ソ連・アメリカの間をのらりくらりと行き交いながら、月虹は生存の道を探っていく。
登場する艦艇はなんと58隻!(2024/12/30時点)(人間のキャラは他に多数)(まだまだ増える)。人類に反旗を翻した軍艦達による、異色の艦船擬人化物語が、ここに始まる。
――――――――――
●本作のメインテーマは、あくまで(途中まで)史実の地球を舞台とし、そこに船魄(せんぱく)という異物を投入したらどうなるのか、です。いわゆる艦船擬人化ものですが、特に軍艦や歴史の知識がなくとも楽しめるようにしてあります。もちろん知識があった方が楽しめることは違いないですが。
●なお軍人がたくさん出て来ますが、船魄同士の関係に踏み込むことはありません。つまり船魄達の人間関係としては百合しかありませんので、ご安心もしくはご承知おきを。もちろんがっつり性描写はないですが、GL要素大いにありです。
●全ての船魄に挿絵ありですが、AI加筆なので雰囲気程度にお楽しみください。
●少女たちの愛憎と謀略が絡まり合う、新感覚、リアル志向の艦船擬人化小説を是非お楽しみください。
●お気に入りや感想などよろしくお願いします。毎日一話投稿します。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした
水の入ったペットボトル
SF
これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。
ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。
βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?
そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。
この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる