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[26] 恐竜
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モックサウルスは動き出す。見た目違って素早い。
「リィナちゃん、すずちゃん、相手の動きとめて。とまったところに火球叩き込むから」
クレハが指示を出してくる。相性を考えたらそれがいいかもしれない。木にはやっぱり火をつけてやるのが一番効くと思う。冷静に考えたら森の中でそれするのはちょっとやばいけど。
私は左へと走り出す。ワンテンポ遅れてすずも右へ走り出した。
敵の図体はでかい。つまりは攻撃の発生が読みやすいし、さらにはこちらの攻撃を当てやすいということだ。
モックサウルスは縦に大きく口を開いた。中には鋭くとがった歯が立ち並んでいる。これは多分かなり痛い。当たったら大ダメージ必死。
だから当たってやらない。接近してきたところにカウンターで顎の下に一撃叩き込む。
手ごたえあり。恐竜は少しだけのけぞる。攻撃モーションが停止、噛みつきを中止する。
ただダメージはあんまり入ってないみたいだ。木兵とはさすがに違う、硬い。
すずがすかさず脇腹へと追撃を入れていた。そしてすぐに飛びのく。
表情を見るにあっちもダメージは芳しくない模様。そこのところはクレハに任せよう。
一瞬前まですずがいた場所を左手の爪が通りすぎていった。いい危機察知能力。
今度は私の番。できればクリティカルを狙いたいところ。でなければクレハが攻撃当てるだけの大きな隙が作れない。
どこだ? どこを狙えばいい?
ちょうどいいことに敵はすずに注意を向けている。背中ががらあきだ。
尻尾を起点にごつごつしたその背中に駆け上がる。恐竜のことは詳しくないけど、頭に脳みそついてるタイプの動物なら後頭部はだいたい弱いはずだ。
ぐらり足元が揺れる。背中に乗った異物を排除しようとモックサウルスは体をひねる。
だがもう遅い。
空中で姿勢を制御する。見えた。ここだ。狙うべき場所が一瞬だけ光って見えた。頭の後ろ、鱗と鱗のつなぎ目。その隙間。右手を思いっきり振るうとそこへと斬撃をねじ込んだ。
うん。これは決まった。気持ちのいい一撃が入った。着地のこと考えたなかったけどまあいいや。
「クレハ!」
名前を呼ぶ。チャンスは作った。あとはそっちでよろしく頼んだ。
恐竜は空を見上げ叫び声をあげる。隙だらけだ。これなら十分クレハでも攻撃を当てられる。
紅の熱球は緩い弧を描いて飛んでいくとモックサウルスののどのあたりに着弾した。
火の手が上がる。魔法の炎は一瞬にして木でできた恐竜の上半身へと燃え広がった。
表面の鱗が黒く変色して剥がれていく。なんだか随分とあっけないなとその光景を見ながら思った。
一枚一枚とまた装甲が落ちる。その奥に赤く光る機械の塊がちらりと映った。あれはなんだろう?
その時だ。モックサウルスが地の底から響くような重く騒がしい咆哮を上げたのは。
それは断末魔の叫びなんかでは決してなくてまだまだ彼は強靭に戦う意志を示していた。
起き上がる。背中が痛いけどそれどころじゃない。あたりを見まわし警戒する。
森の中から茂みをかき分け木兵が飛び出してくる。1体だけじゃない。最初と同じように次々と彼らは出現する。木兵たちは燃えきって崩れ落ちたモックサウルスの残骸へと跳びついていく。まるでその大きく開いた傷口を埋め合わせるみたいに。
まずいと気づいた時には手遅れだった。白い光。それが収まるとモックサウルスは再び無傷の姿で雄たけびを上げていた。
こんなんありなの? ずるくない?
いや考えてる場合じゃないか。戦闘はつづいている。
相手は自己再生能力を持っている。しかも素材が木であるなら周囲にいくらでもある。無限に再生できる可能性がある。
どうすればいいのか?
ちらりと見えた中心の機械部品。あれが多分全体を制御している。だからあれを徹底的に叩けば再生することもできなくなる、はず。
そのためにはクレハが火球で燃やした後でさらに露出した制御装置に攻撃を加える必要がある。
「私1人で隙作るからすずは一旦待機、そのかわりとどめはまかせたからね!」
指示を飛ばす。返事は聞かずに動き出す。
さっきは2人がかりで相手した恐竜を今度は1人で攪乱する。単純に考えれば厳しい戦いになるだろう。
でもちょうどいい。試したいことがあったから。
私とすずはスタイルがちょっと違うというクレハの指摘、それを踏まえて観察してみたすずの戦い方。
確かに違う。
双剣という武器は共通。素早い動きが身上で回避を重視するというのも似ている。
けれど攻撃の思想が決定的に異なっている。
私は基本的に相手の攻撃の発生をつぶそうとする。その瞬間を狙って正面から最速で攻撃をぶち込む。
すずは速度に拘らない。あくまで緩やかに仕掛ける。その軌道は曲線的で読みにくい。相手の意識しにくい方向から奇襲じみた斬撃を放つ。
そして重要なのはそれら2つの攻撃は相反するものではないということだ。
モックサウスルは右手を振り上げる。爪か。その攻撃はすでに見た。
右の剣を最短で突き出す。恐竜の脇腹へと刺さる。まだ終わりじゃない。
左の剣、急ぐ必要はない。すずのスタイルをイメージする。剣自体の重さにまかせて、斜め下から、自然にタイミングをずらして、振り抜く。
浅い――がこれだ。感覚的にはあっている。このやり方は間違ってない気がする。
大きくバックステップ。木製のしっぽが地面すれすれを薙ぎ払っていく。砂埃が頬をかすめていった。
すずが真剣にこちらを見てくれているのがなんとなくわかった。
だから私はにやりとあえて大きく笑って見せた。
口で説明するのは難しいけど、こういう戦い方がある。マネできるならマネしてみなさい。
「リィナちゃん、すずちゃん、相手の動きとめて。とまったところに火球叩き込むから」
クレハが指示を出してくる。相性を考えたらそれがいいかもしれない。木にはやっぱり火をつけてやるのが一番効くと思う。冷静に考えたら森の中でそれするのはちょっとやばいけど。
私は左へと走り出す。ワンテンポ遅れてすずも右へ走り出した。
敵の図体はでかい。つまりは攻撃の発生が読みやすいし、さらにはこちらの攻撃を当てやすいということだ。
モックサウルスは縦に大きく口を開いた。中には鋭くとがった歯が立ち並んでいる。これは多分かなり痛い。当たったら大ダメージ必死。
だから当たってやらない。接近してきたところにカウンターで顎の下に一撃叩き込む。
手ごたえあり。恐竜は少しだけのけぞる。攻撃モーションが停止、噛みつきを中止する。
ただダメージはあんまり入ってないみたいだ。木兵とはさすがに違う、硬い。
すずがすかさず脇腹へと追撃を入れていた。そしてすぐに飛びのく。
表情を見るにあっちもダメージは芳しくない模様。そこのところはクレハに任せよう。
一瞬前まですずがいた場所を左手の爪が通りすぎていった。いい危機察知能力。
今度は私の番。できればクリティカルを狙いたいところ。でなければクレハが攻撃当てるだけの大きな隙が作れない。
どこだ? どこを狙えばいい?
ちょうどいいことに敵はすずに注意を向けている。背中ががらあきだ。
尻尾を起点にごつごつしたその背中に駆け上がる。恐竜のことは詳しくないけど、頭に脳みそついてるタイプの動物なら後頭部はだいたい弱いはずだ。
ぐらり足元が揺れる。背中に乗った異物を排除しようとモックサウルスは体をひねる。
だがもう遅い。
空中で姿勢を制御する。見えた。ここだ。狙うべき場所が一瞬だけ光って見えた。頭の後ろ、鱗と鱗のつなぎ目。その隙間。右手を思いっきり振るうとそこへと斬撃をねじ込んだ。
うん。これは決まった。気持ちのいい一撃が入った。着地のこと考えたなかったけどまあいいや。
「クレハ!」
名前を呼ぶ。チャンスは作った。あとはそっちでよろしく頼んだ。
恐竜は空を見上げ叫び声をあげる。隙だらけだ。これなら十分クレハでも攻撃を当てられる。
紅の熱球は緩い弧を描いて飛んでいくとモックサウルスののどのあたりに着弾した。
火の手が上がる。魔法の炎は一瞬にして木でできた恐竜の上半身へと燃え広がった。
表面の鱗が黒く変色して剥がれていく。なんだか随分とあっけないなとその光景を見ながら思った。
一枚一枚とまた装甲が落ちる。その奥に赤く光る機械の塊がちらりと映った。あれはなんだろう?
その時だ。モックサウルスが地の底から響くような重く騒がしい咆哮を上げたのは。
それは断末魔の叫びなんかでは決してなくてまだまだ彼は強靭に戦う意志を示していた。
起き上がる。背中が痛いけどそれどころじゃない。あたりを見まわし警戒する。
森の中から茂みをかき分け木兵が飛び出してくる。1体だけじゃない。最初と同じように次々と彼らは出現する。木兵たちは燃えきって崩れ落ちたモックサウルスの残骸へと跳びついていく。まるでその大きく開いた傷口を埋め合わせるみたいに。
まずいと気づいた時には手遅れだった。白い光。それが収まるとモックサウルスは再び無傷の姿で雄たけびを上げていた。
こんなんありなの? ずるくない?
いや考えてる場合じゃないか。戦闘はつづいている。
相手は自己再生能力を持っている。しかも素材が木であるなら周囲にいくらでもある。無限に再生できる可能性がある。
どうすればいいのか?
ちらりと見えた中心の機械部品。あれが多分全体を制御している。だからあれを徹底的に叩けば再生することもできなくなる、はず。
そのためにはクレハが火球で燃やした後でさらに露出した制御装置に攻撃を加える必要がある。
「私1人で隙作るからすずは一旦待機、そのかわりとどめはまかせたからね!」
指示を飛ばす。返事は聞かずに動き出す。
さっきは2人がかりで相手した恐竜を今度は1人で攪乱する。単純に考えれば厳しい戦いになるだろう。
でもちょうどいい。試したいことがあったから。
私とすずはスタイルがちょっと違うというクレハの指摘、それを踏まえて観察してみたすずの戦い方。
確かに違う。
双剣という武器は共通。素早い動きが身上で回避を重視するというのも似ている。
けれど攻撃の思想が決定的に異なっている。
私は基本的に相手の攻撃の発生をつぶそうとする。その瞬間を狙って正面から最速で攻撃をぶち込む。
すずは速度に拘らない。あくまで緩やかに仕掛ける。その軌道は曲線的で読みにくい。相手の意識しにくい方向から奇襲じみた斬撃を放つ。
そして重要なのはそれら2つの攻撃は相反するものではないということだ。
モックサウスルは右手を振り上げる。爪か。その攻撃はすでに見た。
右の剣を最短で突き出す。恐竜の脇腹へと刺さる。まだ終わりじゃない。
左の剣、急ぐ必要はない。すずのスタイルをイメージする。剣自体の重さにまかせて、斜め下から、自然にタイミングをずらして、振り抜く。
浅い――がこれだ。感覚的にはあっている。このやり方は間違ってない気がする。
大きくバックステップ。木製のしっぽが地面すれすれを薙ぎ払っていく。砂埃が頬をかすめていった。
すずが真剣にこちらを見てくれているのがなんとなくわかった。
だから私はにやりとあえて大きく笑って見せた。
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