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[18] 倉庫
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3日ほどぼんやりしてた。
ハイパー集中モードが切れるとだいたいそうなる。普通にすごしてたはずなんだけど、記憶がはっきりしない。
ルーティンに従って自動的に生活する、そんな感じ。覚えてないのだから当然私にはよくわからない。
へんなことしてはいなかったか、一応クレハに聞いてみた。
「何も問題なかったと思うよ。周りの人からしたら普段より穏やかな分、むしろ接しやすかったぐらいじゃないかな? 私はつまんなかったけどね」
いつもいつも一言多い!
久々にゲームにイン。つまりは燈架と会うのも久々。
定番の待ち合わせスポットで落ち合ってちまちまとポテトをつまむ。
つまみつつ今日はどうするかという話。初級ダンジョンは無事踏破していろいろできるようになった。
「あれ、どうにかしたいんだけど」私は切り出す。
「あれなー」
「あれだよねー」
2人ともどこか遠くを眺めて返事する。
あれとはつまりあれである。
ゴーレム倒した時に手に入ったあれ。私のアイテム枠の9割を占領してるあれ。
別段それで重さを感じることはないのだけれど、心情的に圧迫感がある。
なんだかよくわからない代物でさっさと処理してしまいたい。でもなんだかよくわからないけどレアなものらしく雑に扱うのもはばかられる。
悩みの種。
「まあひとまずどうするかは考えてきたよ」
燈架が立ち上がる。なにやら当てがあるらしい。頼りになる。
私もポテトを1本、口にくわえると燈架のあとをついてくべく腰を上げた。
ちなみにポテトの包装紙は中身がなくなると自動的に消滅する。すっごく便利。
現実でも実装して欲しいところ。
向かったのは街の北側。前に行ったことのある職人区の隣らへん。
道すがら燈架の話を聞く。
「パーティーで倉庫を借りられるって話だ」
「定期的にログインしてる限り消えることないからちょうどいいかもね」クレハが同意する。
便利なものがあるもんだ。
いつでもどこでも取り出せるわけではないが、いずれ使う予定のものをとっておくのにちょうどいい。今回のケースに実にぴったり。
例によって燈架が代表して倉庫の使用を管理事務所に申請しにいく。
クエスト受けたギルドと違って混んでなかったようで、さくっと終わって出てきた。
その足でそのまま自分たちの借りた倉庫へ向かう。
道の両脇には似たような形の四角い建物が立ち並ぶ。それが全部倉庫らしい。
なんだか少し面倒くさいなあと思った。もっとゲーム的に便利になんないものだろうか。
「雰囲気はいいけど、いつも使うってなったらちょっとたいへんかなあ」
クレハと意見が合う。そういうことも時にはあるのだ。
「まあみんながわずらわしいと思ったらそのうち改修されるだろ」
燈架がそんな楽観的なことを言ったあたりで目的の倉庫に着いた。
外観とは違って倉庫の中は明るくがらんとしてた。
むしろ何もなさすぎて不安になるぐらい。人工的で装飾のない仮想空間のイメージ。
実際その通りで機能的にもそれで全く問題ないんだけどね。
うん、逆に詳細にこだわってネズミとか出てくる倉庫はやだな。これでいい、十分に満足だ。
この倉庫には私たち3人以外は誰も入れない。
アイテムを置いていても誰からも盗られる心配はない。
もちろんシステムそのものを破壊すれば別かもしれないが、そんな心配までしてもしょうがない。
これでやっと肩の荷がおりる。
私はアイテム枠からあれをとり出すと、倉庫の真ん中に無造作に置いた。
目の前に私たちを見下ろす巨体がどしんと現れる。いや見下ろしてはないか、その中心はうつろで何物も映すことはないのだから。
巨大な石人形、もはや動かない怪物、モノアイを打ち砕かれたゴーレムの亡骸。
初級ダンジョンのボスを倒した報酬がそれだった。獲得時のメッセージによればいわゆるレアドロップと呼ばれるものらしい。
なんでそんなものが手に入ったのか、わからない。クレハが言うにはなんらかの条件を満たした可能性があるそうだ。
とにかく私はほっと一息ついた。まあまったく何も解決してはいないわけだけど。
ほんとにこいつどうしたものだろうか?
ハイパー集中モードが切れるとだいたいそうなる。普通にすごしてたはずなんだけど、記憶がはっきりしない。
ルーティンに従って自動的に生活する、そんな感じ。覚えてないのだから当然私にはよくわからない。
へんなことしてはいなかったか、一応クレハに聞いてみた。
「何も問題なかったと思うよ。周りの人からしたら普段より穏やかな分、むしろ接しやすかったぐらいじゃないかな? 私はつまんなかったけどね」
いつもいつも一言多い!
久々にゲームにイン。つまりは燈架と会うのも久々。
定番の待ち合わせスポットで落ち合ってちまちまとポテトをつまむ。
つまみつつ今日はどうするかという話。初級ダンジョンは無事踏破していろいろできるようになった。
「あれ、どうにかしたいんだけど」私は切り出す。
「あれなー」
「あれだよねー」
2人ともどこか遠くを眺めて返事する。
あれとはつまりあれである。
ゴーレム倒した時に手に入ったあれ。私のアイテム枠の9割を占領してるあれ。
別段それで重さを感じることはないのだけれど、心情的に圧迫感がある。
なんだかよくわからない代物でさっさと処理してしまいたい。でもなんだかよくわからないけどレアなものらしく雑に扱うのもはばかられる。
悩みの種。
「まあひとまずどうするかは考えてきたよ」
燈架が立ち上がる。なにやら当てがあるらしい。頼りになる。
私もポテトを1本、口にくわえると燈架のあとをついてくべく腰を上げた。
ちなみにポテトの包装紙は中身がなくなると自動的に消滅する。すっごく便利。
現実でも実装して欲しいところ。
向かったのは街の北側。前に行ったことのある職人区の隣らへん。
道すがら燈架の話を聞く。
「パーティーで倉庫を借りられるって話だ」
「定期的にログインしてる限り消えることないからちょうどいいかもね」クレハが同意する。
便利なものがあるもんだ。
いつでもどこでも取り出せるわけではないが、いずれ使う予定のものをとっておくのにちょうどいい。今回のケースに実にぴったり。
例によって燈架が代表して倉庫の使用を管理事務所に申請しにいく。
クエスト受けたギルドと違って混んでなかったようで、さくっと終わって出てきた。
その足でそのまま自分たちの借りた倉庫へ向かう。
道の両脇には似たような形の四角い建物が立ち並ぶ。それが全部倉庫らしい。
なんだか少し面倒くさいなあと思った。もっとゲーム的に便利になんないものだろうか。
「雰囲気はいいけど、いつも使うってなったらちょっとたいへんかなあ」
クレハと意見が合う。そういうことも時にはあるのだ。
「まあみんながわずらわしいと思ったらそのうち改修されるだろ」
燈架がそんな楽観的なことを言ったあたりで目的の倉庫に着いた。
外観とは違って倉庫の中は明るくがらんとしてた。
むしろ何もなさすぎて不安になるぐらい。人工的で装飾のない仮想空間のイメージ。
実際その通りで機能的にもそれで全く問題ないんだけどね。
うん、逆に詳細にこだわってネズミとか出てくる倉庫はやだな。これでいい、十分に満足だ。
この倉庫には私たち3人以外は誰も入れない。
アイテムを置いていても誰からも盗られる心配はない。
もちろんシステムそのものを破壊すれば別かもしれないが、そんな心配までしてもしょうがない。
これでやっと肩の荷がおりる。
私はアイテム枠からあれをとり出すと、倉庫の真ん中に無造作に置いた。
目の前に私たちを見下ろす巨体がどしんと現れる。いや見下ろしてはないか、その中心はうつろで何物も映すことはないのだから。
巨大な石人形、もはや動かない怪物、モノアイを打ち砕かれたゴーレムの亡骸。
初級ダンジョンのボスを倒した報酬がそれだった。獲得時のメッセージによればいわゆるレアドロップと呼ばれるものらしい。
なんでそんなものが手に入ったのか、わからない。クレハが言うにはなんらかの条件を満たした可能性があるそうだ。
とにかく私はほっと一息ついた。まあまったく何も解決してはいないわけだけど。
ほんとにこいつどうしたものだろうか?
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