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[16] 再挑戦
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明日は普通に学校あるので早めにインしてダンジョンに潜る。
2回目ともなれば慣れたものでさくっと第3層に到達、準備万端でボスに挑む。
だだっ広い空間、ずごごごごごと地響きを立てて現れたのは、真っ黒な石でできた巨体。
人の形をしたその頭の部分の真ん中には緑色に輝く目が1つきり、その名を一つ目ゴーレム。
前はこいつにやられた、今日こそは絶対に倒す!
石の巨体がずんぐり立ち上がるなり私は走り出した。
すでに作戦は決まっている。今さら確かめておく事項もない。
脇腹めがけて右手の剣を叩きこむ。硬い。手がしびれた。
ゴーレムは頭を巡らせるとゆっくりと私を見る。自らに敵対する存在を確認する。
緑の瞳がぎらりと光る。そうだ、それでいい。お前の敵は私だ。存分につけ狙うがいい。
攻撃パターンは前回見た限りでは3つ。
至近距離で拳を振り下ろす。こいつが一番ダメージが大きかった。
それからストレート。右左構わず飛んでくる中距離攻撃。当たると吹っ飛ぶ。
そして両手を広げてぐるぐる回る、竜巻アタック(燈架命名)。範囲攻撃で近くにいると全員巻き込まれる。
前回はじっくり観察できてなかった。がむしゃらに攻撃してたから。
でも今回は違う。きっちり見極める。それが私の仕事。
ぎぎぎぎと巨体が動き拳を振り上げる。モノアイはしっかり私に照準を合わせる。
重力に任せて石の塊が落ちてくる。空気を震わせ拳が迫る。
当たれば一発でアウトだろう。恐怖はある。けれどもそれを興奮が上回る!
――最小限の動きで回避。すぐそこの石畳を拳は叩く。風圧がびしびしと体に飛んでくる。
「よっしゃあ!」そのがら空きの背中を燈架が大剣でぶった切った。
壊れた石の破片が散っていく。3桁ダメージ。
前は1とか2とかがほとんどだった。文字通り桁が違う。
勝てる! 確信を得る。安全でないし余裕もないけど、これならきっと勝てる!
「竜巻アタック来るよ、リィナちゃん!」
クレハの声が後方から飛んでくる。うるさい、そのぐらいわかってるっての。
魔法で補助かけつつ機会があれば遠距離攻撃をくわえるのがクレハの仕事。全体見える位置だから指示まかせたはいい、けど従うのはなんかむかつく、けど勝つためにはしょうがない。
ゴーレムはすでに両手を広げた姿勢。竜巻アタック発動は近い。
といってもこれの対処は簡単で距離とればそれでおっけー。攻撃後の隙も大きく絶好の反撃チャンス。
もう一発。燈架の大剣で大ダメージが入る。ついでに私もちょこちょこ攻撃。
回避盾の要点とはつまり敵の注意を目いっぱい惹きつけることだ。
そのためにはこまめに攻撃入れて挑発すること、そのうえで敵の攻撃を変更不可なところまで近づけてからぎりぎりで避けること、その2つが大事になってくる。
「リィナちゃんそういうの得意だよね」とかなんとかクレハが昨日言ってたが、褒められた気がしなかったのでガンとばしておいた。そのうちクレハ泣かす。
右ストレートが迫ってくる。これも簡単。軌道が直線的で読みやすいので。
注意することがあるとすれば自分の後ろ。ゴーレムの腕は結構伸びるため避けた先に燈架かクレハが立ってたら当たる可能性がある。
特にクレハ。とろくさいから避けらんないだろうし、当たったらほぼ即死。このくらい自分でなんとかしろと思うが、まあ私がいないとダメなんだから仕方がない。面倒みてやろう。
展開は好調そのもの。前回と比べて石人形のHPがみるみる削れてく。
この作戦、私が一撃もらって離脱したらそれで崩れるんだけど、幸い集中力はまだだいじょうぶそう。いやダメだと思った時にはもう間に合わないんだけど、とにかく余裕残ってる感じする。
ついに黒い巨体の頭上に表示されてるゲージが残り3分の1を切った、あと少し!
不意に――全身が総毛だつ。直感スキルが最大限の警鐘を鳴らす。
クレハが私の名を叫ぶ。モノアイが赤く光っていた。
まずい。一手遅れた。
その正体がなんであるかわからずとも攻撃の予備動作であることだけはわかった。
ぎらりと赤く鋭い光が走る。私の体を切り裂こうと迫ってくる。
回避かそれとも防御か?
回避する時間はない、防御しても耐えきれない、すでに詰みの局面。
射線は途切れる。私とゴーレムの間に影が差した。
影は致死の光線をその身に受け止めると、ゆっくりと倒れていった。
……燈架? あれ? なんで燈架が?
止まっていた思考が再び動き出す。
追い詰められたゴーレムの攻撃。モノアイから放たれた赤いビーム。狙いは正確、まっすぐに私に刺さっていた。避けている余裕はなく私は戦線離脱する、はずだった。けれども、私の前に割って入って、かわりに倒れたのは燈架だった。倒れたまま動かない。気絶状態。急激にHPが減少した場合、一時的にすべての行動が不能になる。すぐには復帰しない。
燈架のアホ。ここで私かばって倒れるのはあんたの仕事じゃないでしょ。いやけれど私がくらったら確実に戦闘不能になってた。もしかしてこれが最善手? 私が離脱したら戦線崩壊、勝ちの目は消える。まさかそこまで計算して、ないな、多分燈架は衝動のままに動いただけ、そういうやつだ。新しい攻撃パターンがわかったんだ。もう今日はこのまま負けたっていい気がする。次は勝てる――そんなまともな考えくそくらえだ。
それらの思考は私の中で一瞬のうちに展開した。
2回目ともなれば慣れたものでさくっと第3層に到達、準備万端でボスに挑む。
だだっ広い空間、ずごごごごごと地響きを立てて現れたのは、真っ黒な石でできた巨体。
人の形をしたその頭の部分の真ん中には緑色に輝く目が1つきり、その名を一つ目ゴーレム。
前はこいつにやられた、今日こそは絶対に倒す!
石の巨体がずんぐり立ち上がるなり私は走り出した。
すでに作戦は決まっている。今さら確かめておく事項もない。
脇腹めがけて右手の剣を叩きこむ。硬い。手がしびれた。
ゴーレムは頭を巡らせるとゆっくりと私を見る。自らに敵対する存在を確認する。
緑の瞳がぎらりと光る。そうだ、それでいい。お前の敵は私だ。存分につけ狙うがいい。
攻撃パターンは前回見た限りでは3つ。
至近距離で拳を振り下ろす。こいつが一番ダメージが大きかった。
それからストレート。右左構わず飛んでくる中距離攻撃。当たると吹っ飛ぶ。
そして両手を広げてぐるぐる回る、竜巻アタック(燈架命名)。範囲攻撃で近くにいると全員巻き込まれる。
前回はじっくり観察できてなかった。がむしゃらに攻撃してたから。
でも今回は違う。きっちり見極める。それが私の仕事。
ぎぎぎぎと巨体が動き拳を振り上げる。モノアイはしっかり私に照準を合わせる。
重力に任せて石の塊が落ちてくる。空気を震わせ拳が迫る。
当たれば一発でアウトだろう。恐怖はある。けれどもそれを興奮が上回る!
――最小限の動きで回避。すぐそこの石畳を拳は叩く。風圧がびしびしと体に飛んでくる。
「よっしゃあ!」そのがら空きの背中を燈架が大剣でぶった切った。
壊れた石の破片が散っていく。3桁ダメージ。
前は1とか2とかがほとんどだった。文字通り桁が違う。
勝てる! 確信を得る。安全でないし余裕もないけど、これならきっと勝てる!
「竜巻アタック来るよ、リィナちゃん!」
クレハの声が後方から飛んでくる。うるさい、そのぐらいわかってるっての。
魔法で補助かけつつ機会があれば遠距離攻撃をくわえるのがクレハの仕事。全体見える位置だから指示まかせたはいい、けど従うのはなんかむかつく、けど勝つためにはしょうがない。
ゴーレムはすでに両手を広げた姿勢。竜巻アタック発動は近い。
といってもこれの対処は簡単で距離とればそれでおっけー。攻撃後の隙も大きく絶好の反撃チャンス。
もう一発。燈架の大剣で大ダメージが入る。ついでに私もちょこちょこ攻撃。
回避盾の要点とはつまり敵の注意を目いっぱい惹きつけることだ。
そのためにはこまめに攻撃入れて挑発すること、そのうえで敵の攻撃を変更不可なところまで近づけてからぎりぎりで避けること、その2つが大事になってくる。
「リィナちゃんそういうの得意だよね」とかなんとかクレハが昨日言ってたが、褒められた気がしなかったのでガンとばしておいた。そのうちクレハ泣かす。
右ストレートが迫ってくる。これも簡単。軌道が直線的で読みやすいので。
注意することがあるとすれば自分の後ろ。ゴーレムの腕は結構伸びるため避けた先に燈架かクレハが立ってたら当たる可能性がある。
特にクレハ。とろくさいから避けらんないだろうし、当たったらほぼ即死。このくらい自分でなんとかしろと思うが、まあ私がいないとダメなんだから仕方がない。面倒みてやろう。
展開は好調そのもの。前回と比べて石人形のHPがみるみる削れてく。
この作戦、私が一撃もらって離脱したらそれで崩れるんだけど、幸い集中力はまだだいじょうぶそう。いやダメだと思った時にはもう間に合わないんだけど、とにかく余裕残ってる感じする。
ついに黒い巨体の頭上に表示されてるゲージが残り3分の1を切った、あと少し!
不意に――全身が総毛だつ。直感スキルが最大限の警鐘を鳴らす。
クレハが私の名を叫ぶ。モノアイが赤く光っていた。
まずい。一手遅れた。
その正体がなんであるかわからずとも攻撃の予備動作であることだけはわかった。
ぎらりと赤く鋭い光が走る。私の体を切り裂こうと迫ってくる。
回避かそれとも防御か?
回避する時間はない、防御しても耐えきれない、すでに詰みの局面。
射線は途切れる。私とゴーレムの間に影が差した。
影は致死の光線をその身に受け止めると、ゆっくりと倒れていった。
……燈架? あれ? なんで燈架が?
止まっていた思考が再び動き出す。
追い詰められたゴーレムの攻撃。モノアイから放たれた赤いビーム。狙いは正確、まっすぐに私に刺さっていた。避けている余裕はなく私は戦線離脱する、はずだった。けれども、私の前に割って入って、かわりに倒れたのは燈架だった。倒れたまま動かない。気絶状態。急激にHPが減少した場合、一時的にすべての行動が不能になる。すぐには復帰しない。
燈架のアホ。ここで私かばって倒れるのはあんたの仕事じゃないでしょ。いやけれど私がくらったら確実に戦闘不能になってた。もしかしてこれが最善手? 私が離脱したら戦線崩壊、勝ちの目は消える。まさかそこまで計算して、ないな、多分燈架は衝動のままに動いただけ、そういうやつだ。新しい攻撃パターンがわかったんだ。もう今日はこのまま負けたっていい気がする。次は勝てる――そんなまともな考えくそくらえだ。
それらの思考は私の中で一瞬のうちに展開した。
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