VRMMOで遊んでみた記録

緑窓六角祭

文字の大きさ
上 下
13 / 29

[13] 苦戦

しおりを挟む
 ちょこまかとうっとうしい! ダメージ覚悟で仕掛けたのになかなか落ちない。
 数が多すぎる。
 燈架と2人がかりで相手したことはあったけど、1人だけだとこの数は捌ききれない。瀕死に追い込んでも他のが襲ってきてその間に瀕死の1匹に回復されてキリがない。
 クレハも手伝ってくれてるが、遠距離からの射撃魔法では小さな的に当たりづらい。結局のところ私ががんばるしかないのだ。

 そんな状況なのに空振り、空振り、また空振り。私のストレスは頂点に達した。
「あーもう! 面倒くさい! 死ね、全員死ね!」
 おそらくそうやってぶちぎれて、冷静さを欠いたのが原因だったのだろう。宝箱の方に近づきすぎた。
 かちりと何かの作動する音が足元で鳴った。
 さっき解除しようとしたトラップがあったんだった。その瞬間に思い出したがもう遅い。
 右足の設地感がなくなる。反射的に足元を見ればそのあたりだけ床がへこんでいる。

 単純な罠。ダメージもない、体勢を崩すだけのもの。
 普通の状態であればなんてことのない罠。けれども今は戦闘中、隙を見せればコウモリたちは一斉に襲い掛かってくる。
「リィナちゃん!」
 クレハが叫ぶのが聞こえる。自分の体が前のめりに倒れてくのがわかった。
 見えないところからコウモリが接近してくる。まずいかも、HP残ってたっけ?
 何か手はないか。自分にできることをひとつひとつ思い出す。思いつく。しかし本当にそれが成立するか。わからない。いいや。やるだけやってみよう!

「ウインドエッジ!」
 発動させながら右手の短剣を大きく振りぬいた。コウモリに当たった感触はない。
 それでいい。多分なんとかなったはず。揺れる青い髪がそれを教えてくれている。

 前のめりの姿勢のままコウモリの群れに突っ込んで、そしてそのまま走り抜けた。
 体をひねって半回転。
 思った通り! ウインドエッジで強化した斬撃、それによって発生した風圧にさらされて、コウモリたちは空中で姿勢を乱している。

 その隙を逃す私じゃなかった。ちょこまか動くようなら面倒だが、動かなければ小さいだけ。
 両手の双剣を振り下ろせば十字の軌跡を描く。手ごたえ十分。
 コウモリたちは地に落ちて光の粒となって消えた。
「終わった!」すかさず燈架に報告。
「早く助けてくれ! もうそんなにもたない」
「リィナちゃんHP少なくなってる、これ飲んで」
 クレハから回復薬を受けとりながら、再び駆け抜ける。

 残りは消化試合でしっかりと態勢が整えばおもちゃ兵士なんて今さら負ける相手ではなかった。
 アイテムはそれなりに消費したけどなんとか苦境を切り抜けられた。
 ちなみに例の宝箱の中に入ってたのはただのHP回復ポーションで、使った分を回収できたと考えればよかったんだけど、あれだけ苦労したのになあという気分にちょっとなった。

 その後は無事、次の層へ進む魔法陣を見つける。また立札があって『次が最終層です。ボスが待ち構えているのできちんと準備してから進みましょう』と書かれていた。
 私たちは万全の状態でボスに挑んだ。
 どうなったのか? 結果だけ言おう――全滅した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

処理中です...