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イケメン王子の登場
しおりを挟むいまだに何故この場に自分が召喚され、着ぐるみ姿で立っているのか、訳がわからない由美。
しかし、身分の高そうな人達に頭を下げられている今の状況は、生まれつき庶民の由美にはなかなか受け入れがたいものがあった。
由美が動揺しながらも、なんとか皆に頭を上げてもらおうと考えていた時。
バンッ!!
扉が開かれる大きな音が響き、スラッとした体型の男性が流れるような動作で広間に入ってきた。
マントのようなものを身に纏い、腰には長い剣をさげている。
あら、背が高い男の人ねー。
9等身位ありそうな顔の小ささ!
というか、見たことないほどのすごいイケメンじゃない!!
ペンタンの中からじゃなければ、もっと良く顔が見えたのに残念!
突然の長身イケメンの登場に、一気にテンションが上がる由美。
ミーハー心で、ついその男性から目が離せずにいたのだが。
あれ?もしかしなくても、めっちゃ怒っていらっしゃる?
顔も雰囲気も、もの凄く怖いんですけど・・・
腰の剣でいきなり斬られたらどうしよう。
ペンタン、笑ってるみたいな顔だから、ヘラヘラするな!とか言って、刺されたりして・・・
由美がペンタンの中で身をすくませていると、冷気を感じるほどの冷たいオーラを振り撒きながら、良く通る声でその男性が言った。
「父上、召喚なんて馬鹿なことは今すぐ止めて下さい!」
「しかし王子・・・」
長老みたいな人が口を挟んだが、イケメンは更に強い口調で続きをかき消した。
「私は妻などいらない!!」
イケメンはキッパリと宣言すると、こちらに向かって歩き出した。
うわ、こっち来たよ!
召喚を止めろと言われても、私もう呼ばれちゃってるんだけど・・・
しかもあのイケメンって王子様なの?
私、あの王子様の奥さんになる為にここに呼ばれたってこと?
あんな怖い人と結婚なんて、絶対ムリ!!
由美は近付いてくる王子に恐怖を感じたが、ふいに頭を下げたままの状態である回りの人達のことを思い出し、とりあえず体勢を戻してもらおうと両手でジェスチャーをしてみる。
なんだかペンギンの怪しい踊りになっている気もしたが、ペンタンの可動域が狭いため、仕方がなかった。
でもなんとか通じたようで、皆おずおずと頭を上げてくれた。
良かったと安心したのも束の間、隣から強烈な視線を感じる。
王子がペンタンの存在に気付き、こちらをジッと見ているらしい。
由美も恐る恐る王子を見つめ返すと、王子も最初は驚いたような表情をしていた。
しかしみるみるうちに視線が柔らかくなったかと思うと、なんと王子が艶やかに微笑んだのである。
冷気もすっかりおさまっていた。
ええっ!?
ペンタンを見て笑ったの?
というか、この人笑えるんだー。
王子は動揺する由美の前に跪くと、なにをトチ狂ったのか、うっとりとした甘い声で懇願し始めた。
「ああ、なんて愛らしい私の花嫁!!どうかこの手をお取り下さい。」
あ、愛らしい花嫁!?
おいおい、急にどうした?
さっきまでのクールな態度と違い過ぎて、ギャップについていけない・・・
あんなに怒ってたのに。
由美は戸惑ったが、なんとなく勢いで差し出された王子の手に、自分の手を乗せてしまった。
まあ実際は由美の手ではなく、ペンタンの平べったい、黒い艶々とした手なのであるが。
王子は乗せられたペンタンの手を、もう片方の自分の手で撫で始めた。
「なんという手触り!!いつまでも触れていたい・・・」
しかも頬擦りをしたかと思えば、ペンタンの手にチュッと口付けたのである。
ひょえーーーっ!!
何してくれてるんですか!!
イケメンのご乱心か!?
予想外の展開に、由美はペンタンの中で泣きそうになっていた。
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