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しゃべりだしたジャック・オー・ランタン

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翌日、サラが小鳥の囀りで目を覚まし、伸びをしながら体を起こすと、部屋に飾った失敗作のかぼちゃのランタンと目が合った……ような気がした。

「おはよう、カボチャさん」

愛嬌のある顔に自然と親近感が生まれていたサラは、かぼちゃ相手に朝の挨拶をした。
するとーー。

「おはよう」

なんと返事が返ってきたではないか。

ん?
おはようって聴こえたような……。
まさかね。

まだ自分は寝ぼけているのかと思いつつ、かぼちゃに近付くともう一度試してみた。

「今日もいい天気ね」
「そうなのかい? それは良かった」

会話が成立してしまった。
くりぬいた中身の無いかぼちゃと。

あり得ない状況に、もちろんサラも驚いた。
しかし、かぼちゃから聴こえる声がデイジーの彼によく似た優しいものだと気付くと、会話に飢えていたサラにはこれがかけがえのない出来事に思えた。

「あなた、名前はあるの? 私の名前はサラよ」
「名前……名前……あったはずだけど思い出せないな。君はサラというのか。いい名前だ。僕のことは好きに呼んでくれてかまわない」
「そう? じゃあジャックね」
「即答なんだね。サラの恋人の名前かい?」
「いいえ、私に恋人なんていないわ。あなたがジャック・オー・ランタンだからジャック」
「僕ってジャック・オー・ランタンなのかい?」
「そうよ。私が作った失敗作のかぼちゃのランタン。上の前歯が折れちゃったの」
「……」

しばらくジャックは無言だった。
前歯がないことがそんなにショックだったのだろうか。

「えーと、ジャック。あなたはどうして喋れるの? もしかしてかぼちゃの妖精?」
「ははっ、多分違うと思う。僕もなぜここでこうしているのかわからないんだ。僕にはサラの声が聴こえるだけで、何も見えないし、何も覚えてないんだ」
「そうなの……」
「あ、でもジャックと呼ばれるのはなぜかしっくりくるんだ。もしかして本当にジャックという名前だったりしてね」
「ふふっ、じゃあ名前はジャックで決定ね。……って、こんな時間! ジャック、ごめんなさい。花屋を開ける準備をしないと。また後でお話し出来る?」
「もちろんさ。僕はここで待っているよ」
「ありがとう。じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい。頑張って」

誰かに見送られるのなんて久々だわ。
こんなに嬉しいものだったのね。

何気ない会話に目頭が熱くなりながら、サラは急いで身支度を整えたのだった。

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