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青天の霹靂
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テレサは10歳になった。
相変わらずシリウス大好き少女のテレサは、マメマメしく伯爵家と交流をはかり、シリウスだけでなく、シリウスの父のエドモンと、母のアディーナにも懐いていた。
お転婆で子供らしいテレサに2人も甘く、いつだってテレサの訪問を歓迎してくれる。
もはや彼らはテレサの第2の両親であり、将来は嫁ぐ気に勝手になっていた。
そんなある日、国王が病に倒れたというニュースが国中に流れ、激震が走った。
国王の容態はもちろん心配だったが、それより皆の心配事は国王の息子のバカ王太子であった。
え、まさかあいつが国王代理に!?ヤバくね!?
多分国民の大多数がそう思っただろう。
公務での偉そうな態度、普段の我儘な言動、浪費癖などから、王太子はなかなかにヤバイやつだと評判だったのである。
テレサが暮らす領地にまで、国王の病とバカ王子の話は届いていたが、田舎暮らしの子供のテレサには、まだ話の深刻さはわからなかった。
ただ、近々また王都へ行けるのを楽しみに過ごしていた。
王都で弟が生まれた為、王都行きが決まっていたのである。
ふんふふーん、シリウスお兄ちゃんへのお土産、良いのが用意出来たわ。
喜んでくれるといいな。
弟って可愛いのかな?
わたしもお姉ちゃんになったって、シリウスお兄ちゃんにも教えてあげないと。
何かにつけてシリウス第一のテレサは、ルンルンで荷物を準備し、ルンルンで馬車に乗り、ルンルンで王都までやって来た。
さすがに到着した足でシリウスに会いに行くのは憚られ、テレサが屋敷で「早く明日にならないかなー」と、まだ赤ちゃんの弟の頬をつつきながらソワソワしている時にそれは起きた。
バタバタと大きな足音が聞こえ、父のマートンが何やら玄関で騒いでいる。
テレサも嫌な胸騒ぎと共に玄関へと駆け付けると・・・
「ああテレサ、大変なことになった!落ち着いて聞くんだよ?エドモン殿が爵位を取り上げられた。シリウス君も王都を追放される」
初めは意味がわからず、『落ち着いた方がいいのは父さまのほうじゃ?』などとぼんやり思っていたテレサだったが、次第に事の重大性に気付き、焦り始めた。
「え?え?シリウスお兄ちゃんはどうなるの?明日会いに行く約束は?」
「私も朝一で屋敷を訪ねるつもりだ。テレサも一緒に行こう」
訳がわからなかったテレサは、城で何が起きたのか父を問い詰めた。
マートンは子供相手に詳しいことを話したくなさそうにしていたが、かつてない娘の必死な様子に、腹を括ると渋々説明してくれた。
国王は、王妃を失った悲しみを仕事でまぎらわせていたのが悪かったのか、不調に気付いた時点で病はかなり進行していたらしい。
国王代理として、まだ年若い王太子が政務を行いだしたが、すぐにその身勝手なやり方は周囲の貴族の反発を買った。
特に人望が厚く、曲がったことが許せないエドモンは王太子に苦言を呈することが多かったらしい。
それに腹を立てた王太子は、見せしめのようにエドモンから伯爵の地位を奪い、エドモンが粛清の第一号になってしまった・・・
経緯を聞いたテレサは憤慨した。
「はぁぁあ!?なんでエドモンおじさまが罰を受けなきゃいけないの!?元々バカ王子が好き勝手やるからいけないんじゃない!ヤバイとは言われてたけど、ほんっと最悪!!」
「しーーーーーっ!!いくら屋敷内だからって、口を慎みなさい。誰かに聞かれたら大変なことになるんだぞ?今までの常識は通用しないんだ。テレサも行動に気を付けなさい」
怒られ、口を尖らせながら部屋に戻ったテレサだったが、言い様のない不安に襲われていた。
お兄ちゃん、大丈夫だよね?
どうか神様、お兄ちゃんとおじさまおばさまをお守り下さい・・・
テレサは窓辺で手を組むと、夜空に祈った。
相変わらずシリウス大好き少女のテレサは、マメマメしく伯爵家と交流をはかり、シリウスだけでなく、シリウスの父のエドモンと、母のアディーナにも懐いていた。
お転婆で子供らしいテレサに2人も甘く、いつだってテレサの訪問を歓迎してくれる。
もはや彼らはテレサの第2の両親であり、将来は嫁ぐ気に勝手になっていた。
そんなある日、国王が病に倒れたというニュースが国中に流れ、激震が走った。
国王の容態はもちろん心配だったが、それより皆の心配事は国王の息子のバカ王太子であった。
え、まさかあいつが国王代理に!?ヤバくね!?
多分国民の大多数がそう思っただろう。
公務での偉そうな態度、普段の我儘な言動、浪費癖などから、王太子はなかなかにヤバイやつだと評判だったのである。
テレサが暮らす領地にまで、国王の病とバカ王子の話は届いていたが、田舎暮らしの子供のテレサには、まだ話の深刻さはわからなかった。
ただ、近々また王都へ行けるのを楽しみに過ごしていた。
王都で弟が生まれた為、王都行きが決まっていたのである。
ふんふふーん、シリウスお兄ちゃんへのお土産、良いのが用意出来たわ。
喜んでくれるといいな。
弟って可愛いのかな?
わたしもお姉ちゃんになったって、シリウスお兄ちゃんにも教えてあげないと。
何かにつけてシリウス第一のテレサは、ルンルンで荷物を準備し、ルンルンで馬車に乗り、ルンルンで王都までやって来た。
さすがに到着した足でシリウスに会いに行くのは憚られ、テレサが屋敷で「早く明日にならないかなー」と、まだ赤ちゃんの弟の頬をつつきながらソワソワしている時にそれは起きた。
バタバタと大きな足音が聞こえ、父のマートンが何やら玄関で騒いでいる。
テレサも嫌な胸騒ぎと共に玄関へと駆け付けると・・・
「ああテレサ、大変なことになった!落ち着いて聞くんだよ?エドモン殿が爵位を取り上げられた。シリウス君も王都を追放される」
初めは意味がわからず、『落ち着いた方がいいのは父さまのほうじゃ?』などとぼんやり思っていたテレサだったが、次第に事の重大性に気付き、焦り始めた。
「え?え?シリウスお兄ちゃんはどうなるの?明日会いに行く約束は?」
「私も朝一で屋敷を訪ねるつもりだ。テレサも一緒に行こう」
訳がわからなかったテレサは、城で何が起きたのか父を問い詰めた。
マートンは子供相手に詳しいことを話したくなさそうにしていたが、かつてない娘の必死な様子に、腹を括ると渋々説明してくれた。
国王は、王妃を失った悲しみを仕事でまぎらわせていたのが悪かったのか、不調に気付いた時点で病はかなり進行していたらしい。
国王代理として、まだ年若い王太子が政務を行いだしたが、すぐにその身勝手なやり方は周囲の貴族の反発を買った。
特に人望が厚く、曲がったことが許せないエドモンは王太子に苦言を呈することが多かったらしい。
それに腹を立てた王太子は、見せしめのようにエドモンから伯爵の地位を奪い、エドモンが粛清の第一号になってしまった・・・
経緯を聞いたテレサは憤慨した。
「はぁぁあ!?なんでエドモンおじさまが罰を受けなきゃいけないの!?元々バカ王子が好き勝手やるからいけないんじゃない!ヤバイとは言われてたけど、ほんっと最悪!!」
「しーーーーーっ!!いくら屋敷内だからって、口を慎みなさい。誰かに聞かれたら大変なことになるんだぞ?今までの常識は通用しないんだ。テレサも行動に気を付けなさい」
怒られ、口を尖らせながら部屋に戻ったテレサだったが、言い様のない不安に襲われていた。
お兄ちゃん、大丈夫だよね?
どうか神様、お兄ちゃんとおじさまおばさまをお守り下さい・・・
テレサは窓辺で手を組むと、夜空に祈った。
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