11 / 11
顔も性格も大好きな私の旦那様。
しおりを挟むソフィーとライアンの結婚が正式に決まった。
ソフィーの父は、予感が的中してしまい、肩を落としている。
反対にライアンの父は有頂天で、さっさと爵位をライアンに譲り、田舎へと引っ込んでしまった。
ソフィーは相変わらずライアンの屋敷に部屋を借り、自分のウェディングドレスをせっせと縫っていた。
ベールはジェーンを始めとするメイド達が、張り切って作ってくれている。
「いよいよ式までもうすぐだな。ソフィーをもう家まで送らなくて済む。これからはここは二人の屋敷だ。」
ソフィーとずっと一緒に過ごせる喜びで、感慨深そうにライアンが言った。
「そうですね。お手数おかけしました。私もこの部屋に愛着が湧いてしまったので、ずっと居られて嬉しいです。」
「ははっ、ソフィーはまだこの部屋しか見たことがなかったな。これからは二人で住むのだから、私達夫婦の部屋にも慣れてもらわないと。寝室とかね。」
意味ありげに微笑まれたが、ソフィーは意味がわからなかった。
「えっと、私はこのお部屋をお借りできればそれで十分ですけど。ここで寝られますし・・・」
「え?」
「え?」
ライアンに驚いたように聞き返され、ソフィーも戸惑って聞き返してしまった。
何か会話がずれていることに、ようやく二人は気付き始めた。
「ソフィー、確認なんだが、君は私と結婚するつもりだよな?」
「はい、もちろん。ライアン様のお嫁さんになりたいです。」
「君の考える、私達の今後とは?」
「最初のお約束通り、私はライアン様の邪魔をせず、この部屋で服を作ります。お屋敷の管理もジェーンさんにお任せし、ライアン様のお手隙の際にお顔を見せて・・・って、どうしたのですか?」
膝をついて項垂れるライアンに、ソフィーは思わず言葉を止めた。
「まさかまだ最初の約束のままだとは・・・」
呆然と呟くライアンだが、ソフィーには通じなかった。
ライアン様は何に衝撃を受けているのかしら?
私、何か変なこと言った?
ライアンはガバッと一度立ち上がると、ソフィーの前で改めて跪き、ソフィーの手を握った。
「ソフィー、悪かった。全て私のせいだ。私は途中から本気で君に惹かれ、君を妻にしたいと考えていた。メリットなどどうでもいい。ソフィーと本物の夫婦になりたい。」
「え?お互いの都合とか関係なく?」
「そうだ。ソフィー、君を愛している。あんな馬車で結婚の話などするべきではなかった。反省している。プロポーズもやり直すから、どうか私と結婚して下さい。」
握られた手から、ライアンの本気を感じる。
ソフィーもすぐさまライアンの手を握り返した。
「そんなの、いいに決まってるじゃないですか!私は一日中だってライアン様を見ていたいんですから。あ、でもお屋敷の管理は上手く出来る自信が・・・」
「そんなものはどうにでもなる。ソフィーには好きなだけ仕事をしてもらうつもりだ。私の仕事を円滑に進めるためにもね。」
「でも、私にばかりいいことづくめな気が。」
「それは違うな。ソフィーは私をミューズだと言ったが、私も君の働く姿が何よりも美しく見えるし、好きだ。自分が何でも出来そうな気にさせられる。つまり、私達はお互いがミューズなんだ。結婚するのは必然ではないか?」
お互いがミューズ。
そんな奇跡ってある?
でも信じたい。
「ふふっ、素敵ですね。最強の夫婦になれそうです。」
「ははは、いいな、最強か。無敵の夫婦だ。」
二人は微笑み合い、立ち上がったライアンは、ソフィーを優しく抱き締めた。
二人の結婚式は盛大に行われた。
『独身主義の冷徹男』と囁かれていたライアンは、愛おしげにソフィーを見つめ、穏やかに微笑んでいた。
別人のような変わりように、参列者は驚き、二人の相性の良さに心からの祝福を送った。
またソフィーの作った二人のウェディング衣装も大きな話題となり、ソフィーへの注文が後を絶たなくなるのだった。
式とパーティーの後、二人は揃って寝室のベッドに座っていた。
「危うく、結婚したのに一人寝になるところだった。」
茶目っ気たっぷりにライアンに言われ、ソフィーは唇を尖らせる。
「先に契約っぽく言ったのはライアン様ですよ?利があるとかないとか。」
「悪かった。しかし、食い違ったまま今に至らなくて良かった。条件だけで気持ちが伴わない結婚なんて、するものじゃない。」
あなたがそれを言いますか!
メリットをあんなに訊いてきたくせに。
「ライアン様はズルいんです!私は絶対その顔に勝てないし、私ばっかり最初からずっと好きで。」
「顔以外も好きか?」
「当たり前じゃないですか!その可愛い性格が大好きです!!」
半分ヤケになってソフィーは告げた。
「可愛いって・・・。では可愛いだけじゃないところを見せないとな。」
ライアンはベッドにソフィーを押し倒した。
「きゃっ、え?あの、本当にするんですか?」
「そりゃあするさ。初夜なんだから。それに、私の服を作ってくれたっていうことは、脱がせたいってことだろう?」
「ち、ちがっ、それは男性からの場合では?私はそんな不純な・・・」
「違うのか?それは残念だ。でも私には不純な気持ちがあるから、もう黙って・・・」
ソフィーの唇は、ライアンの唇に塞がれてしまった。
背中を叩いても止まることはなく、実は冷徹どころか情熱的なライアンに、ソフィーは甘く溶かされたのだった。
翌朝、一糸纏わないライアンを思い出し、羞恥が込み上げると共に、一層魅力的なデザインを思い付いてしまったソフィー。
こっそり書き留めようとするも、ライアンに阻止され、再び抱き込まれてしまった。
「ソフィーは目を離すとすぐに仕事を始めようとする。もっと傍にいてくれ。」
温かいライアンの腕の中から、ソフィーの好みど真ん中の顔を見つめる。
寝惚けてる顔も格好いい・・・
なんでこんなに格好いいの?
もう、こんなに好きにさせてどうするつもり?
するとライアンが突然クスクスと笑いだした。
「ソフィー、全部口に出てるから。そんなに想われて光栄だ。私も愛しているよ、ソフィー。」
唇に軽くキスされた。
ソフィーは思う。
あの時、お見合いを断らなくて良かった。
この顔をいつまでも近くで見ていたいわ。
その後、ソフィーは服作りを軌道に乗せ、ライアンの事業に服飾部門を新たに増やした。
夫婦自らが広告塔となり、斬新な服をペアで着る二人は、他国でも有名になった。
各国を行き来し、仕事が忙しいソフィーに代わり、屋敷はジェーン達が守ってくれている。
奥様であるソフィーの意見を尊重し、ソフィーの代理として完璧にこなしてくれる。
これも、結婚前からの意思疏通が出来ていたからであろう。
ソフィーは今、子供服のデザインに忙しい。
何故なら、ライアンの子を身籠ったからである。
手に入れた幸せを噛み締めながら、ソフィーは今日もドストライクな旦那様の顔を見つめるのだった。
15
お気に入りに追加
230
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
あなたのそばにいられるなら、卒業試験に落ちても構いません! そう思っていたのに、いきなり永久就職決定からの溺愛って、そんなのありですか?
石河 翠
恋愛
騎士を養成する騎士訓練校の卒業試験で、不合格になり続けている少女カレン。彼女が卒業試験でわざと失敗するのには、理由があった。 彼女は、教官である美貌の騎士フィリップに恋をしているのだ。
本当は料理が得意な彼女だが、「料理音痴」と笑われてもフィリップのそばにいたいと願っている。
ところがカレンはフィリップから、次の卒業試験で不合格になったら、騎士になる資格を永久に失うと告げられる。このままでは見知らぬ男に嫁がされてしまうと慌てる彼女。
本来の実力を発揮したカレンはだが、卒業試験当日、思いもよらない事実を知らされることになる。毛嫌いしていた見知らぬ婚約者の正体は実は……。
大好きなひとのために突き進むちょっと思い込みの激しい主人公と、なぜか主人公に思いが伝わらないまま外堀を必死で埋め続けるヒーロー。両片想いですれ違うふたりの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
メリザンドの幸福
下菊みこと
恋愛
ドアマット系ヒロインが避難先で甘やかされるだけ。
メリザンドはとある公爵家に嫁入りする。そのメリザンドのあまりの様子に、悪女だとの噂を聞いて警戒していた使用人たちは大慌てでパン粥を作って食べさせる。なんか聞いてたのと違うと思っていたら、当主でありメリザンドの旦那である公爵から事の次第を聞いてちゃんと保護しないとと庇護欲剥き出しになる使用人たち。
メリザンドは公爵家で幸せになれるのか?
小説家になろう様でも投稿しています。
蛇足かもしれませんが追加シナリオ投稿しました。よろしければお付き合いください。
【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。
【完結】いわくつき氷の貴公子は妻を愛せない?
白雨 音
恋愛
婚約間近だった彼を親友に取られ、傷心していた男爵令嬢アリエルに、
新たな縁談が持ち上がった。
相手は伯爵子息のイレール。彼は妻から「白い結婚だった」と暴露され、
結婚を無効された事で、界隈で噂になっていた。
「結婚しても君を抱く事は無い」と宣言されるも、その距離感がアリエルには救いに思えた。
結婚式の日、招待されなかった自称魔女の大叔母が現れ、「この結婚は呪われるよ!」と言い放った。
時が経つ程に、アリエルはイレールとの関係を良いものにしようと思える様になるが、
肝心のイレールから拒否されてしまう。
気落ちするアリエルの元に、大叔母が現れ、取引を持ち掛けてきた___
異世界恋愛☆短編(全11話) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
喋ることができなくなった行き遅れ令嬢ですが、幸せです。
加藤ラスク
恋愛
セシル = マクラグレンは昔とある事件のせいで喋ることができなくなっていた。今は王室内事務局で働いており、真面目で誠実だと評判だ。しかし後輩のラーラからは、行き遅れ令嬢などと嫌味を言われる日々。
そんなセシルの密かな喜びは、今大人気のイケメン騎士団長クレイグ = エヴェレストに会えること。クレイグはなぜか毎日事務局に顔を出し、要件がある時は必ずセシルを指名していた。そんなある日、重要な書類が紛失する事件が起きて……
友達の肩書き
菅井群青
恋愛
琢磨は友達の彼女や元カノや友達の好きな人には絶対に手を出さないと公言している。
私は……どんなに強く思っても友達だ。私はこの位置から動けない。
どうして、こんなにも好きなのに……恋愛のスタートラインに立てないの……。
「よかった、千紘が友達で本当に良かった──」
近くにいるはずなのに遠い背中を見つめることしか出来ない……。そんな二人の関係が変わる出来事が起こる。
はずれの聖女
おこめ
恋愛
この国に二人いる聖女。
一人は見目麗しく誰にでも優しいとされるリーア、もう一人は地味な容姿のせいで影で『はずれ』と呼ばれているシルク。
シルクは一部の人達から蔑まれており、軽く扱われている。
『はずれ』のシルクにも優しく接してくれる騎士団長のアーノルドにシルクは心を奪われており、日常で共に過ごせる時間を満喫していた。
だがある日、アーノルドに想い人がいると知り……
しかもその相手がもう一人の聖女であるリーアだと知りショックを受ける最中、更に心を傷付ける事態に見舞われる。
なんやかんやでさらっとハッピーエンドです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
うわわ、とっても素敵なご感想をいただき、ありがたさと恥ずかしさで悶絶しております☺️
ベビーちゃん、パパ似のお姉ちゃんは最高ですね!そこにママ似の弟も加われば、子供服も揃えてファミリーで服飾外交なんて無敵です。
素敵な未来を想像していただけて嬉しいです😄
また楽しく読んでいただけるものを書けるように精進してまいります。
どうもありがとうございました‼️
めちゃ面白かったです。ソフィー天然なんですね。ライアンの気持ちが伝わってよかったです💖
ご感想、ありがとうございます。
面白かったと言っていただけて嬉しいです!
ソフィーの天然を受け継いだ子供が産まれたら、ライアンは苦労しそうですよね。
読んでいただき、ありがとうございました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
ライアン、なんだか途中からチョロい男になってますよね(笑)
母親を亡くしてるのと、下手にイケメンで拗らせたという設定で…
ソフィー、思っていることが口から出過ぎ!と思っていたのですが、可愛いと言っていただけて嬉しいです。
私は絶対言えない派なので、うらやましくもあるのですが。
素敵なご感想をありがとうございました。
次回作を書く力をいただきました。