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見つめていたい人。
しおりを挟むソフィーは充実した毎日を送っていた。
大好きな服作りを思う存分堪能出来るし、協力的で親切な人に囲まれ、幸せを感じずにはいられない。
やることがたくさんあって大変だけど、とっても楽しい!!
それに最近は、ライアン様の仕事が落ち着いているのか、顔を見られる機会が多いしね。
そうなのだ。
ライアンは採寸の際にソフィーと顔を合わせて以降、明らかに屋敷で過ごす時間が増えた。
最初は廊下で偶然すれ違ったり、ソフィーの帰る時間に玄関で鉢合わせたりしていただけだったが、日を追うごとに作業中に様子を見に現れたり、お茶の時間を一緒に過ごすようになったりと、ソフィーの目に触れる時間が長くなったのである。
ああ、何度見てもライアン様は素晴らしいわ!
やっぱりあの顔を見ると、やる気が漲るのよね。
これだけ様子を見に来るってことは、それだけ期待されてるってことだと思うし。
あ、さてはライアン様ってば、ようやく服の重要性に気付いてくれたのね?
ソフィーは鼻唄混じりにノリノリで手を動かした。
今回ソフィーがライアンに作っているのは、仕事用の外出着である。
ライアンに希望を訊いても埒が明かなさそうだったので、ソフィーの独断で、パーティーでも着られそうなシルエットながら、遊び心があるオシャレで独創的な仕事着に決めた。
絶対ライアンには奇抜だと言われそうだが、確実に人目を惹くし、会話に弾みがつくはずだとソフィーは自信を持っていた。
本当は夜会用も、外出着も、部屋着だって作りたい!
その為にもこの一着を認めてもらわないと!!
生き生きと作業するソフィーとは正反対に、悶々としている人物が居た。
ライアンである。
おかしい・・・
なんでこんなに彼女が気になるんだ?
女性は面倒だから、関わらないように冷たく接してきたというのに。
仕事が生き甲斐だったはずなのに、その大切な仕事を切り上げてまで、私は何故いま屋敷に居るんだ?
疑問に思いながらも、ライアンの目は自然と、地味な格好で楽しそうに働くソフィーを追っている。
何故かずっと見ていたい気持ちにさせられ、気付けばソフィーに提案していた。
「君の仕事の進み具合が気になるし、君も私が近くにいれば試着もさせられて便利だろう?私もこの部屋に仕事を持ち込んでいいだろうか?」
「私は嬉しいですけど、散らかってますよ?煩いかもしれませんし。」
「そんなことは構わない。私のことは気にしなくていい。」
澄ました顔でライアンは答えたが、内心はうまくいったことを喜んでいた。
私がいると嬉しいのか・・・
なんだか気恥ずかしいが、悪くない。
これで働きぶりも確認できるしな。
依頼主として、常に進捗状況をチェックするのは当然のことだ。
少しもおかしくないぞ。
自分を納得させようとしているライアンを、ジェーンが『やれやれ世話が焼ける』といった表情で見ていることなど気付きもしない。
こうなることを見越して、ジェーンがあらかじめソフィーに広い部屋を用意したことも。
ライアンがソフィーを眺めていると、時々目が合い笑いかけられる。
自分の意思と裏腹に、ライアンも小さく微笑み返す。
ライアンは自分の気持ちをもて余し始めていた。
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