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易しい第一関門。
しおりを挟むソフィーは思い切って、ライアンの固めてあった前髪を崩した。
「何をする!!」
ライアンが焦っているが、ソフィーの手は止まらない。
前髪を上げて、整えているのも似合うのだけど、冷徹さが際立って怖がられると思うのよね。
切れ長の目は素敵だし、私の好みど真ん中だけど、近寄りがたく感じるでしょうし。
もうちょっと隙を見せないと、コミュニケーションも上手くいかないと思うの。
「こんな感じかしら?」
適度に前髪を顔に垂らし、印象を柔らかく見せる。
どこから持ってきたのか、ジェーンがサッとソフィーに手鏡を差し出した。
本当にジェーンさんは気が利く方ですね!
私もお世話して欲しいくらいです。
礼を言って受け取り、ライアンが映るように傾けた。
「なんだこれは!こんなだらしのない髪で人前に出られるか!!」
そう来ると思いました・・・
この方はカッチリキッチリ至上主義そうですもんね。
ライアンが怒りながら前髪を戻そうと手をやる。
「ああーー、駄目ですよ。せっかくセクシーで似合っているのに。このくらい普通です。というか、このくらい柔らかく見せた方が、人が寄ってきますよ?」
「寄ってきて欲しくないからいいんじゃないか。セクシーなんて求めていない。女性を相手にしている暇はないんだ。」
「そんなことを言っていると、ビジネスチャンスを逃しますよ?今は女性でも事業を興す方もいらっしゃいますし・・・。とにかくこの格好の方が、女性だけでなく男性だって話しかけやすいし、会話も弾んで上手くいくと思います!」
ジロッとライアンがソフィーを睨んだ。
あ、その目は信用してませんね?
睨んでも私的にはカッコいいですけど、普通の女性は怖がるからやめた方がいいですよ?
噛み合わない二人に苦笑しながら、ジェーンが会話に入ってきた。
「ライアン様、試しにそのお姿を旦那様と子爵様にご覧いただいては?反応によっては、これから改善していけば良いではないですか。」
「父上と子爵に?」
あ、思いっきり嫌そうな顔をしてますね。
確かにノリで『いいじゃないか!!』とか言いそうな方達ではあるので、信用は出来ないかもしれませんが。
でも私にとっては好都合ですよ!
「ライアン様、お願いがあるのですが。」
「お願い?またしても嫌な予感しかしないな。しかも、その予感は正しい可能性が高い。」
うわ、嫌な感じですね。
顔は良いのに、ちっちゃい男です。
「おい、全部口に出ているぞ。」
ソフィーは慌てて口を押さえたが、もう遅い。
視界の端で、ジェーンが体を折って笑っている。
益々しかめ面になったライアンだったが。
「願いとはなんだ?話を聞くだけは聞いてやる。私は小さい男ではないからな。」
根に持ってますよ。
そういうところだと思うのですが。
でも案外単純で可愛い人なのですね。
「伯爵様とうちの父の反応が良かったら、私にチャンスを下さい。ライアン様の服、一式仕立てさせて欲しいんです。そして、その服が気に入ったなら、私と結婚して下さい!私、ライアン様の専属のデザイナーになりたいんです!!」
ソフィーは決死の覚悟だったが、ライアンの返事は早かった。
「いいだろう。悪いがあのお二人は参考にならないだろうが、もう一着はあってもいいと思っていたところだ。もし仕立てることになったとしても、それはそれで構わない。君なら、私の空いている時間で融通を効かせてくれそうだから助かる。」
おおっ!!
チャンスを勝ち取りましたよ!!
「では早速、伯爵様に見せに行きましょう。」
ソフィーは、少し変身したライアンを連れて、ガゼボに戻ってみた。
「おおっ!ライアン、いいじゃないか!見違えたぞ!!」
「ライアン殿、雰囲気が変わりましたな。今の方が優しい雰囲気が出ていて素敵ですよ。」
きたーっ、『いいじゃないか!!』
予想通り、『いいじゃないか』をいただきました!!
「ライアン様、約束叶えて下さいね?」
ソフィーがどや顔で見上げると、伯爵の反応はライアンにとっても予想通りのものだったらしく、呆れ顔で伯爵を見ていた。
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